ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
IV.外科治療

 
B.胸部食道癌に対する手術
切除

胸部食道癌は頸・胸・腹の広範囲にリンパ節転移がみられることが多く,縦隔のリンパ節を十分に郭清する必要性から右開胸を行い,リンパ節郭清とともに胸腹部食道は全摘し,転移頻度の高い胃小彎側リンパ節を含めた切除範囲とすることが一般的である。胸部下部食道の表在癌では上縦隔への転移頻度が比較的少ないため,症例によっては胸部上部,中部食道癌の手術に比し切除郭清範囲を縮小できるとする意見もある。
食道の切除断端と腫瘍との距離はどの程度にすればよいか。これは残置食道壁の癌遺残とリンパ節郭清範囲という両方の点から判断する必要がある。食道壁内の癌遺残に関しては腫瘍端の壁内進展,上皮内伸展,脈管侵襲,壁内転移などが問題となる。粘膜下の進展は壁深達度とともに長くみられ,T2症例で30mm進展していたとの報告もある73)。これらすべてを満足する切除範囲は確定できず,腫瘍占居部位によっては口側断端が長く取れない場合もある。術前の食道造影検査や内視鏡検査,術中口側断端の凍結迅速診断,術中食道切開による肉眼診断などによって判断される(附2参照)。


Clinical Question

CQIV-6 侵襲の軽減を目的に胸腔鏡,腹腔鏡等を用いた切除は可能か。
Answer 小開胸併用胸腔鏡下手術,腹腔鏡を用いたHALS(hand-assisted laparoscopic surgery)等が一部の施設で行われており,安全に施行可能なこと,郭清についても標準手術と差がないこと,侵襲が軽度であること等が報告されているが,長期的な報告は少なく,また比較的進行していない症例を対象としている報告も多く,未だ臨床研究の段階である。詳しくは「D.その他の治療法 体腔鏡を用いた食道切除・再建術」を参照。また,内視鏡を用いずに開胸創,開腹創を通常の創よりも小さくすることにより侵襲,疼痛を軽減可能であり,予後についても差を認めなかったとする報告もある74),75)
推奨事項 胸腔鏡,腹腔鏡を用いた手術は現在のところ推奨するに十分な根拠はない。[グレード C]


CQIV-7 周術期におけるステロイドの使用は侵襲を軽減するか。
Answer 小規模のランダム化比較試験の結果を含め,周術期におけるメチルプレドニゾロンの使用により,侵襲に伴う血中侵襲性サイトカインの上昇の抑制,気管内挿管の期間の短縮,Systemic Inflammatory Response Syndrome(SIRS)期間の短縮,各種臓器不全の減少などの報告がある76),77),78)。縫合不全など他の合併症の増加も認めていない。
推奨事項 周術期におけるステロイドの使用は長期予後に関する報告はないが,術後管理においては推奨される。[グレード B]

 

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