ガイドライン

(旧版)エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン[第1版]

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VI:外科治療

 
はじめに

胆道癌における唯一の根治療法が外科切除であることは現在異論のないことである。したがって胆道癌と診断されたすべての患者に対して外科切除の可能性をまず第一に検討することが大切である。参考までに全国胆道癌登録調査報告(1988〜1997年)の切除例の術後遠隔成績を図23に示した。しかし胆道癌の進展様式は極めて多様性に富むことから切除の可否,およびどのような手術術式選択が適切なのかについてはこれまでしばしば問題とされてきているが,いまだ十分なコンセンサスができていないのが現状である。
胆道癌は,胆道癌取り扱い規約からその発生部位に応じて肝内胆管癌,肝外胆管癌,乳頭部癌,胆嚢癌に区分される。その局所進展様式は各々異なり胆管癌では胆管壁に沿った長軸方向への癌浸潤と胆管壁外に向かう癌浸潤が重要である。胆嚢癌では壁深達度および肝臓浸潤と肝十二指腸間膜浸潤が重要である。それらに加えて他臓器癌と同様な進展様式としてリンパ節転移,血行性転移,腹膜播種があげられる。他の消化器癌,特に消化管癌と異なる胆道癌の特徴として,たとえ早期胆道癌という壁深達度の浅いものにおいても胆管壁の長軸方向の癌進展の範囲によっては,切除の可否および術式が大きく異なってしまうことがある。また解剖学的に肝門部は極めて複雑でありこの部位に発生する癌の外科治療においては様々な因子が外科切除の可否,および切除術式に関わってくる。肝門部胆管癌の分類には日本の胆道癌取扱い規約による分類(図24)に加えてBismuth分類(図25)がよく用いられる。これは先に述べた胆管長軸方向の癌浸潤を基にした肝門部胆管癌の局在分類である。実用的な分類であるが,胆管壁外への癌浸潤が加味されていないので,これのみで外科切除の可否および切除術式を選択することはできない。
胆道癌の外科治療においては,その症例数の少なさ,外科術式の多様性から高いエビデンスレベルのデータは殆どないといってよい。しかしこれまでの多くの外科医を中心とした先達の積極的な治療経験からある程度のコンセンサスは得られつつある。特に早期胆道癌においてはかなりの部分でコンセンサスが得られてきているといってよいであろう。ただ進行胆道癌においては施設間での手術適応において大きな差異が見られており,またその手術成績も必ずしも一定でないため,治療選択においてコンセンサスが得られるには,新たな数多くの症例での検討結果が報告されるのを待つ必要があろう。
血管浸潤例に対して血管合併切除による根治性を得ようとする外科切除の試みなど近年少しずつ,その報告がなされてきた所であり,その意義を評価するには今しばらくの時間が必要であり,外科医の積極的な努力が求められる所である。しかしながら進行胆道癌の拡大手術の侵襲は大きいため術後合併症の発生も少なくなくその適応は慎重にすべきであろう。また胆道癌に対する十分な外科経験を持った施設で慎重に行うことが望ましいと考えられる。
このように胆道癌外科治療についてはいまだ,その成績を検証できるだけの十分なエビデンスレベルの高いデータがない。そのため本ガイドラインにおいては,作成委員のコンセンサスを重視した形でまとめたので歯切れの悪い印象はぬぐえない。これが胆道癌外科治療の現状であることを知って頂くことも大切であろう。今後のデータの集積によってより明確なガイドラインに改訂されていくことを期待している所である。


図23 胆道癌切除例の術後遠隔成績
図23 胆道癌切除例の術後遠隔成績
(全国胆道癌登録調査報告1988-1997年.J Hepatobiliary Pancreat Surg. 2002;9:569-75.)


図24 胆道系の解剖学的区分
図24 胆道系の解剖学的区分
(日本胆道外科研究会 編.胆道癌取扱い規約第5版.金原出版,東京,2003年.)


図25 肝門部胆管癌のBismuth-Corlette分類
図25 肝門部胆管癌のBismuth-Corlette分類
(Bismuth H, Nakache R, Diamond T. Management strategies in resection for hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg. 1992;215:31-8.)

 

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