ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第1章 疫学・自然経過


Research Question 2
わが国における一次性変形性股関節症の頻度は

推奨
Grade I 一次性変形性股関節症の統一された診断基準がないため,用いられた診断基準により研究結果に差がある.


解説
一次性の変形性股関節症(股関節症)の頻度は,研究により用いられた一次性股関節症の診断基準が異なり,研究結果にも差を認める.1961年から股関節症で受診した外来患者2,000例について調査した報告では,一次性股関節症の頻度は全体の0.65%と少ないが(HF11875HJ10906),1992〜1994年の股関節症患者700例について検討した他の報告では21%であり(HJ10907),一次性股関節症の頻度に大きな差がみられる.その他の報告では,1970年代に行われたものでは1%台であったが(HJ11777HJ10322),1990年代では4.3%(HJ11596),2000年代の報告では6.5%(HJ10421)となっている.
ただし,前述のごとく使用されている一次性股関節症の診断基準が異なるため,今後の研究では診断基準の統一が望まれる.


エビデンス
  • 1961年より病院を受診した2,000例の股関節症患者の検討で,一次性股関節症の診断基準を(1)原因となる疾患の既往がない,(2)骨頭変形がない,(3)CE角が19°以上,(4)Sharp角が45°以下,(5)acetabular roof obliquityが15°以下,とした場合の頻度は,全股関節症患者2,000例のうち13例(0.65%)であった(HF11875HJ10906, EV level C-III).
  • 1992年11月〜1994年1月に受診した700例の股関節症患者の検討で,一次性股関節症の診断基準を(1)臼蓋形成不全がほとんどない,(2)外反股がない,(3)片側例では骨幹幅に左右差がない,(4)術中所見で前捻角増強がない,(5)疼痛発症年齢が高く,末期股関節症に移行するまでの期間が短い,(6)全例1人の検者が診断,とした場合の頻度は,観察可能であった392関節のうち82関節(21%)であった.年代別の検討では,1960年代には0%,1970年代には14%,1980年代には23%,1990年代には35%と増加していた(HJ10907, EV level C-III).
  • 1972〜1976年にわが国で股関節手術を施行した200例の日本人股関節症患者と,同時期にアメリカで手術を施行した199例の白人股関節症患者について比較した研究では,日本人の一次性股関節症の頻度は1.3%で,白人は73.3%であった(HJ11777, EV level C-III).
  • 1978〜1999年に受診した股関節症患者5,618例において,一次性股関節症は全体の1.5%であった.一次性股関節症の診断基準に関しては記載なし(HJ10322, EV level C-III).
  • 1990〜1994年に泌尿器科と産婦人科で静脈性腎盂造影を行った14〜97歳までの1,601例の調査で,X線学的に股関節症と診断した69例のうち一次性股関節症は5例(4.3%)であった.一次性関節症の診断基準は,X線および既往歴から解剖学的異常および原疾患がなく発症した症例とした(HJ11596, EV level C-III).
  • 1990〜1992年と2001〜2002年に人工股関節全置換術を施行したそれぞれ100例の検討で,一次性股関節症の診断基準を(1)術前X線像で病因が明らかでない,(2)術前MRI,関節鏡および手術所見でも病因が明らかでない,(3)Sharp角が42°未満,(4)CE角が20°以上,とした場合の頻度は,1990〜1992年では1.0%であったが,2001〜2002年では6.5%であった.特に65歳以上の患者では,1990〜1992年で4.0%,2001〜2002年では16.9%と多かった(HJ10421, EV level C-II).
  • 1984〜1988年にサンフランシスコの17施設において人工股関節全置換術が施行された1,767例の検討では,一次性股関節症は白人,黒人,ヒスパニック,アジア系の順に多く,日本人では8例中1例で12.5%であった(HF10193, EV level C-III).


文献

1) HF11875 Nakamura S, Ninomiya S, Nakamura T. Primary osteoarthritis of the hip joint in Japan. Clin Orthop Relat Res. 1989;(241):190-6.
2) HJ10906 中村 茂.変形性股関節症 一次性股関節症の自然経過.整形外科.1994;45(8):809-13.
3) HJ10907 小林千益,寺山和雄,丸山正昭,ほか.変形性股関節症 一次性股関節症の自然経過.整形外科.1994;45(8):814-8.
4) HJ11777 司馬良一,広畑和志,Hoaglund FT.日本人と白人の変形性股関節症の発生頻度の比較.日本リウマチ・関節外科学会雑誌.1986;4(3):253-61.
5) HJ10322 林 靖人,村瀬鎮雄,勝又壮一,安岡晴海,藤井克之.股関節症の疫学.Hip Joint. 2001;27:194-7.
6) HJ11596 斎藤 昭,菊地臣一.変形性股関節症の疫学―1,601例の病院受診者に対する調査.臨床整形外科.2000;35(1):47-51.
7) HJ10421 菅野大己,春藤基之,堤 正樹,佐々木 茂,古川晃郁,増田武志.高齢者発症変形性股関節症例の検討.Hip Joint. 2003;29:85-8.
8) HF10193 Hoaglund FT, Oishi CS, Gialamas GG. Extreme variations in racial rates of total hip arthroplasty for primary coxarthrosis: a population-based study in San Francisco. Ann Rheum Dis. 1995;54(2):107-10.


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