ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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第2章 病態


Research Question 4
変形性股関節症と骨粗鬆症は関連があるか

推奨
Grade B 変形性股関節症では股関節局所における骨密度は増加する.
Grade I 変形性股関節症と全身性の骨粗鬆症との関連について一致した結論は見出されていない.


解説
変形性股関節症(股関節症)における股関節局所の骨密度は,大腿骨頚部を含む股関節局所において増加するとの複数の報告がある(HF10303HF10305HF10321HJ11346).その要因として大腿骨頚部の横径の増大(HF10215),骨棘形成(HF10321),および海綿骨梁幅の増加(HF10419HF11539)が示されており,股関節症の病態を反映した局所の変化と判断されている.
股関節症における全身の骨密度についての大規模調査の結果,腰椎,橈骨および踵骨の骨密度が増加しているという結果が導き出されている(HF10303HF10305).しかし,遺伝的背景を排除する双子母集団の調査では,股関節症では患側の大腿骨頚部でのみ骨密度が増加し,対側大腿骨頚部や腰椎では骨密度の増加は認められないとの結果が見出されている(HF10321).また,閉経後の末期股関節症の調査から,股関節症では高骨代謝回転を伴った骨粗鬆症を合併する頻度が高いとする結果も見出されており(HF10979),股関節症と全身性の骨粗鬆症との関連について一定した結論にはいたっていない.


エビデンス
  • アメリカの65歳以上の白人女性4,855名を対象とした多施設登録研究では,軽度の股関節症が351名,中等度の股関節症が228名に認められ,大腿骨頚部,大腿骨転子間部,Ward三角部,腰椎,踵骨,橈骨(近位部,遠位部)の骨密度を測定し対照(非股関節症)と比較した.全部位で対照群よりも股関節症群で有意に骨密度の高値を認め,特にWard三角と腰椎の骨密度は対照群よりも8〜10%の高値を示した(HF10303, EV level R-III).
  • オランダの55歳以上を対象とした2,745名の住民調査では,X線学的股関節症を認めた症例(男性10%,女性7%)の大腿骨頚部の骨密度は,対照群と比べて男性で103%,女性で107%の高値を示した.Ward三角や大転子部の骨密度は男女とも大腿骨頚部の骨密度と高い相関を認めた(HF10305, EV level R-II).
  • イギリスの40歳以上の双子白人女性1,148名のうち,107名(18.6%)に股関節症を認め,対照群(正常)の腰椎,全身,および股関節(全股関節,頚部)の骨密度と比較したところ,股関節症患側の大腿骨頚部や全股関節に骨密度高値を認めた.股関節症患側の大腿骨頚部の骨密度は骨棘形成と関連(オッズ比:1.68)を認めた(HF10321, EV level R-III).
  • わが国におけるcohort研究の対象者で,X線検査のできた198名のうち,二次性股関節症を認めた7例11関節を,対照群(健常者)と比較した.股関節症群では大腿骨頚部とWard三角の骨密度が対照群と比べ有意に高値を示した.また,臼蓋形成不全の重症度と大腿骨頚部の骨密度は負の相関を有していた(HJ11346, EV level R-IV).
  • 人工股関節全置換術(THA)術前の一次性股関節症患者27例27関節と対照群(健常者30例30関節)の大腿骨頚部の骨密度やMRIによる体積測定を行い,比較した.股関節症患者で大腿骨頚部の骨密度高値と大腿骨頚部の幅と体積増加を認めた(HF10215, EV level R-IV).
  • 股関節症17例17関節のTHA施行時に得られた大腿骨頚部(股関節症群)と,性・年齢を一致させた22例22関節の大腿骨頚部(対照群)のpQCTによる骨形態計測を行った.股関節症群では,対照群と比べ75%の海綿骨量の増加と52%の海綿骨梁幅の増加を認めた(HF10419, EV level R-IV).
  • 末期股関節症36例36関節のTHA施行時に得られた大腿骨頚部(股関節症群)と,性・年齢を一致させた検死解剖の36例36関節の大腿骨頚部(対照群)の主抗圧骨梁の骨形態計測を行った.股関節症群において有意に海綿骨梁幅の増加を認めた(HF11539, EV level R-IV).
  • 末期股関節症68例を対象とし,腰椎,大腿骨近位部,全身のすべての部位における骨密度のTスコアが-2.5SD以下である症例を骨粗鬆症とすると,25%に骨粗鬆症の合併を認め,骨代謝マーカーは高値を示した.股関節症の症例では骨粗鬆症も合併し得る(HF10979, EV level R-IV).


文献

1) HF10303 Nevitt MC, Lane NE, Scott JC, Hochberg MC, Pressman AR, Genant HK, Cummings SR. Radiographic osteoarthritis of the hip and bone mineral density. The Study of Osteoporotic Fractures Research Group. Arthritis Rheum. 1995;38(7):907-16.
2) HF10305 Burger H, van Daele PL, Odding E, Valkenburg HA, Hofman A, Grobbee DE, Schütte HE, Birkenhäger JC, Pols HA. Association of radiographically evident osteoarthritis with higher bone mineral density and increased bone loss with age. The Rotterdam Study. Arthritis Rheum. 1996;39(1):81-6.
3) HF10321 Antoniades L, MacGregor AJ, Matson M, Spector TD. A cotwin control study of the relationship between hip osteoarthritis and bone mineral density. Arthritis Rheum. 2000;43(7):1450-5.
4) HJ11346 吉村典子,森岡聖次,笠松隆洋,ほか.地域住民の股関節間隙値の性,年齢別分布.日本骨形態計測学会雑誌.1994;4(2):107-12.
5) HF10215 Arokoski JP, Arokoski MH, Jurvelin JS, Helminen HJ, Niemitukia LH, Kröger H. Increased bone mineral content and bone size in the femoral neck of men with hip osteoarthritis. Ann Rheum Dis. 2002;61(2):145-50.
6) HF10419 Jordan GR, Loveridge N, Bell KL, Power J, Dickson GR, Vedi S, Rushton N, Clarke MT, Reeve J. Increased femoral neck cancellous bone and connectivity in coxarthrosis (hip osteoarthritis). Bone. 2003;32(1):86-95.
7) HF11539 Fazzalari NL, Parkinson IH. Femoral trabecular bone of osteoarthritic and normal subjects in an age and sex matched group. Osteoarthritis Cartilage. 1998;6(6):377-82.
8) HF10979 Glowacki J, Hurwitz S, Thornhill TS, Kelly M, LeBoff MS. Osteoporosis and vitamin-D deficiency among postmenopausal women with osteoarthritis undergoing total hip arthroplasty. J Bone Joint Surg Am. 2003;85-A(12):2371-7.


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