ガイドライン

(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2010年版

書誌情報
Clinical Questions

 


CQ9:切除可能肝転移に対する術前化学療法
推奨カテゴリーB
切除可能肝転移に対する術前化学療法の安全性は確立されていない。適正に計画された臨床試験として実施すべきである。



術前化学療法の主たる目的は,down staging,腫瘍縮小に伴う肝切除量の減少,微小転移巣の早期治療,化学療法の奏効性判定であるが,非奏効例が切除不能となるリスク,抗がん剤による肝障害や周術期合併症などの問題もある。
従来,術前化学療法の奏効例の予後が良好であることが後ろ向き研究から知られていたが274),275),2008年にEORTCによる大規模RCTの結果が報告され276),術前後のFOLFOX4療法群(FOLFOX群)の3年PFS(36.2%)は手術単独群(28.1%)よりも有意に高く,化学療法が生存期間の延長に寄与する可能性が示唆されている。しかしながら,FOLFOX4療法の完遂率は71.3%で,重篤な副作用は認められず,手術施行率,切除率は両群とも同等であったが,FOLFOX群は手術合併症が高いことから,安全性に関しては課題が残されている。また,手術単独群のPFS曲線は,術後2カ月付近に大きな落ち込みがあり,これがPFSの差をもたらしているとの批判もあり,さらなる症例集積による検証が必要である。
近年,術前化学療法,特にCPT-11,L-OHPによる肝障害の実態が明らかになってきた。FOLFIRI等のCPT-11ベースのレジメンでは脂肪性肝炎(脂肪肝),FOLFOX等のL-OHPベースのレジメンでは血管変性(類洞の拡張等)の発生が特徴的である277)。脂肪性肝炎は肝切除術後の早期死亡率と相関するとされる一方,血管変性は周術期合併症の増加が示唆されるものの,手術死亡率には影響しないとされており278),後者の安全性が高いと考えられている。奏効率の高い新規抗がん剤を用いた術前化学療法の臨床研究は緒についたところで,至適な化学療法レジメン,手術のタイミング等は,適正に計画された臨床試験でさらに検討すべき課題である。(PFS progression free survival,無増悪生存率)

 

書誌情報