ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第5章 放射線療法

 
G.根治的放射線療法後の生化学的再発の定義
CQ1  〔再発の判定〕生化学的ならびに臨床的再発はどのように判定したらよいか?

推奨グレード B
1997年のAmerican Society for Therapeutic Radiology and Oncology(ASTRO)におけるガイドラインでは,前立腺癌に対する放射線療法後の再発の定義を(1)再生検で癌が検出された場合,(2)画像診断で転移が判明した場合,(3)PSAが3回連続で上昇した場合としている。前立腺癌に対する放射線療法後の生化学的再発は治療の早期エンドポイントとされているが,生化学的再発の判定基準に確立されたコンセンサスはないのが現状であり,今後の更なる検討が必要である。また,臨床的再発についても報告ごとに,その定義が異なるので,現時点で標準化することは困難である。

 解 説
放射線療法後の再発では,臨床的再発を予測する高い感度,特異度,正確度の得られる生化学的再発を定義することが重要と考えられる。現在,国際的にも広く用いられている再発の定義は,1997年のAmerican Society for Therapeutic Radiology and Oncology(ASTRO)におけるガイドライン1)である。すなわち,(1)再生検で癌が検出された場合,(2)画像診断で転移が判明した場合,(3)PSAが3回連続で上昇した場合とされている(PSA検査の間隔は,照射後最初の2年間は3カ月ごと,その後半年ごととしている。PSA nadirから最初のPSA上昇日の中点が再発日とされている。)しかし,このASTROのガイドラインには,臨床的再発に対する感度が高くないという欠点がある2)(IV)臨床的再発および疾患特異的死亡予測における20種類以上の生化学的再発の定義を検討した報告3)(III)では,放射線療法後のPSA nadirから3ng/ml以上のPSA上昇を生化学的再発と定義した場合,その臨床的再発に対する感度,特異度,正確度は高く,より有用であると報告している。これは再発日をさかのぼって決定するというASTROのガイドラインの問題も克服し,より迅速な再発診断が可能となる点で注目される。また別の報告4)(III)ではPSAが前回よりも0.5ng/ml以上の上昇が2回ある,PSA最低値から2ng/ml以上の上昇,前回から2ng/ml以上の上昇,前回から3ng/ml以上の上昇,という4種類の生化学的再発の定義がASTROのガイドラインと比較して感度,特異度の点から優れているとも報告されている。放射線治療後の再生検の役割を論じた報告5)(IV)では,系統的前立腺再生検は標準的な前立腺癌患者には不要で,PSA測定を上回る評価を付加することはできないとしている。以上,生化学的再発は治療の早期エンドポイントとされているが,生化学的再発の判定基準に確立されたコンセンサスはないのが現状であり,それを規定するには今後の更なる検討が必要と思われる。


 参考文献
1) American Society for Therapeutic Radiology and Oncology; http://www.astro.org/
2) Taylor JM, Griffith KA, Sandler HM. Definitions of biochemical failure in prostate cancer following radiation therapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;50(5):1212-9.
3) Kestin LL, Vicini FA, Martinez AA. Practical application of biochemical failure definitions:what to do and when to do it. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2002;53(2):304-15.
4) Thames H, Kuban D, Levy L, et al. Comparison of alternative biochemical failure definitions based on clinical outcome in 4839 prostate cancer patients treated by external beam radiotherapy between 1986 and 1995. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2003;57(4):929-43.
5) Smathers S, Wallner K, Sprouse J, et al. Temporary PSA rises and repeat prostate biopsies after brachytherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;50(5):1207-11.

 

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