ガイドライン

(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン

書誌情報
II 骨粗鬆症の診断

 
A.総論

Research Question
原発性骨粗鬆症の診断は,どのように進めるか

診断に際しては,1 医療面接,2 身体診察,3 骨量測定,4 胸・腰椎のエックス線撮影,5 血液・尿検査(骨代謝マーカーの測定を含む),6 鑑別診断を行い,7 原発性骨粗鬆症の診断基準を適用する。
適用にあたっては原発性骨粗鬆症の診断マニュアルに従って診断を進める9)
  • 診断マニュアルでは,第一義的には低骨量の存在を確認する。
  • ついで,低骨量をきたす疾患や続発性骨粗鬆症を除外する。
  • さらに,脆弱性骨折の有無に分類して骨評価を行い,正常,骨量減少と骨粗鬆症を診断する。


Research Question
医療面接では,どのような事項を主として問うか

1 続発性骨粗鬆症や低骨量をきたす疾患9)の既往歴,2 低骨量または骨粗鬆症に伴う骨折の危険因子(表3)の有無,3 生活様式(食事,カルシウム摂取,運動・日常の活動性,喫煙,飲酒など),4 家族歴(特に骨粗鬆症や骨折),5 女性では閉経(時期,自然か人工か)などを問診する。

表3 低骨量または骨粗鬆症に伴う骨折の危険因子
  低骨量の危険因子  
  高年齢,女性,人種(アジア人,白人),家族歴,小体格,やせ,低栄養,運動不足(不動性),喫煙,過度のアルコール,カルシウム摂取不足,ビタミンD不足,ビタミンK不足,卵巣機能不全(遅発初経,各種無月経,早期閉経),出産歴なし,ステロイド(グルココルチコイド)の服用,胃切除例,諸種疾患合併例(甲状腺機能亢進症,糖尿病,腎不全,肝不全など)  
  骨粗鬆症に伴う骨折の危険因子  
  低骨量,過去の骨折歴,高年齢,やせ,高身長,認知症や脳神経疾患の合併,運動機能障害や視力障害の合併,睡眠薬や血圧降下薬の服用,踵骨超音波指標の低値,骨吸収マーカーの高値  


Research Question
身体診察で注意すべきことは

1 身長(身長短縮),体重の計測,body mass index(BMI)の算出,2 円背,脊柱弯曲の有無,3 腰背部痛(叩打痛,部位,程度など)(表4)の有無などである。

表4 腰背部痛を呈する疾患
 
腰痛症   骨粗鬆症による椎体骨折
変形性脊椎症   脊柱靭帯骨化症
脊柱管狭窄症   炎症
脊椎分離症・すべり症   腫瘍
椎間板ヘルニア   外傷
椎間板症   代謝性骨疾患
 


Research Question
骨量測定による診断は,どうするか

骨密度による骨粗鬆症,骨量減少,正常の診断は,性別,測定部位別,機種別に診断基準で定められた閾値に従って行う9)


Research Question
胸・腰椎のエックス線撮影で得られる情報は何か

胸・腰椎のエックス線撮影の方法は,体位(仰臥位または立位)によって異なるが,1 呼吸停止(胸椎正面,腰椎正面・側面:深呼時,胸椎側面:深吸時),2 エックス線中心(胸椎:第7,8,腰椎:第3),3 撮影距離(胸,腰椎ともにエックス線焦点・フィルム間距離は1m)は,共通である33)。胸・腰椎のエックス線写真から,椎体の骨粗鬆化の判定,変形・骨折,変性,骨硬化性病変や,骨粗鬆症以外の整形外科領域の疾患を診断する。
椎体骨折の認識には,形態骨折が臨床骨折に比して多いので,エックス線撮影は必須である34)
なお,他の骨粗鬆症性骨折の大腿骨頸部骨折,橈骨遠位端骨折や上腕骨近位部骨折は,臨床症状からその存在の確認は容易である。


Research Question
血液・尿検査で必要なものは

代謝性骨疾患などの除外のために,通常の臨床検査のほか,血中カルシウム,リン,アルカリフォスファターゼ,尿中カルシウム,クレアチニンの測定が必要である。
骨代謝マーカーのうち,尿中NTX,DPD,CTX,血中NTX,BAPは骨粗鬆症診療の保険適応が承認されている(2006年8月現在)35)
骨代謝マーカーの著明な高値は,骨粗鬆症以外の代謝性骨疾患や悪性腫瘍による骨転移などの可能性を示唆する(表5)。

表5 転移性骨腫瘍などの骨疾患や骨・カルシウム代謝異常を検索すべき骨代謝マーカーの測定値(文献35より引用)
    男 性 閉経前女性 閉経後女性 単 位
骨吸収マーカー DPD    5.6<    7.6<   13.1<   nmol/mmol・Cr
  NTX(尿)   62.2<  54.3<   89.0<   nmolBCE/mmol・Cr
  NTX(血中)   17.7<  16.5<   24.0<   nmolBCE/L
  CTX(尿) 346.1< 301.4< 564.8<   µg/mmol・Cr
骨吸収マーカー BAP   44.0<  29.0<   75.7<   U/L
  PINP   78.0<  59.9< 106.5    ng/mL


Research Question
鑑別診断が必要な疾患には,どのようなものがあるか

原発性骨粗鬆症との鑑別診断が必要な疾患として,1 続発性骨粗鬆症を含む低骨量を呈する疾患,2 椎体骨折と鑑別が必要な疾患(表6)や,3 腰背部痛をきたす疾患(表4)があげられる。

表6 骨粗鬆症性椎体骨折と鑑別が必要な疾患
 
Hahn溝   椎間板ヘルニア
蝶形椎   脊椎異形成症
Schmorl結節   変形性脊椎症
Scheuermann病   悪性腫瘍の溶骨性転移
椎体辺縁分離   多発性骨髄腫
      脊椎血管腫
      脊椎カリエス
      化膿性脊椎炎
      骨軟化症
      副甲状腺機能亢進症
      外傷
 


まとめ

WHOおよび日本骨代謝学会による骨粗鬆症の診断基準は,骨密度を用いている8)
NIHは,骨粗鬆症を,「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患である。骨強度は骨密度と骨質の二つの要因からなる」としている36)。なお,骨質は,構造,骨代謝回転,微細損傷の集積,骨組織のミネラル化などを意味する。これらのうち,骨密度と骨代謝は,非侵襲的に知ることが可能である。
原発性骨粗鬆症の診断は,1 類似疾患の除外と,2 低骨量の存在が必須であり,診断マニュアルに従って行うように定められている。

 

書誌情報