ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく
膵癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
 
CQ3 放射線療法


CQ3-1 局所進行切除不能膵癌に対し化学放射線療法は有効か?

【エビデンス】
切除は困難であるが遠隔転移を認めない局所進行膵癌に対して,現状では化学放射線療法が一般的に行われている。放射線療法と化学療法を併用する目的として,化学療法による放射線の増感効果,照射野外の微小転移の抑制などがある。化学放射線療法が局所進行切除不能膵癌に対して有効な治療法であるかどうかのエビデンスを検討した。
局所進行切除不能膵癌に対して,これまで行われた5-FU併用化学放射線療法と,放射線療法単独あるいは化学療法単独(主に5-FU)とを比較するランダム化比較試験は1988年までに報告された1群20〜90例未満の4本のみである(表31),2),3),4)(レベルII)。このうち3つの比較試験において化学放射線療法群の生存期間中央値(10.1-10.6カ月)が放射線療法単独群(5.7-6.3カ月)または化学療法単独群(8.0カ月)よりも有意に良好であった1),2),3)。しかしECOGの試験では化学放射線療法と化学療法単独の生存期間に有意差を認めなかったが(生存期間中央値:8.3カ月 vs. 8.2カ月)4),放射線療法の総線量が40Gyと少ないという指摘もある。これらの理由から質の高いエビデンスではないが,5-FU併用化学放射線療法が標準的治療法として位置づけられている。米国のNCCN Clinical Practice Guidelineでは,PS良好な局所進行切除不能膵癌に対する化学放射線療法はカテゴリー2A*とし,併用化学療法は5-FU(ボーラス投与または持続投与法)を用い,原発巣,転移リンパ節,所属リンパ節を標的体積に含み,線量は1回1.8〜2.0Gy,総線量50〜60Gyとしている。わが国における5-FU(200mg/m2/day)持続投与と放射線治療50.4Gy/28回の臨床第II相試験の報告では,生存期間中央値10.3カ月,1年生存率41.8%で,Grade 3以上の有害事象は20%であった5)(レベルIII)。より有効な化学放射線療法のレジメンを探索する目的で海外および国内において多くの臨床第I,II相試験が行われている。併用化学療法として,CDDP少量併用放射線療法の有効性は認められていない6),7)(レベルIII)。近年,進行膵癌に対する標準薬である塩酸ゲムシタビンと放射線療法との同時併用の臨床試験が盛んに行われている8),9)(レベルIII)。ECOGは5-FU持続静注と塩酸ゲムシタビンの週1回投与における臨床第I相試験を行い,重篤な有害事象を高率に生じたため,試験を中止したことを報告している10)(レベルIII)。有効性に関しては,Liらが5-FU併用化学放射線療法と塩酸ゲムシタビン併用化学放射線療法とのランダム化比較試験を行い,塩酸ゲムシタビン併用群の生存期間が有意に良好であったことを報告している(生存期間中央値:塩酸ゲムシタビン併用群;14.5カ月,5-FU併用群;6.7カ月)11)(レベルII)。しかし,本試験は1群20例未満の試験で,症例数設定の根拠が乏しいなどの理由もあり,塩酸ゲムシタビン併用化学放射線療法が5-FU併用化学放射線療法よりも有効である可能性はあるが,信頼性はやや乏しい。その他新規抗癌剤との併用,動注化学療法との併用,多分割照射などの報告もあるが,臨床試験として今後の評価が必要である。
以上より,現状では標準治療としての高いエビデンスはないが,局所進行切除不能膵癌に対する5-FU併用化学放射線療法は有効な治療法であり,治療選択肢の一つとして推奨されると判断した。
   *カテゴリー2A:臨床経験も含む質の低いエビデンスに基づきNCCNのコンセンサスが得られている。


 表3 局所進行膵癌に対するランダム化比較試験
報告者 報告年 放射線化学療法 放射線療法 化学療法 症例数 50%生存期間(月) P値
Moertel 1969 40Gy+5-FU
-
-
40Gy
-
-
32
32
10.4
6.3
< 0.05
GITSG 1985 40Gy+5-FU
60Gy+5-FU
-
-
-
60Gy
5-FU
5-FU
-
28
31
25
10.6
10.1
5.7
< 0.01
< 0.01
ECOG 1985 40Gy+5-FU
-
-
-
5-FU
5-FU
47
44
8.3
8.2
n.s.
GITSG 1988 54Gy+5-FU
-
-
-
SMF
SMF
22
21
10.5
8.0
0.02
 SMF:streptozotocin, mitomycin C, 5-FU
 n.s.:有意差なし

 

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