ガイドライン

(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2010年版

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Clinical Questions

 


CQ3:大腸癌に対する腹腔鏡下手術
推奨カテゴリーB
腹腔鏡下手術には,開腹手術とは異なる手術技術の習得と局所解剖の理解が不可欠であり,手術チームの習熟度に応じた適応基準を個々に決定すべきである。
腹腔鏡下手術は,結腸癌およびRS癌に対するD2以下の腸切除に適しており,cStage0〜cStageIがよい適応である。D3を伴う腹腔鏡下結腸切除術は難度が高いので,cStageII〜cStageIIIに対しては習熟度を十分に考慮して適応を決定すべきである。また,横行結腸癌,高度肥満例,高度癒着例も高難度である。直腸癌に対する腹腔鏡下手術の有効性と安全性は十分に確立されていない。



海外の大規模RCTやCochrane reviewにおいて,結腸癌およびRS癌に対する腹腔鏡下手術の有用性が開腹手術との比較で検討され215),216),217),218),219),220),221),腸管運動回復や入院期間など短期成績の優越性215),218),合併症発生率および再発率・生存率の同等性が多く報告されている。しかし,例えばStageIIIの開腹手術群の5年生存率が50%と低率であることなど215),本邦の治療成績とは乖離した報告もあり,外的妥当性の吟味が必要である。
横行結腸癌は多くのRCTで除外条件とされているが215),216),217),横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術は開腹手術よりも長い手術時間を要するという報告もあり222),解剖学的特性による難度を考慮して適応を決定する必要がある。その他,肥満例は開腹手術への移行率が高く,手術時間が長く,合併症率も高いこと223),224),開腹既往歴を有する例は癒着のために難度が高く,開腹手術への移行率が高いこと225)を考慮すべきである。わが国の治療経験に基づく適応の詳細を決するには,前向き試験による多数の集積例による検討が必要である226)。直腸癌も多くのRCTで対象外であり215),216),217),218),219),220),Cochrane reviewを通覧しても直腸癌を対象としたRCTは少ない。直腸癌も検討したMRC CLASICC試験では,局所再発率には有意差を認めないものの,circumferential margin陽性率は高率である221),227)。直腸癌に対する腹腔鏡下手術は,経験の集積が限定されていることに加えて,概して腸管切離・吻合操作の難度が高いこと,Rb進行癌に適応される側方郭清の腹腔鏡下という条件での手技が確立されていないこともあり,現時点では適正に計画された臨床試験として実施し,有効性と安全性を確認する必要がある。

 

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