ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
VIII.放射線療法

 
Clinical Question

CQVIII-1 切除可能例(T1-3 N0,1 M0,UICC分類 2002年版)に根治照射を行う場合,化学療法と放射線療法の同時併用は推奨されるか。
Answer 遠隔転移のない非切除食道癌を対象に放射線単独療法と化学放射線療法を比較したメタアナリシスは2報ある231),232)。2001年までに報告された同時併用化学放射線療法の7報あるいは化学療法を先行する順次併用化学放射線療法の5報のランダム化比較試験250),251),252)のメタアナリシスでは,1年生存率をエンドポイントとして,同時併用では死亡率を39%(p<0.00001)低下させることが示された231)。一方,順次併用では生存率の向上は示されなかった。2005年4月までに報告された同時併用化学放射線療法の11報あるいは化学療法を先行する順次併用化学放射線療法の8報のランダム化比較試験のメタアナリシスでは,生存率曲線のハザード比をエンドポイントとし,同時化学放射線療法によってハザード比が27%低下した(p<0.00001)232)。また同時化学放射線療法によって局所再発率も有意に低下した。同時化学放射線療法では重篤な急性障害が有意に増加することも明らかにされた。一方,順次併用化学放射線療法では生存率も局所制御率も向上せず,急性障害は有意に増加した。以上の根拠より根治照射例(T1-3 N0,1 M0)には,同時化学放射線療法が強く推奨される。ただし,同時化学放射線療法では急性障害も増加するので,その対象は全身状態のよい根治照射例とした。
推奨事項 全身状態のよい切除可能例(T1-3 N0,1 M0,UICC分類 2002年版)に根治照射を行う場合,同時化学放射線療法が強く推奨される。[グレード A]


CQVIII-2 切除不能局所進行例(T4 N0,1 M0,UICC分類 2002年版)あるいは鎖骨上窩リンパ節転移を有する症例(M1/LYM)に同時化学放射線療法は推奨されるか。
Answer 欧米ではT4症例は姑息照射と考えられているため,先ほど述べた放射線単独と化学放射線療法のメタアナリシスのもととなるランダム化比較試験の対象には切除不能局所進行例(T4 N0,1 M0)はほとんど含まれていない。一方,わが国ではこれまで食道癌は手術が第一選択の治療法と考えられてきたため,化学放射線療法は主としてT4あるいは鎖骨上窩リンパ節転移を有する症例を対象に行われてきた。これらの報告では瘻孔形成などの合併症の危険性は高いものの,同時化学放射線療法によって切除不能局所進行例(T4 N0,1 M0)あるいは鎖骨上窩リンパ節転移を有する症例(M1/LYM)にも10~20%の長期生存例が報告されている228),229),230)
推奨事項 同時化学放射線療法は切除不能局所進行例(T4 N0,1 M0,UICC分類 2002年版)あるいは鎖骨上窩リンパ節転移を有する症例(M1/LYM)にも長期生存が期待できる治療法として推奨される。[グレード B]


CQVIII-3 同時化学放射線療法での根治照射に必要な線量はいくらか。
Answer 同時化学放射線療法での合計線量に関しては,メタアナリシスにおいてさまざまな線量分割を時間因子を加味したbiologically effective dose(BED)に換算して分析した結果,50Gy/25回/5週に相当するBED:38Gy未満でのランダム化比較試験では有意な生存率の向上はみられず,BED:38Gy以上でのみ同時化学放射線療法による有意な生存率の向上が示されている232)。また,50.4Gy/28回/5.6週と64.8Gy/36回/7.2週の同時化学放射線療法をランダム化比較した米国の試験にて両群の生存率に有意差がないとの報告があり234),米国では同時化学放射線療法は通常分割法で50Gyが標準とみなされている。一方,わが国からの報告は同時化学放射線療法においても約60Gy/30回/6~8週までの照射が基本となっており,合計60Gyまでは比較的安全に照射できる226),227),228),229),230)。わが国の放射線療法の実態を調べたpatterns of care study(PCS)によると,1999年から2001年では約半数に同時化学放射線療法が行われ,化学放射線療法群の外照射線量の中央値は60Gyであり,放射線単独群の中央値と同等であった253)
推奨事項 同時化学放射線療法での根治照射には,少なくとも通常分割法で50Gy/25回/5週以上に相当する線量が必要である。[グレード B]


CQVIII-4 放射線単独療法の場合,通常分割照射法より加速過分割照射が推奨されるか。
Answer 食道扁平上皮癌の放射線療法において全照射期間は重要な因子で,放射線単独療法で治療する場合,全照射期間が延長すると局所制御率が下がることが知られている235)。中国で行われた全照射期間を短縮するため治療の後半で1日2回の過分割照射を行う後期加速過分割照射と通常分割照射法とのランダム化比較試験では236),後期加速過分割照射により生存率が有意に向上した。その後の後期加速過分割照射と同時化学放射線療法とのランダム化比較試験では,同時化学放射線療法より後期加速過分割照射のほうがやや生存率で低かったが有意差は認められなかった237)。以上より,加速過分割照射は化学療法の併用が困難な患者には有用な照射法と考えられる。
推奨事項 同時化学放射線療法が困難な食道扁平上皮癌患者には,加速過分割照射は有用な照射法と考えられる。[グレード B]
放射線単独療法の場合,休止期間をおかないよう勧められる。[グレード B]


CQVIII-5 外照射に腔内照射の追加は推奨されるか。
Answer 食道表在癌は外照射単独と腔内照射の併用のよい適応と考えられ,単施設からの遡及的報告では,腔内照射の追加により良好な治療成績が得られたとの報告がある(表7)238),239),240),241)。一方,根本ら244)のわが国の多施設での成績をまとめた報告では,外照射単独と腔内照射の併用による生存率の差はなかった。食道表在癌のみを対象としたランダム化比較試験はないが,わが国での進行癌を含んだ腔内照射のランダム化比較試験では,腔内照射は長径5cm以下の症例,あるいは深達度T1,2の食道癌に有効とされている247)。しかしながら,最近では同時化学放射線療法が一般的になっており,化学放射線療法に腔内照射追加の有効性と安全性は必ずしも明らかではない。
推奨事項 外照射に腔内照射の追加を推奨するだけの十分な根拠はない。[グレード C]
 
表7:わが国からの食道表在癌に対する外照射単独あるいは腔内照射併用での治療成績
報告者 症例数 病期 局所制御率 全生存率
外照射単独 腔内照射併用 2年 5年
Okawa(1995)* 115 T1a,T1b 72% 85% 75% 39%
Akagi(1999) 35 T1a,T1b 74% 38%
Nishimura(1999) 21 T1a,T1b 45%(2y) 85%(2y) 76%
Nemoto(2000)* 78 T1b 66% 73% 45%
Nemoto(2001)* 95 T1b no difference 72% 42%
Kodaira(2003) 33# T1a,T1b 74%
Sai(2005) 34 T1a,T1b 54%(2y) 79%(2y) 70% 59%
Ishikawa(2005) 38 T1a,T1b 78% 90% 80% 61%
Shioyama(2005) 29# T1a,T1b no difference 81% 62%
Nemoto(2006)* 42# T1a no difference 90%
  99# T1b no difference 81%
T1a:粘膜癌,T1b:粘膜下層癌
*多施設の症例をまとめた報告
#同時化学放射線療法症例を含む。症例数に無印は放射線単独療法。

 

書誌情報