ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
IV.外科治療

 
D.その他の治療法
Clinical Question

CQIV-13 経食道裂孔的非開胸食道切除・再建術の現時点における位置づけ,今後の動向は。
Answer 本術式は,縦隔リンパ節郭清が十分に施行しえないにも関わらず,手術侵襲も少なくない。食道温存を目指した集学的治療が普及してきている近年ではその適応は限定的になりつつある。内視鏡的粘膜切除術の導入以降,粘膜癌に対する本術式の適応は減少し,今後,内視鏡的粘膜下層剥離術の普及によりさらに適応症例は減少するものと予想される。また近年,食道温存療法としての化学放射線療法の普及により耐術能不良症例に対する適応もより慎重に検討される傾向にある。
欧米においては,主に食道胃接合部癌や術前化学放射線療法などとの併用療法として集学的治療の一環として本術式が施行されている。2002年にHulscherらによって施行されたランダム化比較試験により開胸切除・縦隔リンパ節郭清術と比較して,術後合併症が有意に少ないことが判明した。一方,有意差はないものの根治術としての長期成績は開胸切除・縦隔リンパ節郭清術と比較して劣る傾向が示された116)
非開胸抜去の郭清の欠点を補うために,最近では体腔鏡を用いた郭清を伴う食道抜去術も試みられている。
推奨事項 根治を目的とした経食道裂孔的非開胸食道切除・再建術。[グレード C]


CQIV-14 内視鏡補助下食道癌手術は開胸手術に比して利点はあるのか。根治性は劣らないのか。
Answer 低侵襲性の証明については未だ研究途上である。拘束性肺障害,術後肺機能検査所見が内視鏡補助下食道癌手術において改善するとの報告や131),146),IL-6,IL-8など血清中炎症性サイトカインの上昇が抑制されるとの報告がある一方147),実際の術後肺合併症発生率の軽減にはつながっていないとする報告も多い130),148)。潜在的な低侵襲性は示唆されているものの臨床的な利点の実証には,大規模なランダム化比較試験が必要となろう。
内視鏡補助下食道癌手術と従来法の根治性,長期成績について十分な症例数,観察期間をもって比較した報告は少ない136),146)。ランダム化比較試験が施行されていない現状では結論は未確定であるが,内視鏡補助下食道癌手術が従来法に比べて長期予後が不良であるという証明はなされていない。内視鏡下食道癌手術経験症例数が治療成績に影響を及ぼすことは従来から報告されている。本術式の施行により患者に利益をもたらし得る症例数は報告によりさまざまであるが,一定の手技馴れ期間を要することは事実である131),136)
推奨事項 食道癌根治術としての内視鏡補助下手術。[グレード C]


CQIV-15 ステント治療の適応は狭窄部位によって違いがあるか。
Answer ステント治療は胸部中部~中下部食道癌がよい適応である。頸部食道癌など高い部位の狭窄には,挿入後の異物感や痛みが強いこと,気道の圧迫を来す場合があるので注意を要する。また,胸部下部~胸部食道癌ではステント下端が噴門部にかかると,胃内容の逆流現象が生じ,嚥下性肺炎などを併発する危険性があるので適応には慎重を要する149),150)。最近,逆流防止弁付きステントが開発されランダム化比較試験により逆流防止効果が示されたものもある151),152),153)


CQIV-16 高度狭窄による経口摂取不良例において(化学)放射線療法施行前,施行中あるいは施行後のステント挿入の適応は。
Answer 日本食道疾患研究会(日本食道学会)のアンケート調査では,放射線療法施行前,施行中にステント挿入を行った場合,瘻孔形成やこれに伴う消化管出血などの致死的有害事象が高頻度に認められた154)。(化学)放射線療法奏効例では,狭窄の解除,予後の改善も期待できる現状では,早期のステント挿入は避けるべきである。また,放射線療法,化学放射線療法後に高度狭窄が残存しかつ根治切除が不可能である症例に対してステントを挿入した場合,出血,穿孔,縦隔炎を併発する可能性がある。こうした症例で経口摂取に対する要望が強い場合には,ステント挿入により重篤な合併症を発症することがあることを説明し,バイパス術,栄養瘻造設術との適応判断を慎重に行うことが望ましい。
推奨事項 放射線療法,化学放射線療法施行前,施行中の食道ステント挿入は避けるべきである。[グレード C]
放射線療法,化学放射線療法施行後に高度狭窄が残存し,経口摂取に対する要望が極めて強い場合には,合併症について十分な説明を行ったうえで食道ステント挿入を行う。[グレード C]


CQIV-17 食道ステント挿入以外の姑息的食道通過障害解除療法の現状は。
Answer 食道ステント挿入以外にも,放射線腔内照射,レーザー照射,温熱療法,エタノール注入などが姑息的食道通過障害解除療法として報告されている155),156),157)。放射線腔内照射は,食道ステント挿入術とのランダム化比較試験の結果,通過障害解除の即効性はステントに比べて劣るものの,合併症の発生率が低く通過障害改善の持続も優れる治療法として推奨された158)
推奨事項 姑息的食道通過障害解除療法としての放射線腔内照射。[グレード C]
姑息的食道通過障害解除療法としてのレーザー照射。[グレード C]
姑息的食道通過障害解除療法としての温熱療法。[グレード C]
姑息的食道通過障害解除療法としてのエタノール注入。[グレード C]

 

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