ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
IX.化学放射線療法

 
要約

食道癌において同時化学放射線療法は放射線単独療法に比し有意に生存率を向上させることが比較試験で証明されており250),251),252),非外科的治療を行う場合の標準的治療として位置づけられる。根治を目指した化学放射線療法の対象となる症例は,T1-3 N0,1 M0(UICC-TNM)の切除可能症例,切除不能のT4 N0,1 M0,および一部のM1/LYM症例である。切除可能症例での外科手術との比較では後ろ向き研究で手術に匹敵するとの報告もあるが254),255),直接の比較試験の報告はなく,現時点では治療選択肢の一つとして,手術に適さないあるいは食道温存を希望する症例に適応される。各種臨床試験での薬剤投与量・放射線照射量・治療スケジュール等はさまざまな方法での報告がなされており一定していないが,5-FUとシスプラチンによる併用化学療法に放射線照射を50〜60Gy同時に併用する治療法が最も汎用されている。いずれの治療成績も十分な化学療法と放射線照射によって成り立っていることを認識する必要がある。


根治的化学放射線療法の放射線照射量

米国Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)での放射線単独療法(64Gy)と同時化学放射線療法(5-FU+シスプラチン+放射線照射50Gy)のランダム化比較試験(RTOG8501)では,それぞれの5年生存率が0%,27%と有意(p<0.0001)に化学放射線療法の成績が良好であったことから,非外科的治療としては化学放射線療法を行うことが強く推奨される251)。さらに,その後RTOGを中心に行われた標準量(50.4Gy)と高用量(64.8Gy)の放射線照射を用いた化学放射線療法同士のランダム化比較試験(RTOG9405/INT0123)では,生存期間中央値,2年生存率,局所制御率のいずれにおいても高用量群の優位性はみられず,5-FU+シスプラチンを併用した化学放射線療法として行う場合の放射線療法の標準量は50.4Gy(1.8Gy×28回)であると結論している234)。一方,わが国では60Gyまで行っている報告が多く,標準的な放射線照射量は定まっていない228),230),256)。放射線照射量に関しては,VIII.放射線療法の頁を参照されたい。

根治的化学放射線療法で用いる化学療法

化学療法は,5-FU+シスプラチンが標準である。RTOG9405では,5-FU1,000mg/m2/日を4日間持続静注,シスプラチン75mg/m2を1日目に点滴静注するスケジュールを4週ごとに4コース(最初の2コースは放射線と同時併用)行うスケジュールとしている。国内での5-FU+シスプラチンの投与法は一定していないが,5-FUは700〜800mg/m2/日を4〜5日間持続静注,シスプラチンは70〜80mg/m2で行われているものが多い。いずれにおいても,放射線療法との同時併用は2コース行われているが,その後の追加化学療法施行の有無はさまざまである。表8に根治的化学放射線療法の主な治療スケジュールを示す。

表8:主な根治的化学放射線療法の治療スケジュール
報告者 対象病期 化学療法剤 放射線照射
5-FU シスプラチン 期間×コース数 1回量×回数 split
RTOG T1-4 N0,1 M0 1,000mg/m2/日×4日 75mg/m2 4週ごと×4 1.8Gy×28 なし
JCOG9708 T1 N0 M0 700mg/m2/日×4日 70mg/m2 4週ごと×2 2.0Gy×30 1週
JCOG9516 T4 N0,1 M0 700mg/m2/日×4日 70mg/m2 4週ごと×2 2.0Gy×30 1週
Ohtsu T4/M1/LYM 400mg/m2/日×10日 40mg/m2×2 5週ごと×2 2.0Gy×30 2週
    800mg/m2/日×5日 80mg/m2 4週ごと×2 (追加化学療法)  
Nishimura T4 M0 300mg/m2/日×14日 10mg×10 4週ごと×2 2.0Gy×30 1週
    700mg/m2/日×4日 70mg/m2 4週ごと×2 (追加化学療法)  
註)国内で現在進行中の臨床試験では放射線照射splitなしのスケジュールが多く採用されつつある。

根治的化学放射線療法による有害事象

化学放射線療法の有害事象は,早期有害事象と晩期有害事象に大別される。主な早期有害事象としては,悪心・嘔吐,骨髄抑制,食道炎などが挙げられる。切除可能ステージでの安全性は高いが,切除不能T4症例では食道穿孔のリスクがあり,慎重な管理を要する。一方,晩期有害事象としては放射線肺臓炎,胸水,心嚢水貯留などが挙げられる248)。稀ではあるが,胸椎圧迫骨折や放射線脊髄炎などの報告もある〔VIII.放射線療法の頁参照〕。このような晩期毒性に関してはリスク臓器である肺や心臓への放射線照射量が問題とされており,その軽減のためCT画像を基にした三次元照射計画法が普及しつつある。

治療後の経過観察

根治的化学放射線療法後の経過観察は通常CTおよび内視鏡検査を用いて行われる。効果判定および経過観察の期間についてはその妥当性を示す明確なエビデンスはないが,多くは化学放射線療法終了3〜4週後と追加化学療法各コース終了後に行い,その後は1年目は3カ月ごと,2年目以降は6カ月ごとに経過観察を行う場合が多い。化学放射線療法後の遺残や再発としては食道局所が最も多く,その大部分は治療開始から1年以内である。また,食道癌は経過中に食道内他部位や頭頸部などのいわゆる多重がんを併発しやすいことから,慎重な観察と適切な対処が必要である。

根治的化学放射線療法後の局所遺残・再発例に対する救済(サルベージ)治療

根治的化学放射線療法後の局所遺残・再発例に対しては,最近内視鏡治療や外科手術によるサルベージ治療の試みが報告されている。サルベージ内視鏡治療に関しては,EMRやPDTによる試みがなされ257),258),安全性は問題なく治癒例も得られた報告がなされているが,未だ少数例の成績でありその効果に関する評価は十分ではない。一方,サルベージ手術に関しては259),260)治癒症例も得られているが,手術関連死亡率が高く,その術式やリンパ節郭清範囲も明確でなく,現時点では一般診療とはなっていない。


【参照】
VIII.放射線療法 根治的放射線療法 4)線量分割と併用療法
X.食道癌治療後の経過観察 根治的化学放射線療法後の経過観察
XI.再発食道癌の治療 根治的化学放射線療法後CR例の再発に対する治療

 

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