ガイドライン

(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン

書誌情報
V 骨粗鬆症の治療

 
D.骨粗鬆症の薬物治療
b. 各薬剤の特徴とエビデンス
(3)活性型ビタミンD3製剤

解説

骨粗鬆症治療に活性型ビタミンD3製剤を用いる病態生理学的意義は
ビタミンDは,食物として摂取されるとともに,皮膚で7-デヒドロコレステロールから合成される。さらに体内では肝臓と腎臓で水酸化を受け,活性型へと変換される。活性型ビタミンD3は,生体内の標的臓器にあるビタミンD受容体を介し作用して,生体内の標的臓器(小腸,副甲状腺,腎臓,骨)で作用する。活性型ビタミンD3製剤は,小腸ではカルシウム,リンの吸収を促し,副甲状腺に作用して副甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制する。
日本人はカルシウム摂取量が少なく,小腸からのカルシウム吸収を促す活性型ビタミンD3製剤は,カルシウムバランスの面からも重要視されてきた。高齢者では腸管よりのカルシウム吸収能が低下していること,腎におけるビタミンDの活性化能が低下していること,二次的に副甲状腺ホルモンの分泌が高まり骨吸収が亢進している例があることと,これらの代謝異常が活性型ビタミンD3製剤の投与により改善する可能性があることなどが,本製剤使用の理論的根拠となっている。

活性型ビタミンD3製剤を用いた場合の臨床的事実は
従来,骨粗鬆症治療薬は,DXAにより腰椎・大腿骨頸部骨密度への影響をみて効果判定されてきたが,骨密度の増加効果が顕著でなくとも骨折抑制効果がみられる例も知られるようになった199)。活性型ビタミンD3製剤も,骨密度に対する増加効果は強いとはいえないが,骨折抑制効果は複数の報告で検証されている(表47)。だが,活性型ビタミンD3製剤に関する報告は,大部分が少数例の報告であり,新世代のビスフォスフォネート製剤などと比較すると,エビデンスレベルは高いとはいいがたい。多くの検討で椎体骨を中心とした骨折抑制効果が観察されているが,非椎体骨の骨折抑制に関してはTilyardらの報告のみで検討されたにすぎない。活性型ビタミンD3製剤の椎体骨折抑制効果は,70歳以上の高齢者で既存骨折を有する例を対象とした場合に観察されている(表47)。さらに,食事内容などでのカルシウム摂取が多い場合に比べて,少ない場合のほうが骨折抑制効果が観察できることから,カルシウム摂取が少ない骨粗鬆症患者を投与対象とするのがよい。
天然型および活性型ビタミンD3製剤の骨折抑制効果に関しては,最近の研究では筋力増強作用,転倒頻度の減少などのメカニズムが相次いで報告されており,このことが骨折の減少をもたらしている可能性も示されている。
天然型ビタミンD3製剤に関しては,従来高齢者の骨粗鬆症患者に有効であるとの意見が大勢を占めており,それらを中心にしたメタアナリシスでも,高用量(700〜800IU/日)を投与した患者では骨折予防に有益であるとの成績が発表されていた188)。しかし,ごく最近の検討では有効性が認められないという成績も示されており339),359),対象者を限定したより詳細な検討が必要と考えられる。

[エビデンステーブル]
表47 活性型ビタミンD3の骨粗鬆症における主な多施設臨床試験のまとめ
効果 文献 例数
(試験薬/対照)
試験デザイン 成績 エビデンス
レベル
骨密度 375) 234/242 RCT(国内,アルファカルシドール0.75µg/日,7ヵ月) アルファカルシドール投与群で,中手骨骨密度が増加。腰背痛の軽減効果も観察 II
376) 57/56 RCT(国内,アルファカルシドール0.75µg/日,2年間) プラセボ投与例と比較して腰椎骨密度が増加 II
377) 43/43 RCT(海外,カルシトリオール平均0.43µg/日,2年間) プラセボ投与例と比較して腰椎骨密度は変化なし II
372) 123/123 RCT(海外,カルシトリオール0.5µg/日,3年間) プラセボ投与例と比較して腰椎骨密度は増加。大腿骨頸部骨密度では統計的有意差なし II
骨密度・骨折 378) 386
(ALF66)
RCT(国内,アルファカルシドール0.5µg/日,2年間) コントロール群と比較して椎体骨折はRR(95%CI)=0.56(0.26〜1.12) II
骨折 246) 椎体1,130
非椎体6,187
メタアナリシス(天然型1試験160例,活性型7試験970例) RR(95%CI)=0.63(0.45〜0.88)
RR(95%CI)=0.77(0.57〜1.04)
I
379) 311/355 RCT(国内,アルファカルシドール1.0µg/日,1年間) 75歳以上の高齢者と既存骨折例では,アルファカルシドール投与で有意な椎体骨折抑制 II
376) 57/56 RCT(国内,アルファカルシドール0.75µg/日,2年間) 統計的有意な椎体骨折抑制効果はないが,アルファカルシドール投与群で減少傾向を観察 II
377) 43/43 RCT(海外,カルシトリオール平均0.43µg/日,2年間) プラセボ投与例と比較して椎体骨折抑制効果はなし II
380) 314/308 RCT(海外,カルシトリオール0.5µg/日,3年間) 既存骨折をもつ閉経後女性が対象で,Ca1g投与群と比較し,有意な椎体および非椎体骨折抑制効果 II
381) 11,377 大規模調査 65歳以上の女性対象。活性型ビタミンD投与群は無治療群との比較で大腿骨頸部骨折発生頻度を低下 IV
転倒 382) 1,237 メタアナリシス
(天然型3試験,活性型2試験)
調整前
RR(95%CI)=0.69(0.53〜0.88),
調整後
RR(95%CI)=0.78(0.64〜0.92)
I
ステロイド性骨粗鬆症(椎体骨折) 383) 活性型242,プラセボまたは天然型204 メタアナリシス RR(95%CI)=0.56(0.34〜0.92) I


骨密度増加効果が少ない活性型ビタミンD3製剤が骨折を減少させる機序は
冬季など日光照射が不足した場合や,食事からのビタミンD摂取が不足すると,ビタミンD欠乏あるいはビタミンD不足が生じ,さらにこの状態が転倒・骨折と関連する可能性が報告されている360)。欧米の白人を対象とした研究では,男・女とも冬季にビタミンD不足(血清25(OH)Dレベル:20ng/mL以下)が約40%に認められると報告されており361),血清25(OH)Dが10ng/mL(25nmol/L)以下となるとPTHが応答性に上昇していたという362)。また日本人を対象とした研究でも,以前より冬季にビタミンDが不足しやすいことが示されている363)。最近の研究では,骨折リスクを低下させるには血清25(OH)Dレベルが30ng/mL以上に保たれている必要があり364),日本人でも,25(OH)Dが10ng/mL以下を示す例で大腿骨頸部骨折が頻発するとの成績がある365)
実際に,大腿骨頸部骨折例の筋組織を組織形態学的に検討してみると,ビタミンD欠乏群においてはII型筋線維が充足群に比べて萎縮していたという366)。高齢者にビタミンDを補充すると体幹の揺れや転倒頻度が減少することが報告されており,これらは筋骨格系に対するビタミンDの効果と想定されている367),368)。転倒に関するメタアナリシス184)でも,ビタミンD補充が虚弱高齢者の転倒抑制に有効であることが示されている。アルファカルシドール369),370),371)およびカルシトリオール372),373)の投与は,ビタミンD欠乏の有無にかかわらず,歩行機能を高め転倒頻度を減少させるという報告が最近みられており,骨外作用も考慮する必要がある。さらには,高齢者では筋組織内の核内ビタミンD受容体量が減少していることが報告されているので,薬理量の活性型ビタミンD3製剤の投与が有益である可能性がある374)


推奨

骨密度:わずかではあるが増加効果がある(グレードB)。
椎体骨折:椎体骨折を防止するとの報告がある(グレードB)。
非椎体骨折:非椎体骨折を防止するとの報告がある(グレードB)。
活性型ビタミンD3製剤は,特にカルシウム不足が主体となっている症例や,転倒頻度が高く骨折を起こしやすい高齢者への使用が推奨される。高Ca血症には注意が必要である。
(総合評価:グレードB)

 

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