ガイドライン

(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン

書誌情報
II 骨粗鬆症の診断

 
B.骨量測定

Research Question
いつ,誰に,どのように行うか

1 骨粗鬆症治療を行う可能性がある症例を対象とする70)
2 65歳以上の白人女性,危険因子を有する65歳未満の女性においては,骨折リスク評価のための骨密度測定は有効である(レベルI70)。高齢日本人女性においても骨密度測定が推奨される(レベルII22)
3 男性における骨密度と骨折リスクに関する十分なデータはないが,高齢男性では骨密度の予知力は女性とほぼ同じ22),71)であり,骨折リスク評価のための骨密度測定の対象となる(レベルI)。
4 脆弱性骨折を有する症例は,重症度判定のため測定の対象となる(レベルI70)
5 骨密度と危険因子を総合して評価するほうが,単一のリスク評価法より優れている。年齢・骨密度・骨折既往が最も優れたリスク評価指標である72) ,73) ,74) ,75) ,76) レベルI)。


Research Question
どの測定法を使うか(表10)

すべての骨密度測定法は,あらゆる骨粗鬆症性骨折リスクを予知するのに役立つ77),78)レベルI)が,躯幹骨二重エックス線吸収法(DXA)は,骨折リスクをよく反映する椎体や大腿骨計測に最もよい適応であり,骨粗鬆症の診断に最適な測定法である77),79)レベルI)。
躯幹骨DXA装置のない施設では,ほかの測定法(末梢骨DXA,RA/MD,定量的超音波測定法〔QUS〕など)もリスク評価において有用な測定法となる80)レベルI)。踵骨QUSは,65歳以上の閉経後女性の大腿骨近位部骨折リスクの評価に有用であり81),82)レベルI),わが国においても,縦断的調査から踵骨QUSは骨折リスクを予測することが報告されている83)レベルII)。
quantitative computed tomography(QCT)およびperipheral QCT(pQCT)は,診断のための第一選択というよりは病態解明などの副次的データとして取り扱う。

表10 各骨量測定法の特徴
方 法 測定部位 原 理 検査時間 測定精度 被曝線量 特 徴
二重エックス線
吸収法(DXA)

        2種の異なるエネルギーのエックス線を照射し,骨と軟部組織の吸収率の差により骨密度を測定する。いずれの部位でも精度よく迅速に測定できる。骨密度測定の標準である。
  躯幹骨DXA 腰椎/大腿骨/全身骨 エックス線
ビーム
5〜10分 1〜3% 1〜5mrem
  末梢骨DXA 橈骨/踵骨        
一重エックス線
吸収法(SXA)
橈骨/踵骨 エックス線
ビーム
5〜15分 1〜3% 1mrem 単一エネルギーのエックス線を照射し,組織の吸収率から測定する。軟部組織の薄い前腕・踵骨が適用になる。精度は高く,測定時間も短い。
RA( MD) 第二中手骨 エックス線
写真
5〜10分 1〜2% 5mrem 厚さの異なるアルミニウム板と手を並べて通常のエックス線写真を撮影し,写真上のアルミニウムの光学的濃度を基準に骨密度を測定する。デジタル画像をコンピュータで解析する方法では測定精度が向上。
定量的CT測定法           三次元骨密度(mg/cm3)として算出する。海綿骨骨密度を選択的に測定できる。QCTでは,他の測定法と比べてエックス線被曝量が多い。感度は高いが精度が低い。
  QCT 腰椎 エックス線
CT
10分 2〜4% 50mrem
  pQCT 橈骨(脛骨)   5〜20分 2〜4% 5mrem
定量的超音波
測定法(QUS)
踵骨
(脛骨/指骨)
超音波 1〜10分 3〜4% 超音波の伝播速度と減衰率により骨を評価する方法。骨密度を測定しているわけではない。エックス線を使用しないので,放射線被曝がなく,放射線管理区域以外でも使用可能である。測定精度は低い。
CT:computed tomography, DXA:dual X-ray absorptiometry, SXA:single X-ray absorptiometry, RA(MD):radiographic absorptiometry (microdensitometry), QCT:quantitative CT,pQCT:peripheral QCT,QUS:quantitative ultrasound


Research Question
どの部位の測定が適切か(表11)

躯幹骨測定DXAが高リスク症例の検出に最も役立つ72),79),84)レベルI)。なかでも,大腿骨近位部骨折の相対リスクを最も予測できるのは,同部位の骨密度測定であり,さらに大腿骨近位部骨密度は椎体骨折をはじめ,あらゆる骨折の予知能に優れる77),85),86)レベルI)。
椎体DXA前後方向測定では,大動脈の石灰化を除外できないし,変形性脊椎症の影響を受けるので,65歳以上での正確な測定が困難な場合が多い87)。腰椎DXAではこのような問題点はあるが,日本人においては白人と異なり,大腿骨近位部骨密度の測定精度は低いため,大腿骨の測定が良好に施行できない場合は椎体で評価するのがよい。したがって,椎体と大腿骨近位部の両者を測定することが望ましい88)。上記2ヵ所での評価が困難な場合や,極度の肥満患者の場合は,前腕骨を測定する88)。腰椎DXAの解析は,腰椎エックス線写真を参照して行う。なお,側方向測定は診断に使用しない88)
解析領域は,次のような部位が適切である。
1 腰椎DXA:L1〜4を測定し,評価可能な椎体を計測する。局所的な変化(骨折椎体,硬化性変化など)やアーティファクトのある椎体は除く。2 大腿骨近位部DXA:トータル,頸部,転子部のいずれの領域でもよい85),89)。ただし,ワード三角部骨密度は診断に使用しない88)3 橈骨DXA:非利き腕の遠位33%部を用いる。骨折既往があれば反対側で計測する。

表11 各測定法の長所・短所と適応
測定部位 測定法 長 所 短 所 適 応
 腰 椎 DXA 骨折発生頻度の高い領域を高い精度で測定,骨折リスクの評価に優れる。
ステロイド骨症の変化,薬物効果の変化を最もよく捉えることができる。
大動脈石灰化や変形性脊椎症の影響を受ける。二次元測定であるため,骨の大きさの影響を受ける。 広範囲,ただし高齢者では適応症例が少なくなる。
QCT 海綿骨を分離して計測可能,三次元骨密度が計測可能。測定感度が高く,骨減少を早期に検出する。脊椎圧迫骨折のリスクの検出能は著しく高い。 再現性が低い,被曝線量がほかに比べて大きく,高価。 骨減少の早期検出,変形性脊椎症でも測定可能。
 大腿骨近位部 DXA 大腿骨近位部骨折リスクを最もよく反映し,他の骨折リスクの検出にも優れる。 日本人では再現性が低い。 広範囲,ただし内旋困難例,変形性股関節症では測定困難。
 橈 骨 DXA,SXA 安価,皮質骨の状態を知ることができる。 薬物治療への感度が低い。 副甲状腺機能亢進症(および手術後)の経過観察。椎体,大腿骨DXA測定困難症例での骨粗鬆症診断。
pQCT 海綿骨・皮質骨を分離して計測可能,三次元骨密度が計測可能。 再現性が低い。 橈骨曲げ強度の算出,代謝性骨疾患において海綿骨・皮質骨の代謝状況を検討。
 踵 骨 DXA,SXA 海綿骨の豊富な荷重骨で骨粗鬆症診断の補助的役割。 運動・荷重の影響を受けやすい。 腰椎,大腿骨近位部,橈骨での評価が困難な場合。
 QUS 非エックス線検査であり,エックス線管理区域外でも使用可能。 感度が低い,モニタリングには適さない。 エックス線管理区域外での測定,検診。小児・妊婦。
 手 RA(MD) 安価,低侵襲,簡便。 感度が低い,モニタリングには適さない。 骨密度測定装置のない施設でも可能。


評価と推奨

すべての65歳以上の女性,および危険因子を有する65歳未満の女性を対象とした躯幹骨DXA測定が推奨される。欧米では大腿骨近位部DXAが推奨されているが,日本人においては同部の測定精度が低いため,十分な測定がなされていないと考えられる場合は腰椎DXAを診断に用いる。椎体と大腿骨近位部DXAの両者を測定することが望ましい。上記2ヵ所での評価が困難な場合,橈骨DXA測定を施行する(グレードA)。

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