ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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前文


ガイドラインの構成と編集方法

(1)構成

本ガイドラインは,変形性股関節症の疫学から人工股関節全置換術までの内容を含んだ6章から構成されている.ただし,再置換術については人工関節置換術ないしは人工股関節置換術のガイドラインに含むべき内容であると考えて,本ガイドラインには含めなかった.
臨床的疑問点であるリサーチクエスチョンは,ガイドラインの本文中に51題あり,それぞれについて推奨または解説の形で回答が与えられている.可能なかぎり,質問とその回答という形式でリサーチクエスチョンに対する推奨を記述するようにつとめたが,リサーチクエスチョンの種類によっては,解説の形式でエビデンスをまとめた.

(2)ガイドラインの使用法と注意事項
本ガイドラインでは,ここに記述されたもの以外の治療法などを禁止しているわけでもなく,ここに記述されているとおりの治療法を強制するものでもない.広範な文献の検索を行い,エビデンスに基づいてわかっていることとわかっていないことを明らかにし,臨床上の信頼性と有効性を加味して推奨を記述している.エビデンスが不足していたり,エビデンスがあっても結果や見解の一致がみられない場合には,策定委員会の判断で推奨している場合がある.
推奨に記述されている事項は必ずしもすべての患者に適応できるものではなく,ガイドラインの記述を鵜呑みにすることなくそれぞれの患者のおかれた状況と利用し得るエビデンスに基づいて,適切に判断すべきである.
文献番号の頭2文字,「HF」は海外データベースから検索された文献,「HJ」は国内データベースから検索された文献であることを示している.

(3)ガイドラインの対象者と作成意図
診療ガイドラインとは「特定の臨床状況のもとで,適切な判断をくだせるように支援する目的で体系的に作成された文書」と定義されている.したがって,ガイドラインは,これを使用する対象者によってその構成や内容が変化する.
本ガイドラインは,変形性股関節症の診断と治療に携わる整形外科医を主たる対象者としている.本文中に用いた専門用語や表現はこの対象者を想定しているため,医療従事者(整形外科を専門としない医師やコメディカルなど)でも記述内容を他の参考書なしには正確には理解できない可能性があることは否めない.リサーチクエスチョンも整形外科医の視点から設定した設問であり,必ずしも他の医療従事者や患者・患者の家族が抱く疑問点とは完全には一致しない.

(4)統一化の程度と基準
エビデンスの項目は,アブストラクトフォームをもとに各リサーチクエスチョンの担当委員が解答に必要な論文を選択し各論文の要旨をまとめた.採用された論文のエビデンスレベルについては,アブストラクトフォームを各章の全委員により再度吟味して判定した.委員による判定が困難な場合には,疫学の専門家にその判定を委ねた.
ガイドライン全体で統一したエビデンスレベルの設定を行うと,「RCTが実施しにくい」リサーチクエスチョンなどは必然的にエビデンスレベルが低くなり推奨度も連動して低くなってしまいかねない.反面,一定の基準なしではバイアスとなる危険もある.そこで,全体の共通基準として,
  • 「質の高いcase series」(エビデンスレベルIV)は100関節以上
  • ただし,治療に関しては50関節以上(温熱療法,関節温存術・関節固定術および寛骨臼骨移植を併用したTHAは30関節以上)を目安とした
  • RCT/CCT/cohort study/case-control studyは各群50症例以上
この基準に満たない研究は,「信頼性の低いRCT/CCT/cohort study/case-control study」(エビデンスレベルIV)とした.また,極端にフォローアップ率の低い場合は除外した.
  • 「中期成績」は経過観察期間を5〜10年,「長期成績」は10年以上


エビデンスから求めたサイエンティフィックステートメントは各リサーチクエスチョンの担当委員が最初に記載し,これを全委員で協議して決定した.推奨も各リサーチクエスチョンの担当委員が最初に記載し,これを全委員で協議して決定した.
推奨Gradeは日本整形外科学会で統一的に定めたものに従っている.これによって肯定の程度については推奨Grade AからCまでの3段階評価となっている.一方,否定については推奨Grade Dのみであり,否定の根拠の強さは記述表現でしか示し得なかった.
リサーチクエスチョンの記述形式は大きく2つに分けられる.1つは臨床的疑問に対して「はい」「いいえ」で解答できるものである.たとえば,「変形性股関節症に対する患者教育は行うべきか」という種類の記述形式である.この場合,肯定であればエビデンスによって3段階のGradeが存在し,推奨の程度を示すことができる.しかし,否定の場合は,推奨Grade Dのみであり明確なエビデンスによるものにかぎられる.
もう1つの記述形式は「はい」「いいえ」で解答できないものである.たとえば,「変形性股関節症に対する運動療法の治療効果は」という種類のものである.この場合の推奨GradeはA,B,CとIの4種類にかぎられ,ステートメントに関するエビデンスの強さのみを表現しているといえよう.
「ガイドラインは,臨床的根拠のみを列記したエビデンス集とは異なり,何らかの診断・治療などの指針を示す必要性があるため,信頼できる高いレベルのエビデンスがない場合も,積極的に推奨を記述すべきである」という基本方針で,本ガイドラインを作成した.
【推奨】・【解説】・【サイエンティフィックステートメント】の各項では,可能なかぎり用語の統一を図ったが,各論文から抽出した【エビデンス】は,アブストラクフォームと原文にしたがって記載した.ガイドラインを理解しやすくするために,リサーチクエスチョンによっては基本的な事項を【背景】として記述した.

 

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