ガイドライン

(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2010年版

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Clinical Questions

 


CQ1:内視鏡的摘除後の追加治療の適応基準
推奨カテゴリーB
 ・  垂直断端陽性の場合は外科的切除が望ましい。
 ・  摘除標本の組織学的検索で以下の一因子でも認めれば,追加治療としてリンパ節郭清を伴う腸切除を考慮する。
(1)SM浸潤度1,000μm以上
(2)脈管侵襲陽性
(3)低分化腺癌,印環細胞癌,粘液癌206)
(4)浸潤先進部の簇出(budding)Grade2/3206)
注)
 ・  垂直断端陽性とは,癌が粘膜下層断端に露出しているものである。
 ・  SM浸潤度は,「サイドメモ:SM浸潤距離の実測法/脈管侵襲の評価法/簇出の評価法」に示す方法に基づいて測定する。
 ・  脈管侵襲とは,リンパ管侵襲と静脈侵襲をいう(「サイドメモ:SM浸潤距離の実測法/脈管侵襲の評価法/簇出の評価法」参照)。
 ・  簇出の評価法を「サイドメモ:SM浸潤距離の実測法/脈管侵襲の評価法/簇出の評価法」に示す。



浸潤癌であるpSM癌の治療の原則はリンパ節郭清を伴う腸切除である。しかし,転移リスクが極めて低いpSM癌が存在することも事実であり,そのような症例に対して結果的には過剰治療となる追加切除を可及的に減じることが本基準の作成目的である。現在のところ,リンパ節転移(pN)を確実に予知できる診断法は存在しないが,転移リスクの高低を追加治療実施の判断材料として利用することが可能である。
pSM癌の所属リンパ節転移リスク因子として,粘膜下層の浸潤距離(SM浸潤度)207),208),低分化腺癌・印環細胞癌・粘液癌などの組織型206),浸潤先進部の低分化領域・粘液結節の存在,簇出,脈管侵襲などが報告されている206),209)
上記の追加治療の適応基準は,『大腸癌取扱い規約』(第2版,1980年)210)に記載されてきたpSM癌の追加腸切除の3項目(1.明らかな脈管内癌浸潤,2.低分化腺癌あるいは未分化癌,3.断端近傍までのmassiveな癌浸潤)をもとに作成されたものであり,「massiveな癌浸潤」は『大腸癌取扱い規約』の第5版(1994年)において「たとえば約200〜300μmを超えた程度の“きわめて浅い浸潤”より深い浸潤」と具体的記述に改訂された211)
その後の本邦における症例集積研究から,この基準線は1,000μmまで拡大することが可能であることが示された212)。大腸癌研究会のプロジェクト研究によればSM浸潤度1,000μm以上のリンパ節転移率は12.5%であった(「資料」,表11)207),208),212)。しかしながら,SM浸潤度1,000μm以上であっても9割程度はリンパ節転移がないわけであり,SM浸潤度以外のリンパ節転移危険因子,個々の症例の身体的・社会的背景,患者自身の意志等を十分に考慮したうえで追加治療の適応を決定することが重要である。大腸癌研究会のプロジェクト研究からリンパ節転移危険因子としての簇出(budding)の重要性が示されたため,本改訂において追加腸切除を考慮すべき因子に追加した。なお,海外には,追加治療の適応基準として浸潤距離および簇出が採用されているガイドラインはない。

[内視鏡的摘除後のpSM癌の治療方針]
cM癌,cSM癌の治療方針

 

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