ガイドライン

(旧版)エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン[第1版]

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VII:化学療法

 
CQ-30 術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?

現状では推奨すべきレジメンがないので,臨床試験として行われることが望まれる。(推奨度C1


胆嚢癌および胆管癌では,根治切除が可能であった症例に限っても早期再発例が多く,その予後は不良であり,術後補助療法による有効な再発予防策の新たな展開に大きな期待が寄せられる。これまで他癌種で術後補助療法に関する臨床研究が多く行われてきた欧米においては発生率が低いことから胆道癌に関する術後補助療法のRCTはほとんど行われていない。一方,日本を含む東アジア地区では胆道癌の発生率が高く,日本から術後補助療法についてのRCTが報告されている。
Takadaら1)は,1986年から1992年において膵・胆道癌508症例について5-FUとmytomycin C(MMC)の併用化学療法群(MF群)と手術単独群(対照群)に割り付けたRCTを行い,術後5年間の経過観察による結果を報告した。膵癌158例,胆管癌118例,胆嚢癌112例,乳頭部癌48例の適格例について疾患ごとに解析され,胆嚢癌ではMF群で5年生存率が有意に良好であった(表6)(レベルII)。しかし切除の治癒度別の検討によると有意差を認めたのは非治癒切除例のみであり,intent-to-treat解析では胆嚢癌においてもMF群,対照群の間に有意な差はみられなかったとされている。MF療法は胆道癌術後補助療法の標準治療としては位置付けられるに至っていないが,本試験により術後補助療法の有効性が示唆されている。
Todoroki2)は胆嚢癌に対する化学療法の臨床試験を総括し,術後補助化学療法について検証している。それらのほとんどは単一アームによる臨床試験であり,今後の術後補助療法の候補となりうるレジメンは認められなかった。最近では切除不能胆道癌に対しGEMを中心とした化学療法が行われており,良好な抗腫瘍効果を示すレジメンも散見される。しかしそれらを用いた術後補助療法の大規模なRCTは国際的にも行われていない。わが国ではgemcitabine(GEM),テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1)が胆道癌に対する保険適応に承認されており,今後これらによる術後補助療法における有効性を検証する臨床試験を積極的に実施する必要がある。
胆道癌の外科治療においては,治癒切除を目指した手術でも最終的に摘出標本の病理組織所見において非治癒切除となる頻度は決して低くない。しかし,非治癒切除例に対する術後補助療法に関してもこれまで臨床研究は行われておらず,一定のコンセンサスもない状況である。癌遺残の明らかな術後症例に対しては,CQ-28あるいはCQ-29に示されている切除不能進行胆道癌症例に対する化学療法の理念あるいは推奨に準じ,術後全身状態が回復した時点で化学療法の実施を考慮することが勧められる。

表6 胆道癌術後補助化学療法のランダム化比較試験1)
  n 5-year survival rate p-value
Pancreas
Mitomycin C/5-FU 81 11.5% NS
Surgery alone 77 18.0%
Gallbladder
Mitomycin C/5-FU 69 26.0% 0.037
Surgery alone 43 14.4%
Bliary tract
Mitomycin C/5-FU 58 26.7% NS
Surgery alone 60 24.1%
Ampulla of Vater
Mitomycin C/5-FU 24 28.1% NS
Surgery alone 24 34.3%


引用文献
1) Takada T, Amano H, Yasuda H, Nimura Y, Matsushiro T, Kato H, et al: Study Group of Surgical Adjuvant Therapy for Carcinomas of the Pancreas and Biliary Tract. Is postoperative adjuvant chemotherapy useful for gallbladder carcinoma? A phase III multicenter prospective randomized controlled trial in patients with resected pancreaticobiliary carcinoma. Cancer. 2002;95:1685-95.
2) Todoroki T. Chemotherapy for gallbladder carcinoma--a surgeon's perspective. Hepatogastroenterology. 2000;47:948-55.


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