ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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前文


ガイドライン作成手順

(1)文献の選択

文献は表1の検索式に基づいて,MEDLINEでヒットした1991年以降の英語文献から小児および動物実験を除いた1,941件(うちCochrane Centralデータベース105件を含む)および医学中央雑誌から1983年以降の日本語文献1,863件,合計3,804件が抽出された.これらの文献を一次選択の対象とし,疫学・自然経過,病態,診断,治療(保存療法,関節温存手術と関節固定術,人工股関節全置換術)のカテゴリー分類と当初設定されていたリサーチクエスチョンとを加味し,2人の委員が論文タイトルと抄録から一次選択を行った.
一次選択文献として,英語文献1,021件,日本語文献662件が選択された.また,1991年以前の文献あるいは1991年以降で一次選択文献に含まれなかった文献で,リサーチクエスチョンに対して必要と考えられる文献を章担当者が選択,追加した.これらのすべての選択文献を査読担当者が個別に吟味し,文献内容について要約した構造化抄録(アブストラクトフォーム)1,334件を作成した.アブストラクトフォームとは,その研究の目的,研究デザイン,研究施設,対象患者,介入,統計学的手法,結果,結論などの必要項目を記載したものである.
各章担当者がアブストラクトフォームと原文献とを参照・評価して,リサーチクエスチョンに対して必要なエビデンスとなる文献を,エビデンスレベルの高い順に選択した.その結果,本ガイドラインに構造化抄録として収載された文献は,英語文献271件,日本語文献120件,合計391件である.

(2)章とリサーチクエスチョンの設定
本ガイドラインの作成は,厚生労働省から提示されている「診療ガイドラインの作成の手順」に基づいて行った.まず,疫学から人工股関節全置換術までの6章を設定し(表2),臨床診療におけるリサーチクエスチョン計51題を設定した.

(3)エビデンスの評価
各研究の妥当性をバイアスなく評価するために,研究デザインによる階層化を基本として評価した.研究デザインは,表3のごとく分類した.エビデンスレベルは表4に示すとおり,「RCTのmeta-analysisまたはsystematic review(Ia)」から「その他(VII)」までレベルを設定した.介入が関与しないリサーチクエスチョンでは横断研究がエビデンスとなるため,エビデンスレベルを別に設定した.
エビデンスレベルIは質の高いエビデンス,エビデンスレベルII,III,IVは中等度のエビデンスと定義した.
この研究デザイン優先の階層化によるガイドライン作成方法の優れた点は,作成委員の恣意の入る余地が小さいことである.問題点は,(1)暫定的な結果であっても研究デザインが高いレベルであれば高いエビデンスとなり,臨床上の効果を無視される危険性があること,(2)すでにほぼ確立された事実は,RCTなどの質の高い研究がなされる可能性は少なく,エビデンスは低くなること,である.

(4)サイエンティフィックステートメントの作成
リサーチクエスチョンごとに,各責任者によってエビデンスとなる文献とそのレベルに基づいてサイエンティフィックステートメントが作成された.サイエンティフィックステートメントとは収集されたエビデンスを端的にまとめたもので,エビデンスはレベルの高いものから採用した.

(5)推奨Grade
サイエンティフィックステートメントに従って,「推奨Grade」を委員全員で協議して作成し,「解説」を加えて「推奨」内容の補足説明を行った.サイエンティフィックステートメントのないリサーチクエスチョンでは,エビデンスから「推奨Grade」を作成した.
推奨Gradeは,表5のごとく4階層プラス1となっている.推奨Grade A,B,Cはそれぞれエビデンスの質と量がサイエンティフィックステートメントとほぼ対応しているものである.Grade Dは,エビデンスの強弱にかかわらず否定的な推奨(すべきでないもの)を示している.
推奨Grade Iは,中等度以上のエビデンスは見出せなかったものの,低いレベルのエビデンスあるいは専門家のコンセンサスによる推奨であることを示している.また,推奨Grade Iには,中等度レベル以上のエビデンスが存在するものの結論が一定していない場合が含まれる.

表1 文献検索式
osteoarthritis,
hip(KW)+(OSTEOARTHRITI?+OSTEOARTHROPATH?+OSTEOARTHROS?S
+DEGENERAT?(N)ARTHRITI?)(3N)
(HIP+COXA? ?)+COXARTHRITI?+COXARTHROPATH?+COXARTHRITI?
+COXARTHROS?S+dysplas?(2n)
(hip+hips)+DEVELOP?(3N)DISLOCAT?(3N)
(HIP OR HIPS)+DDH(3N)(HIP OR HIPS)+ACETABUL?(3N)DYSPLAS?

表2 本ガイドラインの章構成
1章 疫学・自然経過
2章 病態
3章 診断
4章 保存療法
5章 関節温存手術と関節固定術
 6章  人工股関節全置換術

表3 研究デザイン分類
systematic review
meta-analysis
RCT(randomized-controlled trial)
CCT(controlled clinical trial)
cohort study
case-control study
case series
case report
review
分析的横断研究
記述的横断研究

表4 エビデンスレベル
治療など一般 Ia RCTのmeta-analysisまたはsystematic review
Ib RCT
II CCTおよびcohort study
III case-control study
IV 信頼性の低いRCT,信頼性の低いCCT,信頼性の低いcohort study,信頼性の低いcase-control study,横断研究,または質の高いcase series
V case series
VI case report
VII その他
危険因子 R-I cohort studyまたはcase-control studyのmeta-analysisまたはsystematic review
R-II cohort study
R-III case-control study
R-IV 信頼性の低いcohort study,信頼性の低いcase-control study,横断研究,または質の高いcase series
R-V case series
R-VI case report
R-VII その他
診断 C-Ia 分析的横断研究のmeta-analysisまたはsystematic review
C-Ib 十分な数の分析的横断研究
C-II 分析的横断研究
C-III 記述的横断研究

表5 推奨Grade分類
Grade 内容 内容補足
A 行うよう強く推奨する
強い根拠に基づいている
質の高いエビデンスが複数ある
B 行うよう推奨する
中等度の根拠に基づいている
質の高いエビデンスが1つ,または中等度の質のエビデンスが複数ある
C 行うことを考慮してもよい
弱い根拠に基づいている
中等度の質のエビデンスが少なくとも1つある
D 推奨しない
否定する根拠がある
肯定できる論文がないか,否定できる中等度までの質のエビデンスが少なくとも1つある
I 委員会の審査基準を満たすエビデンスがない,あるいは複数のエビデンスがあるが結論が一様でない  

 

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