ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
IV.外科治療

 
B.胸部食道癌に対する手術
再建方法

1)再建経路
胸壁前,胸骨後,後縦隔(胸腔内を含む)の3経路がある。各施設,各症例毎に再建ルートは一様ではなく,各々一長一短はあるが,胸骨後経路が多く施行されてきたが,最近では高位胸腔内吻合を含めると後縦隔経路による再建が最も多く施行されている1)(表2)。

表2:各経路の利点と欠点
経路 胸壁前 胸骨後 後縦隔・胸腔内
利点
  • 口側食道切除がより高位まで可能である。
  • 吻合操作が容易。
  • 二期的吻合が可能。
  • 縫合不全の処置が容易かつ安全。
  • 再建臓器に癌ができた場合,治療がしやすい。
  • 口側食道切除がより高位まで可能である。
  • 再建距離が胸壁前より短い。
  • 胸腔内吻合より縫合不全の処置が容易。
  • 再建臓器に癌ができた場合,比較的治療がしやすい。
  • 生理的ルートに最も近い。
  • 手術侵襲が少なくなる。
  • 縫合不全の発生頻度が少ない。
欠点
  • 再建距離が長い。
  • 縫合不全の頻度が高い。
  • 再建臓器が屈曲しやすい。
  • 美容上の問題がある。
  • 屈曲による通過障害を起こしやすい。
  • 再建臓器による心臓・肺の圧迫。
  • 器械吻合の場合,操作が行いにくい。
  • 大きな縫合不全の処置が困難。
  • 再建臓器の圧迫壊死の可能性。
  • 両側開胸になることがある。
  • 縫合不全が致命的になりやすい(胸腔内)。
  • 口側食道切除が制限されることがある(胸腔内)。
  • 潰瘍が穿孔,重篤化することがある。
  • 再建臓器に癌ができた場合,治療がしにくい。
(文献113114より改変)

2)再建臓器
再建臓器としては胃が最も多く用いられている1)。胃切除後,胃癌合併時や胃を温存する場合には結腸,回結腸や空腸が用いられる。


Clinical Question

CQIV-11 再建経路の選択はどう決定されるのか。
Answer 食道癌の進行度,手術の安全性,術後の嚥下機能,美容上の外観,再建臓器における術後遠隔時の異時性癌発生のリスクなどを考慮して個々に判断されることが多い。近年では後縦隔経路の再建が増加している。これは最も生理的な経路であり,術後の嚥下機能の点で食道の解剖学的経路である後縦隔経路(胸腔内)が有利であるとする報告108),109)がある。一方,胸骨後経路と比較して差がないとする報告110)もある。また,胸腔内吻合は縫合不全により縦隔炎を経て重篤な病態となり致命的となるリスクを有する。
また,進行癌では術後の再発を考慮し,後縦隔経路以外の非解剖学的経路が選択されることも多い。胸壁前経路は美容上の観点からは劣るものの術後遠隔時に再建臓器に癌が発生した場合,治療が比較的行いやすいことが多い。後縦隔で再建されている場合は再開胸して再建臓器まで到達することが困難である場合も多い111)
再建臓器に胃を用いた場合,胃に潰瘍が発生し周囲臓器に穿孔して重篤化するという報告がある。後縦隔経路で再建されているため周囲の気管,気管支や大動脈に穿孔することがある。胸骨後経路で再建された場合においても心嚢に穿孔した,との報告がある112)
推奨事項 再建経路の選択は症例により選択され,決まったルートはない。[グレード C]

 

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