ガイドライン

(旧版)大腸癌治療ガイドライン医師用 2010年版

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各論

 

1.Stage0〜StageIII大腸癌の治療方針


 2)手術治療



[Stage0〜StageIII大腸癌の手術治療方針]
Stage0〜StageIII大腸癌の手術治療方針




 ・  大腸癌手術におけるリンパ節郭清度は,術前の臨床所見(c)あるいは術中所見(s)によるリンパ節転移度と腫瘍の壁深達度から決定する。
 ・  術前・術中診断でリンパ節転移を疑う場合は,D3郭清を行う。
 ・  術前・術中診断でリンパ節転移を認めない場合は,壁深達度に応じたリンパ節郭清を行う11)
(1) M癌にはリンパ節転移はないのでリンパ節郭清の必要はないが(D0),術前深達度診断の精度の問題もあり,D1郭清を行ってもよい。
(2) SM癌には約10%のリンパ節転移があること,中間リンパ節転移も少なくないことから,D2郭清が必要である。
(3) MP癌の郭清範囲を規定するエビデンスは乏しいが,少なくともD2郭清が必要である。しかし,主リンパ節転移が少なからずあること,および術前深達度診断の精度の問題から,D3郭清を行ってもよい。
直腸癌の手術治療
 ・  直腸切除の原則は,TME(total mesorectal excision)またはTSME(tumor-specific mesorectal excision)である12),13),14),15)
[側方郭清の適応基準]
 ・  側方郭清の適応基準は,腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあり,かつ固有筋層を越えて浸潤する症例である16)
[直腸局所切除]
 ・  第2Houston弁(腹膜反転部)より肛門側にあるcM癌,cSM癌(軽度浸潤)が対象となる。
 ・  直腸局所切除のアプローチ法は経肛門的切除,経括約筋的切除,傍仙骨的切除に分類され17),経肛門的切除には,直視化に腫瘍を切除する従来法と経肛門的内視鏡下切除術(TEM:transanal endoscopic microsurgery)がある18)
 ・  TEMでは,従来法より口側の病変も切除することが可能である。
[自律神経温存術]
 ・  直腸癌手術に関連した自律神経系には,腰内臓神経,上下腹神経叢,下腹神経,骨盤内臓神経,骨盤神経叢がある。
 ・  癌の進行度,肉眼的な神経浸潤の有無等を考慮して,根治性を損なわない範囲で,排尿機能,性機能温存のため自律神経の温存に努める。
腹腔鏡下手術
 ・  経腹的手術治療には,開腹手術と腹腔鏡下手術がある。
 ・  腹腔鏡下手術は,癌の部位や進行度などの腫瘍側要因および肥満,開腹歴などの患者側要因だけでなく,術者の経験,技量を考慮して適応を決定する。(CQ-3)


 コメント 

 [腸管切離長]
(1) 結腸癌での腸管切離長は腫瘍と支配動脈の関係を考慮して決定する。腫瘍から10cm以上離れた壁在リンパ節および腸管傍リンパ節の転移は稀であり,このような症例の予後は不良であることを考慮すると,10cm以上の腸管切除長が必要なことは多くない。
(2) RS癌およびRa癌では3cm以上,Rb癌では2cm以上の直腸間膜内肛門側進展は稀である19)。肛門側直腸間膜の切離長はRS癌とRa癌では3cm,Rb癌では2cmを目安とする。
 [TME]
直腸間膜全切除(TME)とは肛門管直上までの直腸間膜をすべて切除する術式である12)。TSME とは腫瘍の位置に応じた直腸間膜を部分的に切除する術式である15)
 [側方郭清]
(1) 大腸癌研究会のプロジェクト研究での2,916例の直腸癌の分析では,腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあり,かつ,直腸壁を貫通している癌の側方リンパ節転移率は20.1%(側方郭清例のみ)であった(「資料」,表2)。この適応のもと側方郭清を行うと,骨盤内再発リスクは50%減少し,5年生存率は8〜9%改善した16)
(2) 腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にある癌で直腸間膜内にリンパ節転移を認めた場合,側方リンパ節転移率は27%であった。
(3) 側方郭清を行った場合は,自律神経系を全温存しても排尿機能や男性性機能が障害されることがある。
 [大腸癌登録の集計データ]
(1) 表3,表4,表5(「資料」)に組織学的壁深達度別リンパ節転移度,治癒切除率,5年生存率を示した11)
(2) Stage0〜StageIIIの治癒切除例の5年生存率は,全症例で81.3%,結腸癌では83.7%,RS癌では81.2%,Ra〜Rb直腸癌では77.1%であった。



 

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