ガイドライン

(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン

書誌情報
V 骨粗鬆症の治療

 
B.治療効果の評価と管理
b.骨代謝マーカー

Research Question
骨代謝マーカーで治療効果が評価できる薬剤とできない薬剤があるか

骨代謝マーカー測定による効果判定では,I型コラーゲン架橋のテロペプチドであるNTXやCTX,遊離架橋であるデオキシピリジノリン(DPD)を繰り返し測定し,薬剤効果が発揮されているか確認する。個々の患者において,これらの骨吸収マーカーで判定可能であることが確認されているのは,ビスフォスフォネート,SERMであるラロキシフェン,ホルモン(エストロゲン)補充療法の三つのカテゴリーの骨吸収抑制剤である204),205),206)。その他の治療薬については,現時点で日常診療において測定される骨代謝マーカーでの効果判定は困難である207)


Research Question
どの程度骨代謝マーカーが変化したら治療効果ありとするのか

薬物療法により,骨代謝マーカーの治療前値からの最小有意変化(minimum significant change:MSC)を超える有意な変化が認められれば,薬剤効果があると判定できる(表35207)。ただし,骨代謝マーカーには日内変動があり,MSCを判定に用いる場合は,治療前の測定と同時刻に尿あるいは血液サンプルを採取しなければならない。
実際には,骨吸収抑制剤治療では,骨吸収マーカーであるDPD,NTX,CTXのいずれかを,治療開始時に加えて,治療開始3~6ヵ月後(アミノ系ビスフォスフォネートでは治療後1ヵ月でも可能)に2回目の測定を実施し,変化率(%:(後値-前値)/前値×100)を算出し,MSC(%)を超えるかを検討する35)

表35 骨粗鬆症診療において測定される骨代謝マーカーの基準値と最小有意変化(MSC)
骨代謝マーカー カテゴリー 検体 測定方法 単位 基準値 MSC(%)
BAP 形成マーカー 血清 EIA U/L 7.9~29.0 23.1
DPD 吸収マーカー 尿 ELISA nmol/mmol・Cr 2.8~7.6 29.6
CTX 吸収マーカー 尿 ELISA µg/mmol・Cr 40.3~301.4 51.1
NTX 吸収マーカー 尿 ELISA nmolBCE/mmol・Cr 9.3~54.3 35.0
    血清 ELISA nmolBCE/L 7.5~16.5 14.2
骨代謝マーカーの基準値は,健常閉経前女性で確立された平均±1.96標準偏差の範囲とする。
MSCは閉経後骨粗鬆症患者の早朝の日差変動の2倍を示し(%),その信頼性は8%以下の危険率に相当する。


Research Question
治療によって骨代謝マーカーが変化しないときにどのような対応をすべきか

サンプル採取時間など,前回と条件を変えずに測定を行ったにもかかわらず,薬物治療により骨代謝マーカーの有意な変化が認められない場合には,服薬状況をまず確認すべきである。ビスフォスフォネートでは,食事との関係で吸収効率の問題があり,服薬と食事の間隔を各薬剤の添付文書で示された用法に従ってあけなければならない35)
また,閉経前女性の基準値まで改善しない場合は,エストロゲン欠乏以外の続発性骨粗鬆症による病的な骨吸収亢進の原因が存在することがあり,精査すべきである35)表36)。新鮮骨折の治癒過程における局所の骨代謝の亢進が,全身の骨代謝である骨代謝マーカーに影響するため画像診断を行い確認する208)

表36 骨粗鬆症の薬物治療で骨代謝マーカーが有意な変化を示さないときの考えられる原因
  1 測定の変動,検体採取に関連した原因  
  開始時と測定時刻が異なっている  
  長期にわたる測定誤差(季節変動,患者の状態の変化など)  
  測定間隔が短すぎた  
  測定を依頼した検査センターが変更になった  
  2 不十分な服薬状況  
  食事とのタイミング(ビスフォスフォネート)  
  服薬に対する不良なコンプライアンス  
  3 続発性骨粗鬆症を惹起する他の疾患の合併  
  4 最近発生した骨折が存在する  


評価と推奨

1 アミノ系ビスフォスフォネート治療では,遊離架橋のDPDの変化は小さいことが知られているため209),効果判定においてNTXやCTXの測定が推奨される(表37)(グレードA
2 変化率による薬効評価に加えて,絶対値を基準値(表35)にあてはめて評価することも重要である210)。変化率が有意でない場合でも,絶対値が基準値内にあれば薬剤は継続すべきで,骨密度の変化なども合わせて効果判定をすることが推奨される(グレードA
3 骨吸収抑制剤の治療後6ヵ月以降の長期の効果のモニタリニングには,変化が骨吸収マーカーより遅れて現れる骨形成マーカーを測定するのも一法である。このため,治療開始前に,骨吸収マーカーと同時に骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)を測定し,6ヵ月から1年程度の間隔で行い,基準値の下限値を下回るような過剰な抑制が長期にわたれば,休薬や中止など薬剤を調節することが推奨される211)図19)(グレードB)。

表37 骨粗鬆症薬とその効果判定が可能な骨代謝マーカーの組み合わせ
    DPD NTX CTX BAP
ホルモン(エストロゲン)補充療法
ビスフォスフォネート        
  エチドロネート
  アミノ基含有ビスフォスフォネート
(アレンドロネート,リセドロネート)
選択的エストロゲン受容体モジュレーター
(ラロキシフェン)
:尿および血清いずれでも効果判定が可能。
○:判定が可能,△:変化しにくいことが報告されている。

図19 骨代謝マーカーを用いた骨粗鬆症治療薬の治療効果判定のフローチャート
図19骨代謝マーカーを用いた骨粗鬆症治療薬の治療効果判定のフローチャート
1:表35を参照,2:表36を参照


Additional Statement
本項の記述は,原発性骨粗鬆症の薬物療法を想定したものである。骨粗鬆症治療における骨代謝マーカーの繰り返し測定の目的は,1 非反応者を同定する,2 治療へのアドヒアランスを改善する,である。骨粗鬆症治療における骨代謝マーカーの測定の目的は,治療効果の評価のみならず,服薬の継続の援助・コンプライアンスの向上にもあると考えられる。最近,骨代謝マーカーの測定での治療効果を患者に告知することで,薬物治療からの脱落の危険が減少することが示されている212),213)


【参照】
II 骨粗鬆症の診断 D.骨代謝マーカー測定

 

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