ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
IV.外科治療

 
A.頸部食道癌に対する手術
切除

頸部食道癌は進行癌の頻度が高く,リンパ節転移率も高く,容易に他臓器浸潤を生じやすいが,リンパ節転移の範囲は比較的頸部に限局していることから,根治手術の適応になる症例は多い。広範囲に遠隔転移を認める症例や,上縦隔に多数のリンパ節転移を認める症例は根治切除の適応外になることが多い。

1)喉頭温存手術
〈適応の原則〉
喉頭,気管に腫瘍浸潤がなく,腫瘍口側が食道入口部より下方にとどまる症例が適応となる。
喉頭温存手術には胸部食道切除の必要性により,喉頭温存頸部食道切除術と喉頭温存食道全摘術とがある。腫瘍の進展が胸部食道に及んでいるか,内視鏡的切除の適応とならない多発病変や多くの縦隔リンパ節転移がみられる場合に,胸部食道を合併切除することがある。また術前治療にて癌腫の縮小が得られた場合,喉頭温存目的に本術式の適応となる症例もみられる。

2)咽頭喉頭食道切除術(喉頭合併切除)
〈適応の原則〉
腫瘍の進展が喉頭,気管,下咽頭に及ぶ症例,あるいは吻合に十分な頸部食道の温存が困難な症例が適応となる。
咽頭喉頭食道切除術には胸部食道切除の必要性により,咽頭喉頭頸部食道切除術と咽頭喉頭食道全摘術とがある。腫瘍の進展が胸部食道に及んでいるか,内視鏡的切除の適応とならない多発病変や多くの縦隔リンパ節転移がみられる場合に,胸部食道を合併切除することがある。

Clinical Question

CQIV-1 喉頭合併切除の手術適応症例に対して,術前あるいは根治的な化学放射線療法は喉頭摘出の回避の可能性を高めるか。
Answer 近年化学放射線療法の発展に伴い,喉頭摘出を回避する目的で術前あるいは根治的な化学放射線療法を行い,機能温存への配慮が行われている52),53),54),55),56),57)。化学放射線療法は治療成績の向上よりも喉頭摘出の回避という見地から,患者の選択として施行される場合が増えており,結果として喉頭温存可能な症例が増えているが,反面サルベージ手術も増加している56),57)。喉頭合併切除の手術適応症例に対して,化学放射線療法により喉頭温存が可能となる症例はあるが,全体として生存率の向上に対してよい影響を与えているという根拠はない。またこれらに関するランダム化比較試験の報告はみられない。喉頭温存手術では誤嚥の予防のため喉頭挙上術などを付加する場合もある。しかし高齢者の場合には,喉頭温存手術後の誤嚥性肺炎の危険性や喉頭合併切除後の発声訓練の問題など,患者側の要因が喉頭温存手術の選択に大きく影響を与えることもある55)
推奨事項 術前あるいは根治的な化学放射線療法は喉頭温存に有効な症例があるが,喉頭摘出を回避する目的で行うよう推奨できるだけの十分な根拠はない。[グレード C]


CQIV-2 喉頭温存手術では口側切離断端の癌浸潤の有無を確認するために迅速病理診断は有効か。
Answer 腫瘍上縁から2~3cmの口側切除断端が必要であるという報告58),59)がみられるが,すべてに十分な切除範囲を確保できないこともある55),56)。口側切離断端の癌浸潤の有無を確認するためには,食道内腔の粘膜面はヨード染色を行い,切離断端は術中迅速病理診断にて癌浸潤のないことを確認することが望ましい。特に腫瘍の進展が食道入口部に近い場合では,手術前に腫瘍進展範囲が正確に診断できないことが多く,切離断端の癌浸潤の有無を確認する必要がある。迅速病理診断にて切離断端の癌浸潤陰性が確保できれば喉頭温存手術を施行している施設もある。
推奨事項 迅速病理診断は腫瘍口側の切離断端における癌浸潤の有無を確認するために有用である。[グレード B]

 

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