ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2009年版

書誌情報
 
CQ3 放射線療法



CQ3-5 放射線療法は切除不能膵癌のQOLを改善するか?

推奨
切除不能膵癌のQOL改善には,放射線療法(グレードC1)や化学放射線療法(グレードB)が勧められる。


【エビデンス】
悪性腫瘍に伴うさまざまな随伴症状,とりわけ癌性疼痛の原因療法として,放射線療法が果たしている役割は大きい。切除不能膵癌に伴う癌性疼痛に対しても放射線療法の有効性が期待できるかどうか検討を行った。

1.best supportive care(BSC)
5-FU同時併用化学放射線療法群とBSC群とを比較した小規模なランダム化比較試験1)(レベルV:抄録参照)の結果,生存期間中央値もKarnofsky Performance Scaleも化学放射線療法群がBSC群より有意に良好で,在院期間に有意差はなかったと報告されている。

2.化学療法
ランダム化比較試験の結果5-FUより優れているとされたゲムシタビン塩酸塩では,23.8%に症状緩和が得られたと報告されている(CQ2-1)。化学療法単独群,術中照射群,および外照射単独群を比較した小規模な非ランダム化比較試験の結果,化学療法単独では疼痛緩和は得られなかったとの報告がある2)(レベルIII)

3.放射線単独治療
(1)外照射単独
70〜72Gyの外照射単独放射線療法で68%3)の症例に(レベルIVb),また30Gy/10分割の外照射単独放射線療法で75%4)の症例に疼痛緩和が得られたとの報告がある(レベルV)
(2)術中照射単独
術中照射単独放射線療法で85〜95%の症例に疼痛緩和が得られたとする報告5),6)(レベルIVb) や,術中照射単独放射線療法あるいはバイパス手術との併用で77〜81%の症例に疼痛緩和が得られたとの報告7),8)がある(レベルIVb)
(3)外照射と術中照射の併用
外照射または術中照射のいずれか一方または両者の併用で,57〜90%の症例に疼痛緩和が得られたとの報告9),10)がある(レベルIVb)。また,外照射と術中照射の併用で57〜64%の症例に疼痛緩和が得られたとの報告11),12)(レベルIVb)や,外照射単独よりも術中照射を併用したほうが除痛効果が良好であったとの報告2)がある(レベルIII)

4.化学放射線療法
前述の通り,5-FU併用化学放射線療法がBSCに優るとの小規模ランダム化比較試験1)の結果がある(レベルV:抄録参照)。5-FU併用化学放射線療法で80%1)の症例に(レベルV),またCDDP・5-FU併用化学放射線療法で78%13)の症例に疼痛緩和が得られたとの報告(レベルV)がある。CDDP静注,CDDP・5-FU静注,またはCDDP・5-FU動注併用化学放射線療法で,52%に疼痛緩和をみたとの報告がある14)(レベルV)。5-FU同時併用化学療法で,76%に鎮痛薬が不要になったとの報告がある15)(レベルIVb)
5-FU併用とゲムシタビン塩酸塩併用では,疼痛緩和効果に差はないとする非ランダム化比較試験の報告がある16) (レベルII(GEM群との比較はIII))

5.結論
これらの結果を総合すると,BSCに徹することは勧められない(グレードD)。放射線治療については,ランダム化比較試験による確認は行われていないが,外照射と術中照射のいずれか一方または両者の併用により疼痛緩和を期待し得る(グレードC1)。至適線量についてのエビデンスはない。化学療法でも疼痛緩和を期待し得る(グレードC1)が,ランダム化比較試験による確認は行われていないものの,放射線単独療法または化学放射線療法のほうが良好な効果が報告されている。化学放射線療法による疼痛緩和はBSCより優れており推奨できる(グレードB)が,放射線単独療法より優れているとのエビデンスはない。

【明日への提言】
放射線療法が癌性疼痛に有効なことは日常よく経験される。癌性疼痛に対しては,鎮痛剤等の対症療法にとどまらず,抗腫瘍効果と除痛効果を併せもつ放射線療法を考慮する意義はあると思われる。
線量分割については,遠隔転移のない症例では,もし放射線治療が奏効した場合にはそれなりの予後が得られる可能性もあるため,晩期合併症にもある程度配慮した線量分割,すなわち1回線量2Gy前後の通常分割照射が望ましいと考えられ,最も報告の多い50.4Gy/28分割/5.5週もしくは50Gy/25分割/5週が推奨される。QOL改善目的の放射線治療では満足のいく疼痛緩和が達成される線量で十分であり,これ以上の総線量は要求されないと考える。
遠隔転移を伴う症例では,化学療法が主体となるが,放射線治療を用いる場合は50.4Gy/28分割/5.5週を基本として,予後に応じ40Gy/20分割/4週などのように総治療期間を短縮した治療計画とする。ただし,治療期間短縮のために1回線量を上げ過ぎると合併症が問題となる恐れがあるので,1回線量は高くとも3Gyにとどめ,その場合の線量分割は30Gy/10分割/2週とするのが妥当と思われる。なお,上記いずれの場合も照射野が広くなり過ぎないように注意が必要である。

【引用文献】
1) Shinchi H, Takao S, Noma H, Matsuo Y, Mataki Y, Mori S, Aikou T. Length and quality of survival after external-beam radiotherapy with concurrent continuous 5-fluorouracil infusion for locally unresectable pancreatic cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2002;53:146-150.
2) 佐伯博行,杉政征夫,山田六平,赤池信,武宮省治,政木隆博,宮川薫,大川伸一.切除不能(Stage IVb)膵癌に対する術中照射療法(IORT).癌と化療 2002;29:2221-2223.
3) Ceha HM, van Tienhoven G, Gouma DJ, Veenhof CH, Schneider CJ, Rauws EA, Phoa SS, Gonzalez D. Feasibility and efficacy of high dose conformal radiotherapy for patients with locally advanced pancreatic carcinoma. Cancer 2000;89:2222-2229.
4) Morganti AG, Trodella L, Valentini V, Barbi S, Macchia G, Mantini G, Turriziani A, Cellini N. Pain relief with short-term irradiation in locally advanced carcinoma of the pancreas. J Palliat Care 2003;19:258-262.
5) Fossati V, Cattaneo GM, Zerbi A, Galli L, Bordogna G, Reni M, Parolini D, Carlucci M, Bissi A, Staudacher C, Di Carlo V, Calandrino R. The role of intraoperative therapy by electron beam and combination of adjuvant chemotherapy and external radiotherapy in carcinoma of the pancreas. Tumori 1995;81:23-31.
6) Kawamura M, Kataoka M, Fujii T, Itoh H, Ishine M, Hamamoto K, Yokoyama S, Takashima S, Satoh M, Inoue K. Electron beam intraoperative radiation therapy (EBIORT) for localized pancreatic carcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1992;23:751-757.
7) 松野正紀,島村弘宗,砂村眞琴,小針雅男,遊佐透,佐々木巌.膵癌の集学的治療.消外:1994;17:199-205.
8) 平岡武久,金光敬一郎,西田英史.膵癌切除不能例に対する術中照射療法.胆と膵 1994;15:139-144.
9) Shibamoto Y, Manabe T, Baba N, Sasai K, Takahashi M, Tobe T, Abe M. High dose, external beam and intraoperative radiotherapy in the treatment of resectable and unresectable pancreatic cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1990;19:605-611.
10) 岡本篤武,鶴田耕二,田中良明.切除不能膵癌に対する術中照射と術後原体照射の併用療法 特に1 年以上生存13 例の検討.日消外会誌 1992;25:1020-1026.
11) Okamoto A, Tsuruta K, Isawa T, Kamisawa T, Tanaka Y, Onodera T. Intraoperative radiation therapy for pancreatic carcinoma. The choice of treatment modality. Int J Pancreatol 1994;16:157-164.
12) Okamoto A, Matsumoto G, Tsuruta K, Baba H, Karasawa K, Kamisawa T, Egawa N. Intraoperative radiation therapy for pancreatic adenocarcinoma:the Komagome hospital experience. Pancreas 2004;28:296-300.
13) Azria D, Ychou M, Jacot W, Thezenas S, Lemanski C, Senesse P, Prost P, Delard R, Masson B, Dubois JB. Treatment of unresectable, locally advanced pancreatic adenocarcinoma with combined radiochemotherapy with 5-fluorouracil and cisplatin. Pancreas 2002;25:360-365.
14) Kawakami H, Uno T, Isobe K, Ueno N, Aruga T, Sudo K, Yamaguchi T, Saisho H, Kawata T, Ito H. Toxicities and effects of involved-field irradiation with concurrent cisplatin for unresectable carcinoma of the pancreas. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2005;62:1357-1362.
15) Morganti AG, Valentini V, Macchia G, Mattiucci GC, Costamagna G, Deodato F, Smaniotto D, Luzi S, Balducci M, Barbi S, Perri V, Trodella L, Cellini N. 5-fluorouracil-based chemoradiation in unresectable pancreatic carcinoma:Phase I-II dose-escalation study. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2004;59:1454-1460.
16) 新地洋之,高尾尊身,前村公成,野間秀歳,上野真一,迫田雅彦,久保文武,夏越祥次,平木嘉幸,中條政敬,愛甲孝.切除不能局所進行膵癌に対する治療戦略 とくに放射線化学療法の延命およびQOLに対する有用性について.鹿児島大医誌2005;57:59-65.


 

書誌情報