ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2009年版

書誌情報
 
CQ3 放射線療法



CQ3-4 局所進行切除不能膵癌に対し術中放射線療法の効果はあるか?

推奨
局所進行切除不能膵癌に対し術中放射線療法の有用性を支持する少数の報告はあるが,これが予後を改善させるか否かについての科学的根拠はいまだ十分ではない(グレードC1)


【エビデンス】
局所進行切除不能膵癌に対する術中放射線療法は,膵癌の外照射療法で問題となる小腸など,放射線感受性の高い膵周囲の正常組織を開腹下に照射野外に退避させ,1回に大線量の電子線を病巣あるいは切除後の腫瘍床に対して照射する治療法である。海外においては放射性同位元素を手術中に病巣に刺入する試みも行われている1)(レベルIVb)
局所進行切除不能膵癌の治療としては,術中放射線療法,外照射療法,化学療法(全身投与,動注療法)の3種類の治療法が単独または組み合わせて用いられている。一方で,それぞれの有用性を直接比較するための臨床試験は行われておらず,標準治療に関してのコンセンサスは形成されていない。
術中放射線療法の除痛効果の検討では,術中放射線療法単独または外照射療法,化学療法との併用で,50〜95%程度の有効性が報告されており2)〜6)(レベルIVb),術中放射線療法非施行例と比較して除痛率が高いという報告がある2)(レベルIVb)
術中放射線療法による延命効果に関しては,除痛効果と同様に,術中放射線療法単独6),または術中放射線療法と外照射療法は5),保存療法に比べて延命効果があり(レベルIVb),術中放射線療法非施行例に比べて,長期生存が可能であるとする報告はあるが1),7)(レベルIVb),術中放射線療法非施行例の内訳が多様であり,外照射療法±化学療法などと比較して,より優れた延命効果があるかどうかは不明である。また術中照射(±術後照射)による局所の効果については評価が困難ではあるが,剖検所見の報告などから推測することが可能である8)(レベルIVb)
標準治療としての術中放射線療法の意義は不明なものの,術中放射線療法と外照射療法,5-FUを組み合わせた集学治療は,第II相臨床試験で良好な治療成績と安全性が報告されている9),10)(レベルIII)。術中放射線療法を施行する際には外照射療法と併用することにより,生存期間の延長が得られること4)(レベルIVb),小線源治療よりは電子線照射が副作用が少なく,生存期間が長いこと1)(レベルIVb),などが報告されており,生存期間の延長を目的とする際には外照射療法を併用すべきである,というコンセンサスは形成されている。
このように術中放射線療法は局所進行切除不能膵癌に対し一定の効果があることは明らかであるが,標準的に術中放射線療法を用いるべきかどうかを現時点で決定することは困難である。また,局所進行切除不能膵癌の死因が,肝転移など局所以外の病変が主因であることが多いことも,術中放射線療法の延命効果が証明されにくい要因になっていると思われる。しかしながら,文献的考察とは別に,局所進行切除不能膵癌でバイパス手術を施行する際には,術中放射線療法を用いることにより1回で大線量を照射することが可能で,バイパス手術後の外照射療法の期間,入院期間を短縮できるという臨床的な利点があるため,実施可能な施設で行うことは妥当であると考えられる。その際,延命を目的とするのであれば外照射療法との併用が望ましい。
以上より,局所進行切除不能膵癌に対し術中放射線療法の有用性を支持する報告はあるものの,大規模なランダム化比較試験はなく,現段階で本治療の推奨度はC1と判定する。

【明日への提言】
エビデンスは低いものの,局所進行切除不能膵癌でバイパス手術を施行する際には,術中放射線療法を用いることにより1回で大線量(20〜25Gy程度)を照射することが可能となり,これに引き続いての外照射療法の期間や入院期間を短縮できるという臨床的な利点がある。また外照射による(化学)放射線療法(40〜50Gy程度)に術中放射線療法を追加し,放射線の総線量を腫瘍の根治可能と考えられる線量レベルにまで高めることにより長期生存の可能性が開かれるという点からも,実施可能な施設で本治療法を行うことは選択の1つと思われる。

【引用文献】
1) Schuricht AL, Spitz F, Barbot D, Rosato F. Intraoperative radiotherapy in the combined-modality management of pancreatic cancer. Am Surg 1998;64:1043-1049.
2) 阿部哲夫,伊藤契,阿川千一郎,石原敬夫,小西敏郎.膵癌に対する術中照射療法の成績と合併症.日消外会誌 2001;34:459-464.
3) 岡本篤武,鶴田耕二,田中良明.切除不能膵癌に対する術中照射と術後原体照射の併用療法 特に1年以上生存13例の検討.日消外会誌 1992;25:1020-1026.
4) Okamoto A, Matsumoto G, Tsuruta K, Baba H, Karasawa K, Kamisawa T, Egawa N. Intraoperative radiation therapy for pancreatic adenocarcinoma:the Komagome hospital experience. Pancreas 2004;28:296-300.
5) Shibamoto Y, Manabe T, Baba N, Sasai K, Takahashi M, Tobe T, Abe M. High dose, external beam and intraoperative radiotherapy in the treatment of resectable and unresectable pancreatic cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1990;19:605-611.
6) Miyamatsu A, Morinaga S, Yukawa N, Akaike M, Sugimasa Y, Takemiya S. Intraoperative radiation therapy(IORT) for locally unresectable pancreatic cancer. 癌と化療 1999;26:1846-1848.
7) 江川新一,福山尚治,砂村眞琴.【癌局所療法研究会】術後遠隔成績からみた膵体尾部癌に対する術中放射線療法の効果と意義.癌と化療 1997;24:1687-1690.
8) Hoekstra HJ, Restrepo C, Kinsella TJ, Sindelar WF. Histopathological effects of intraoperative radiotherapy on pancreas and adjacent tissues:a postmortem analysis. J Surg Oncol 1988;37:104-108.
9) Furuse J, Kinoshita T, Kawashima M, Ishii H, Nagase M, Konishi M, Nakagohri T, Inoue K, Ogino T, Ikeda H, Maru Y, Yoshino M. Intraoperative and conformal external-beam radiation therapy with protracted 5-fluorouracil infusion in patients with locally advanced pancreatic carcinoma. Cancer 2003;97:1346-1352.
10) Tepper JE, Noyes D, Krall JM, Sause WT, Wolkov HB, Dobelbower RR, Thomson J, Owens J, Hanks GE. Intraoperative radiation therapy of pancreatic carcinoma:a report of RTOG-8505. Radiation Therapy Oncology Group. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1991;21:1145-1149.


 

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