ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第7章 待機療法

 
CQ4  根治療法を前提としたPSA監視療法の場合,観察期間および観察項目は何が適当か? また二次治療に移行する際の基準をどう決めるか?

推奨グレード B
PSA,直腸診については3〜6カ月ごとにチェックする。PSA倍加時間が2年以内のものについては二次治療を考慮する。定期的な針生検が全例で必要か否かについての結論は出ていない。

 背 景
根治療法を前提としたPSA監視療法において観察期間および観察項目をどのように設定するかということは重要な問題である。しかしながらこの問いに対する明解な答えはいまだなく各研究者がそれぞれのプロトコールに則って行っているのが現状である。

 解 説
Zietamanらは199名のT1-2,PSA<20ng/ml前立腺癌患者に対しPSA監視療法を施行した1)(III)。経過観察は4〜6カ月ごとのPSAおよび直腸診で,15名に対し再生検が施行された。全体生存率は5年:77%,7年:63%,疾患特異的生存率は5年:98%,7年:98%であった。生存していてPSA監視療法を継続しているものは5年:43%,7年:26%であった。診断から二次治療に至るまでのPSAの上昇は平均で2.9ng/mlで,PSA監視療法を継続している場合のPSAの上昇は平均で0.9ng/mlであった。
Chooらは206名のT1b-2,PSA≦15ng/ml,Gleasonスコア≦7前立腺癌患者に対しPSA監視療法を施行した2)(III)。最初の2年は3カ月ごと,それからは6カ月ごとに直腸診とPSA,PAP,血清Crを測定した。また6カ月ごとに経直腸エコーを,PSA監視療法開始後12〜18カ月後に再生検を施行した。癌の進行に関して1)PSA倍加時間が2年以内,2)直腸診で原発巣が2倍以上に増大,3)経尿道的切除を必要とするような排尿困難の出現,4)画像もしくは臨床上での転移の出現,のうち1つでも認められた時はPSA監視療法を打ち切った。二次治療に移行したものは69名でそのうち癌が進行していると判断されたのは36名であった。PSA監視療法を継続したものは2年で67%,4年で48%であった。
Carterら3)(III)は81名のT1c,65歳以上で癌容量の少ない患者に対しPSA監視療法を施行した。Follow upとして半年ごとのfreeおよびtotal PSAおよび直腸診そして1年ごとの再生検を施行した。癌の進行に関しては針生検での病勢(Gleasonスコアおよび癌の容量)から判断した。PSAの値は参考にするが病勢悪化の基準としては用いなかった。81名の内病勢の進行を示したものは25名(31%)でこのうち13名が前立腺全摘除術を受け12名は限局性前立腺癌であった。
このように現段階ではfollow upのプロトコールおよび病勢悪化の基準は各研究者によって異なるが,PSA,直腸診の定期的(3〜6カ月ごと)なチェックについては共通している。さらにPSAの倍加時間を重要視している報告も多い。The cancer of the prostate strategic urological research endeavor(CaPSURE)のデータベースを用いた報告では1991年から2002年で70歳以下,Gleasonスコア≦6(Gleason patternで4以上のものは除外する),生検での陽性本数が2個所以下,臨床病期T1-2,PSA≦20ng/mlでPSA監視療法を施行した313名に関し解析した4)(III)。平均観察期間は3.8年で平均年齢は65.4歳であった。313名中215名は二次治療に移行しており内訳は前立腺全摘除術:104名,放射線外照射:57名,小線源治療:39名,凍結療法:2名,内分泌療法:13名であった。二次治療に移行した割合は2年:57.3%,4年:73.2%であった。二次治療に移行した人の平均PSA倍加時間が2.5年であったのに対しPSA監視療法を継続している人の平均PSA倍加時間は25.8年であったと報告している。
定期的な再生検が全例において必要か否かについての結論はでていない。EpsteinらはT1c,Gleasonスコア≦6にてPSA監視療法を行い,少なくとも1回は再生検を施行した70名に関し報告している。これによると70名中9名(12.9%)が再生検にてGleasonスコアの上昇(7≦)を認めた5)(III)。この9名中8名(89%)は15カ月以内に施行された再生検にてgrade upを認めていた。ほとんどのgrade upが初回生検後,比較的早期に認められたことからこれは腫瘍自体のmalignant progressionよりはむしろ初回生検時にグレードの悪い部分が採取されていなかった可能性の方が高いとし,短期間で腫瘍のグレードが悪化する可能性は低いと結論づけている。


 参考文献
1) Zietman AL, Thakral H, Wilson L, et al. Conservative management of prostate cancer in the prostate specific antigen era:the incidence and time course of subsequent therapy. J Urol. 2001;166(5):1702-6.
2) Choo R, Klotz L, Danjoux C, et al. Feasibility study:watchful waiting for localized low to intermediate grade prostate carcinoma with selective delayed intervention based on prostate specific antigen, histological and/or clinical progression. J Urol. 2002;167(4):1664-9.
3) Carter HB, Walsh PC, Landis P, et al. Expectant management of nonpalpable prostate cancer with curative intent:preliminary results. J Urol. 2002;167(3):1231-4.
4) Carter CA, Donahue T, Sun L, et al. Temporarily deferred therapy(watchful waiting)for men younger than 70 years and with low-risk localized prostate cancer in the prostate-specific antigen era. J Clin Oncol. 2003;21(21):4001-8.
5) Epstein JI, Walsh PC, Carter HB. Dedifferentiation of prostate cancer grade with time in men followed expectantly for stage T1c disease. J Urol. 2001;166(5):1688-91.

 

書誌情報