ガイドライン

(旧版)食道癌診断・治療ガイドライン 2007年4月版

書誌情報
III.内視鏡的治療(Endoscopic treatment)

 
Clinical Question

CQIII-1 内視鏡的切除により完全切除され,切除標本において粘膜癌と診断された症例に対して,追加治療は必要か。
Answer 壁深達度EP,LPMの外科的切除症例でのリンパ節転移率は5%以下と報告されている。粘膜癌のEMRの5年生存率90%以上で死亡原因は他病死が大部分であり追加治療の必要はない39),40),41),42),43),44)。しかし,粘膜筋板まで浸潤する病変(MM)およびSM層にわずかに浸潤する病変では10~15%のリンパ節転移のリスクがあり,追加治療を考慮する必要がある。リンパ節転移の臨床的・組織学的な危険因子についての報告もみられるが6),リンパ節転移陽性例の厳密な選別は難しい。このため,追加治療の要否は病理組織学的所見に加えて,年齢,全身状態などにより総合的に判断し,厳重な経過観察を要する。
推奨事項 組織学的検索において壁深達度T1a-EP,LPMかつ完全切除と診断された場合は追加治療を行う必要はない。[グレード B]


CQIII-2 内視鏡的粘膜切除(EMR)において一括切除は分割切除より優れているか。
Answer 内視鏡的粘膜切除後の組織学的評価は予後の推測,追加治療の必要性を考える上できわめて重要であり,一括切除により正確な組織学的な検索は可能となる点において一括切除は分割切除より優れている。また一括切除は分割切除より局所再発の率が低いとの報告が多数みられるが,一括切除と分割切除に生存率の差に関する報告はない。広範囲の病変一括切除ではendoscopic submucosal dissectoin(ESD)の手技が必要であるが,出血,食道穿孔などの偶発症の頻度が高く,技術的な習熟,手技の普及が求められている41)
推奨事項 内視鏡的粘膜切除(EMR)において一括切除を行う。[グレード C]


CQIII-3 粘膜挙上不能例,出血傾向のある症例など,内視鏡的粘膜切除不能病変に対する治療の選択肢はあるか。
Answer 光線力学的療法(PDT)注1,アルゴンプラズマ凝固療法(APC)注2などが選択される。
注1)光線力学的治療(photodynamic therapy;PDT)45),46),47),48),49)
腫瘍親和性のある光感受性物質ポルフィマーナトリウム(フォトフリン)を静脈内に投与し,腫瘍に選択的に取り込まれた光感受性物質に630nmの赤色光線を照射し,腫瘍組織を壊死させる治療である。光感受性物質としフォトフリンとの併用療法として1994年10月早期肺癌,早期胃癌,子宮初期癌とともに表在性食道癌を対象に保険適応と認可されている。
表在食道癌での局所制御率は90%と報告されている。EMR不能例,EMR後,放射線療法後,化学放射線療法後の遺残病変に対して有効であるとの報告がある。
注2)アルゴンプラズマ凝固療法(argon plasma coagulation;APC)50)
内視鏡的にアルゴンガスを噴出し,高周波電流を放電させ,熱凝固により組織を焼灼する治療である。
推奨事項 さまざまな理由により内視鏡的粘膜切除不能の場合,光線力学的治療(PDT),アルゴンプラズマ凝固療法(APC)を提示する。[グレード C]

 

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