ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
IX.化学放射線療法

 
Clinical Question

CQIX-1 根治的化学放射線療法の適応となる対象は。
Answer EMRの適応となる表在癌と遠隔転移(M1b)を有する症例を除くすべての症例で適応となり得る。切除可能症例では外科手術が標準治療であり,手術に適さないかあるいは手術を希望しない症例では根治的化学放射線療法が推奨される。国内での主な治療成績の報告では,ステージIでは2年生存率93%256),切除可能ステージII~III(T4除く)では3年生存率40~50%前後254),261),T4/M1/LYM症例では3年生存率20%前後228),229),230)と報告されている。切除可能症例での安全性は問題ないが,T4症例では穿孔などの重篤な合併症の併発もあり,慎重な管理を要する。


CQIX-2 低用量の5-FU+シスプラチンを用いた化学放射線療法は推奨されるか。
Answer 低用量の5-FU+シスプラチンを用いた化学放射線療法はさまざまなスケジュールを用いた報告がみられるが,いずれも小規模な試験結果のみであり262),263),現時点では推奨する十分なエビデンスはなく,臨床試験として行われるべきである。現在JCOGにおいて切除不能局所進行症例を対象とした低用量と標準量の5-FU+シスプラチンを用いた化学放射線療法のランダム化比較試験(JCOG0303)が進行中であり,その結果を待つ必要がある。
推奨事項 推奨される十分な根拠はない。[グレード C]


CQIX-3 術前化学放射線療法奏効例での手術は推奨されるか。
Answer 欧州から術前化学放射線療法+手術と根治的化学放射線療法とのランダム化比較試験が2つ報告されている264),265)。フランスでの比較試験(FFCD9102)では,切除可能T3症例を対象に,まず5-FU+シスプラチンと放射線照射(30~46Gy)の同時併用を行い,奏効した症例を手術群と化学放射線療法を根治量まで追加する群とに無作為に割付するデザインで行われた。その結果,追加手術群と追加化学放射線療法群の3年生存率は31%,29%と両群間に差はみられなかった(p=0.56)。一方,ドイツの比較試験は,T3-4症例を対象に,化学療法(5-FU/ロイコボリン+エトポシド+シスプラチン)後に化学放射線療法(エトポシド+シスプラチン+放射線40Gy)を行った後,全例を手術群と追加化学放射線療法群(放射線総量60Gy)とに割付するデザインで行われた。その結果,手術群の方が良好な生存を示したものの有意差には至らず(p=0.06),追加手術の意義は確立されていない。この試験においても術前化学放射線療法奏効例のみでの後層別解析では,3年生存率にまったく差がみられていない。また,いずれの試験においても,追加手術群での手術関連死亡が9%発生しており,安全性の面での問題も残していることから,現時点では少なくとも化学放射線療法奏効例での追加手術を推奨する根拠は乏しい。
推奨事項 推奨される十分な根拠はない。[グレード C]


CQIX-4 化学放射線療法同時併用後の追加化学療法は必要か。
Answer 表8に示したとおり,追加化学療法施行の有無はさまざまであり,その意義は明確化されていない。しかし,現時点で根治的化学放射線療法に関する最も大規模なデータであるRTOG8501250),251),252),9405234),国内でのOhtsuら228),Nishimuraら229)の試験でも追加化学療法が2コース行われており,その治療成績はこれらの追加化学療法を含んだ成績であることから,原則的に施行することが勧められる。一方,ステージIに関しての大規模な試験の報告はJCOG9708以外になく,本試験では追加化学療法が行われていないことから,ステージIに関しては推奨グレードCとした。
推奨事項 行うよう勧められる。(ステージIではグレードC:推奨される十分な根拠がない)[グレード B]
 
表8:主な根治的化学放射線療法の治療スケジュール
報告者 対象病期 化学療法剤 放射線照射
5-FU シスプラチン 期間×コース数 1回量×回数 split
RTOG T1-4 N0,1 M0 1,000mg/m2/日×4日 75mg/m2 4週ごと×4 1.8Gy×28 なし
JCOG9708 T1 N0 M0 700mg/m2/日×4日 70mg/m2 4週ごと×2 2.0Gy×30 1週
JCOG9516 T4 N0,1 M0 700mg/m2/日×4日 70mg/m2 4週ごと×2 2.0Gy×30 1週
Ohtsu T4/M1/LYM 400mg/m2/日×10日 40mg/m2×2 5週ごと×2 2.0Gy×30 2週
    800mg/m2/日×5日 80mg/m2 4週ごと×2 (追加化学療法)  
Nishimura T4 M0 300mg/m2/日×14日 10mg×10 4週ごと×2 2.0Gy×30 1週
    700mg/m2/日×4日 70mg/m2 4週ごと×2 (追加化学療法)  
註)国内で現在進行中の臨床試験では放射線照射splitなしのスケジュールが多く採用されつつある。

 

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