ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

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VII.化学療法

 
要約

食道癌治療における化学療法は,主に術前術後の補助化学療法や放射線との併用による化学放射線療法など,手術や放射線などの併用で使用される。化学療法単独での適応は遠隔転移を有する症例(M1b)や術後の遠隔再発例に限られる。現在では5-FU+シスプラチンが最も汎用されているが,生存期間延長のエビデンスは明確ではなく,姑息的な治療としての位置づけである。


単剤で有効性が示されている薬剤

食道癌に対する化学療法は5-FU,シスプラチン,マイトマイシンC,ブレオマイシン,ビンデシン,アドリアマイシン,パクリタキセル,ドセタキセル,ビノレルビン,ネダプラチン,イリノテカン,ゲムシタビンなど多数の薬剤でその有効性は認められている(表3)が190),191),192),193),194),195),196),197),198),199),200),201),202),203),204),205),206),207),単剤での奏効率は15〜30%程度と低くCR例も稀であり,単剤での生存延長は認められていない208)。現在最も汎用されている薬剤は5-FUとシスプラチンの2剤であるが,この2剤はそれぞれ単剤での効果とともに併用の際の相乗効果209)や放射線の増感作用など210),211)も認められることが基礎的検討で証明され,かつ臨床での併用療法の良好な成績が多数報告されていることが汎用されている要因である。なお,わが国では現時点(2006年10月)でパクリタキセル,ビノレルビン,イリノテカン,ゲムシタビンの食道癌に対する保険適用は認められていない。

表3:食道癌に対する主な化学療法単剤での治療成績(わが国での保険適用既承認薬)
薬剤 投与量・スケジュール 対象症例数 奏効率(%) 文献
5-FU 500mg/m2/日×5日 26 15 190)
マイトマイシン-C 20mg/m2 4-6週毎 24 42 192)
シスプラチン 50mg/m2 3週毎 24 25 192)
ビンデシン 3-4.5mg/m2 毎週 23 18 200)
ドセタキセル 70mg/m2 3週毎 48 21 206)
ネダプラチン 100mg/m2 4週毎 29 52 207)


併用療法での治療効果

シスプラチンの臨床導入以来本剤を中心とした種々の併用療法が展開されてきたが(表4),現在最も汎用されているのは5-FU+シスプラチンの2剤併用である212),213),214)。本併用療法は単独で行われる場合海外では通常5-FU1,000mg/m2/日,4〜5日間持続静注とシスプラチン100mg/m2/1日目の投与法で行われることが多いが,わが国で行われた第II相試験では5-FU700mg/m2/日,5日間持続静注とシスプラチン70mg/m2/1日目の投与で奏効率36%と報告されている214)。本併用療法と無治療(best supportive care)との比較試験は海外から一編報告があるが,明らかな生存延長は証明されていない。しかし,対象例の多くは治癒切除後の症例での術後補助化学療法としての意味合いが強く,遠隔転移症例はごくわずかであることから,本併用療法の生存への効果は不明である215)。また,近年海外ではパクリタキセル,イリノテカン,ゲムシタビンなど216),217),218),219),国内ではネダプラチン220)などを用いた併用療法も試みられているが,まだ大規模な第III相試験の報告はなく,標準的治療に位置付けされている5-FU+シスプラチンを上回るメリットは未だ証明されていない。現時点でわが国では,初回治療としては5-FU+シスプラチンを行い,二次治療としてドセタキセルを行う場合が多い。いずれにしても上記の併用療法を含めた化学療法単独ではその効果には限界があり,化学療法単独の適応は切除不能の転移を有する症例に限られる。

表4:主な併用化学療法の治療成績
薬剤 対象組織型 対象症例数 奏効率(%) 文献
5-FU+シスプラチン 扁平上皮癌 39 36 214)
シスプラチン+パクリタキセル* 扁平上皮/腺癌 32 44 217)
シスプラチン+イリノテカン* 扁平上皮/腺癌 35 57 218)
シスプラチン+ゲムシタビン* 扁平上皮/腺癌 32 45 219)
5-FU+ネダプラチン 扁平上皮癌 38 40 220)
*わが国では現時点(2006年10月)で保険適用未承認

 

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