ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第5章 放射線療法

 
F.陽子線および重粒子線治療
CQ3  〔照射の種類と方法〕陽子線および重粒子線治療の種類と適切な照射方法はどのようなものか?

推奨グレード C
陽子線,重粒子線(重イオン線)は,その放射線物理特性より治療成績の向上が期待されている。他の根治療法を凌駕するか否かに関しては明確な根拠がない。
推奨グレード B
光子線照射に陽子線ブーストを加えた治療法が提唱されているが,推奨されるべき併用方法や線量は確定されていない。

 解 説
医療用放射線にはX線,γ線などの他に,粒子線(広義の重粒子線)(*電子線は除く)と呼ばれる一群がある。粒子線には荷電粒子線と非荷電粒子線がある。非荷電粒子線には速中性子線や熱中性子線があり,荷電粒子線には陽子線および重イオン線(狭義の重粒子線)がある。前立腺癌に対してこれまで主に使用されてきたのは,速中性子線,陽子線と重粒子線(重イオン線)である。
通常の高エネルギーX線は人体を通過してしまうのに対し,陽子線,重イオン線は標的体積に応じた深さで止めることが可能で,それより深部の線量を無視できる程小さくすることができる。また,粒子が停止する直前に線量が最大となるブラッグピーク(Bragg peak)を持ち癌病巣に線量を集中できるなどの特徴を有する。さらに,線量のみでなく,線エネルギー付与(linear energy transfer:LET)が通常放射線より高く,細胞周期にかかわらず低酸素状態の細胞にも高い殺細胞効果が得られる。粒子線は癌治療に使用する場合,それぞれの生物学的効果が線質により少し異なる。速中性子線はLETは高いが,ブラッグピークがなく,陽子線はブラッグピークが高いが,高LETではない1)(IV)。ところが,重イオン線は両方の効果を兼ね備えていることが示されている2)(III)
かつて,速中性子線と光子線(X線)の併用治療により,優れた局所効果が得られたと報告されたが,速中性子線の照射線量を増加すると有害事象の頻度が増えることが問題であった。
一方,光子線(X線)照射と陽子線によるブースト照射を併用する治療方法がマサチューセッツ総合病院を中心に研究され,期待できる効果が報告されている3)(III)。しかし,通常のX線と比べて生存率の有意な改善は得られていない。
重粒子線(重イオン線)については,本邦において炭素イオン線を用いた臨床試験が行われ4)(III),有望な治療成績が報告された。他の治療方法との比較は今後の課題である。


 参考文献
1) Slater JD, Rossi CJ Jr, Yonemoto LT, et al. Conformal proton therapy for early-stage prostate cancer. Urology. 1999;53(5):978-84.
2) Nikoghosyan A, Schulz-Ertner D, Didinger B, et al. Evaluation of therapeutic potential of heavy ion therapy for patients with locally advanced prostate cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2004;58(1):89-97.
3) Shipley WU, Verhey LJ, Munzenrider JE, et al. Advanced prostate cancer:the results of a randomized comparative trial of high dose irradiation boosting with conformal protons compared with conventional dose irradiation using photons alone. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1995;32(1):3-12.
4) Akakura K, Tsujii H, Morita S, et al. Phase I/II clinical trials of carbon ion therapy for prostate cancer. Prostate. 2004;58(3):252-8.

 

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