ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
V.術前補助療法

 
Clinical Question

CQV-1 切除可能例(T1-3 N0,1 M0,UICC分類 2002年版)に術前化学療法は推奨されるか。
Answer 海外での術前化学療法と切除単独を比較したランダム化比較試験を基にするメタアナリシスが3報ある162),163),164)。ランダム化比較試験6報を対象に1年生存率をエンドポイントとしたメタアナリシスでは生存率に差はなかった162)。一方,ランダム化比較試験7報を対象に2年生存率をエンドポイントとしたメタアナリシスでは術前化学療法により2年生存率が4.4%上昇した(p=0.07)163)。化学療法に5-FU/シスプラチンを用いた最近のランダム化比較試験4報に限れば,2年生存率は6.3%上昇することが明らかにされた。しかしながら,2年生存率をエンドポイントとした別のメタアナリシスでは化学療法による生存率の向上はみられていない164)。食道扁平上皮癌のみを対象にしたランダム化比較試験においても,術前化学療法で病期改善はみられたものの生存率に有意差を認めなかった161)。以上,切除可能例に対する術前化学療法の効果は明確でない。
推奨事項 切除可能症例に術前化学療法を推奨する十分な根拠はない。[グレード C]


CQV-2 術前照射は切除可能例(T1-3 N0,1 M0,UICC分類 2002年版)の生存率を向上させるか。
Answer 術前照射後の切除と切除単独を比較したメタアナリシスは2報ある。欧米で行われた5報のランダム化比較試験を基にしたメタアナリシスの結果,1年生存率をエンドポイントとすると術前照射は生存率を向上させないことが明らかになった162)。生存率曲線のハザード比をエンドポイントとしたメタアナリシスでは,術前照射によって死亡確率が11%低下した(p=0.062)176)。これは2年生存率で3%の生存率の向上というわずかな差であり,術前照射は患者の生存率向上には寄与する可能性は低いと結論されている176)。Askらのシステマティックレビューでも術前照射は患者の生存率向上には寄与しないと結論されている177)。以上より,術前照射が切除可能例の生存率を向上させるとする十分な根拠はない。
推奨事項 術前照射は切除可能例の生存率を向上させるとする十分な根拠はない。[グレード C]


CQV-3 切除可能例(T1-3 N0,1 M0,UICC分類 2002年版)に術前化学放射線療法は推奨されるか。
Answer 術前化学放射線療法後の切除と切除単独を比較したメタアナリシスは5報ある162),163),171),172),173)。いずれのメタアナリシスも欧米で行われた遠隔転移のない切除可能例のみを対象とした手術単独と術前化学放射線療法後の手術のランダム化比較試験5~7報を基にしている。1年生存率あるいは2年生存率をエンドポイントとしたメタアナリシスの結果では,術前化学放射線療法による生存率向上は認められない162),163)。一方,3年生存率をエンドポイントとした2件のメタアナリシスの結果では,切除可能例に対する術前化学放射線療法(20~45Gy)は術後90日以内の手術関連死亡率を有意に上げる一方で,局所再発率を低下させ3年生存率は有意に向上させる171),172)。生存率曲線のハザード比をエンドポイントとしたメタアナリシスでは,術前化学放射線療法によって死亡確率が14%低下した(p=0.07)173)。このメタアナリシスの対象となったランダム化比較試験6報のうち,5報166),168),169),170),174)は術前化学放射線療法群の生存率が高かったが有意差はなく,1報の食道腺癌のみを対象としたランダム化比較試験173)でのみ術前化学放射線療法群の生存率が有意に高かった。一方,2005年にオーストラリアから報告されたランダム化比較試験(術前5-FU/シスプラチン+放射線治療35Gy/15回/3週で治療した128例と手術単独での128例の比較,腺癌比率62%)では175),全体としては両群の生存率に差がないものの,扁平上皮癌に限れば無再発生存率が有意に高かったと報告し,組織型による違いも必ずしも一致しない。
推奨事項 切除可能例に対する術前化学放射線療法は3年生存率を向上させるとの欧米のメタアナリシスがある。しかしながら,わが国でのレベルの高いエビデンスはなく,術前治療として推奨するだけの十分な根拠はない。[グレード C]

 

書誌情報