ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく
膵癌診療ガイドライン 2006年版

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CQ5 補助療法


CQ5-4 術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?

【エビデンス】
膵癌は根治切除が可能であった例でも早期に再発し,その予後は極めて不良であるため,術後補助療法による予後の改善が期待され検討が行われている。術後補助化学療法は,手術単独と比較するランダム化比較試験が欧州とわが国で行われており,その有用性を検証した(表7)。
術後補助化学療法と手術単独を比較するランダム化比較試験は,欧州からは数本が報告されているが,研究デザインや成績の信憑性に問題があるものが含まれており,3本の報告のみエビデンス(レベルII)とした。ノルウェーで行われた試験は,膵癌47例,十二指腸乳頭部癌14例の根治切除後の患者を5-FU,doxorubicin,mitomycin C(AMF)療法施行群と手術単独群にランダムに割り付け,生存期間はAMF 療法群が有意に良好であることを報告している1)。European Study Group for Pancreatic Cancer(ESPAC)で行われた試験では,膵癌切除後の289例をtwo-by-two factorial designにより,化学放射線療法(5-FU併用体外照射),化学療法(5-FU,folinic acid)をランダムに割り付け,化学療法の有意に良好な成績を示した2),3)。一方,わが国では膵癌,胆嚢癌,胆管癌,乳頭部癌切除後508例(膵癌173例のうち解析対象は158例)を補助化学療法(5-FU,mitomycin C)と手術単独に割り付けたが,膵癌例おける生存率の差は明らかではなかった4)。最近,英国の研究者によりノルウェー(AMF療法),ESPAC(5-FU,folinic acid),わが国(5-FU,mitomycin C)の比較試験に登録された膵癌患者を対象に術後補助療法に関するメタアナリシス5)(レベルI)が行われ,5-FUをベースとする術後補助化学療法が患者の延命に寄与すると報告された。しかしわが国においては,5-FUをベースとする術後補助化学療法の有用性を支持する高いエビデンスの報告が乏しく,現時点では十分なコンセンサスが得られていない。現在国内外で,塩酸ゲムシタビンによる術後補助化学療法の有用性を検証する比較試験が進められており,今後高いエビデンスの集積が進むものと期待されている。ドイツで行われたランダム化比較試験の中間報告6)(レベルII)では,ゲムシタビン補助化学療法により無再発生存期間の有意な延長が認められた。近く最終報告が行われる予定であるが,現時点では延命効果の有無については確定していない。


 表7 術後補助化学療法に関する主な無作為化比較試験
報告者 報告年 レジメン 症例数 50%生存期間(月) P値  
Bakkevold KE 1993   31 11 0.02 乳頭部癌を含む
AMF   30 23
ESPAC 2001 178 16.1 n.s.  
40Gy+5-FU 175 15.5
    235 14.0 0.0005  
    5-FU+LV 238 19.7    
Takada T 2002   77 5年生存率=18% n.s.  
MF   81 5年生存率=12%
Stocken DD 2005 補助化学療法(-)   中央値=13.5カ月,
2年生存率=28%
0.001  
Meta-analysis   補助化学療法(+)   中央値=19.0カ月,
2年生存率=38%
   
  AMF:doxorubicin, mitomicin C, 5-FU
LV:leucovorin
MF:mitomicin C, 5-FU
n.s.:有意差なし



 

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