ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく
膵癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
 
CQ1 診断法


CQ1-3 膵癌の診断法:ファーストステップは何か?

【エビデンス】
1.血中膵酵素
血中膵酵素にはアミラーゼ(膵型アミラーゼ),リパーゼ,エラスターゼ1,トリプシンなどがある。いずれも膵臓疾患の診断には重要であるが,膵癌に特異的ではない。膵癌での血清アミラーゼ,エラスターゼ1の異常率は20〜30%1),2)(レベルIV)であり,膵癌による膵管狭窄から随伴性膵炎が引き起こされるためと考えられる。
2.腫瘍マーカー
1) 膵癌検出のための腫瘍マーカーには,糖鎖抗原にCA19-9,Span-1,CA50,CA242,Dupan-2,TAG-72,尿中フコースなど,糖鎖以外の抗原にCEA,POA,TPSなどがある。これらの腫瘍マーカーは感度は良いが,特異度はそれほど高くなく,偽陽性も20〜30%と高い3)(レベルI)。膵癌での陽性率は進行癌を除けば一般的に低く,2cm以下の膵癌でもCA19-9の陽性率は52%と半数に過ぎないため,早期膵癌の検出には有用ではない4)(レベルIV)。また,糖鎖抗原による腫瘍マーカーは,Lewis血液型陰性例では抗原が産生されないため偽陰性を示すので注意を要する。
   各腫瘍マーカーの膵癌検出感度は報告5),6)(レベルIV)により多少異なるが,CA19-9が70〜80%,Span-1 80%,Dupan-2 48%,CEA 55〜62%,CA50 62%である。他の腫瘍マーカー(CA242,TAG-72,尿中フコース,TPSなど)の膵癌検出率はCA19-9と比較し報告7),8),9),10)(レベルIV)によってさまざまで,評価は一定していないが,複数の腫瘍マーカーの組み合わせ測定で検出率が上昇する11)(レベルIII)とされる。しかし,保険適応外のものが多く,一般的有用性は低い。臨床症状から膵癌が疑われた症例で,臨床症状,血中膵酵素,さらに多数の腫瘍マーカーを組み合わせた膵癌検出が試みられ,組み合わせ検定は最も感度の高いCA19-9の単独測定よりも検出率が高いと報告されている12)(レベルIII)
2) 各腫瘍マーカーのうち,CA19-9については膵癌患者の生存期間と相関する報告13),14),15)(レベルIV)や膵癌切除後の再発診断に有用であるとする報告13)(レベルIV)があり,膵癌の経過観察に有用である。
3.腹部超音波検査(US)
体外USは簡便で非侵襲な検査として,外来診療や検診において非常に有用である。しかし,腫瘍径の小さい膵癌や膵尾側病変は描出することが困難なことも多く検出しにくい。通常の職場検診でのUSによる膵画像の有所見率は約1%で,膵癌発見率は約0.06%以下と低い16),17),18)(レベルIV)。膵癌検出につながる間接所見として,主膵管の拡張(2mm以上)や小嚢胞が膵癌の前駆所見19)(レベルIII)と考えられ,このような所見がみられた場合は,すみやかにCT検査をはじめとする次のステップへ診断を進めるべきである(セカンドステップ参照)。
4.血中遺伝子異常
膵癌組織では高頻度にK-rasやp53の遺伝子異常が確認されている。膵癌患者で血中K-rasの遺伝子異常 やp53値の上昇が認められると報告20),21),22)(レベルIV)されたが,まだ評価は一定ではない。


 

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