ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第6章 薬物療法

 
3 MABの妥当性

Stage III-IVに対して,内分泌療法が選択され,延命効果が得られている6)(II)。Stage IIIでは,手術や放射線療法との併用が行われることもある。特に,放射線療法と内分泌療法の併用は放射線療法単独より生存期間の延長が得られるとするRCT7)(II)が報告されて以来,その併用効果に期待が寄せられている。しかし,適応症例の選択,内分泌療法の開始時期,期間など問題が残されている。一般には,転移を有する進行性前立腺癌の標準治療は外科的または薬物去勢によるアンドロゲン遮断療法である。前立腺細胞内のアンドロゲンのうち40%は副腎由来であるとの考えから,去勢(精巣摘除またはLH-RHアゴニスト投与)と非ステロイド性抗アンドロゲン剤を併用することで精巣および副腎由来のアンドロゲンを抑制するMABの有用性が示された8)(III)。以後MABは進行前立腺癌の治療として一般的な手段となってきたが,去勢単独と比較し長期予後を改善するかどうかが論議の対象となっている。Prostate Cancer Trialists'Collaborative Groupは進行前立腺癌に対するメタアナリシスを行い9)(I),MAB療法と去勢単独療法で生存期間に有意差なしと報告した。しかしこの試験の中にはステロイド性抗アンドロゲン剤を用いたものが含まれており,MABとして不完全であった可能性がある。そこでこれらを除外したメタアナリシス(13試験,2922症例)も行われた。これによれば非再発期間,生存期間ともに有意にMAB療法が優れていることが示された。同様に,最近のメタアナリシス10)(I)でも,非ステロイド系抗アンドロゲン剤では,MAB群に有意な生存率の上昇が認められた。
一方,SWOGによる大規模なRCT11)(II)においては去勢術+flutamide投与群と去勢術+placebo投与群との比較が行われた。Overall survivalに有意差はなく,逆にflutamide投与群では下痢,貧血の発生が有意に高いことが指摘された。以上のRCTを含めた最近のメタアナリシスでは,2年生存率ではMAB療法と単独療法(去勢術あるいはLH-RHアゴニスト単独)の差はないが,5年生存率ではMAB療法が有意に優れていることが指摘されている12),13),14)(I)。ただし,生存率の差はわずかであることから,臨床的な真の利益は効果,副作用,QOL,医療経済的側面を考慮して決定されるべきであるとされている。現時点では,MABの妥当性についての結論を導くさらなる研究の結果が待たれる。最近,抗アンドロゲン剤としてbicalutamideを用いてMABとLH-RHアゴニスト単独の二重盲検試験の結果,Time to progressionにおいて明らかな効果が報告された。

 

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