ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第5章 放射線療法

 
A.外照射
CQ7  〔有害事象とQOL〕外照射における有害事象はどのようなものがあるか? また,QOLはどのように影響するか?

推奨グレード B
放射線(外照射)治療で最も問題になる有害事象は,直腸障害である。尿路障害と勃起機能不全も報告されている。

 背 景
放射線治療の有害事象は,急性期(照射中から照射終了後3カ月以内)のものと晩期(照射終了後3カ月以降)のものに大別されるが,問題になるのは晩期の有害事象である。前立腺癌治療での有害事象は消化管障害,尿路障害,性機能障害,およびその他に分類することができる。いずれも照射野内の正常組織が障害されることにより生じるが,3D-CRTやIMRTでは正常組織の被曝を軽減し,有害事象発現率を低下させることができるとされている。

 解 説
急性期の有害事象として,頻尿,排尿時痛,照射野内の臀部皮膚の発赤,ただれなどがある。いずれも治療終了後1〜2カ月で改善するが,稀に何らかの処置を必要とするグレード3-4の合併症を示すこともあり(約3%),生命予後に関連する合併症も約1.5%にみられるという報告もある1)(II)。通常最も問題になるのは尿路障害(主に頻尿)である。Chouらは照射線量の中央値73.8Gyでグレード2の急性尿路障害が33%にみられたが,グレード3の障害はみられなかったとしている2)(III)
晩期有害事象については臓器別に記す。

(1)消化管
最も問題になるのは直腸出血であるが,照射される線量や照射野および評価基準の違いなどによりその頻度には2%程度から30%以上と大きな幅がある。
従来の外照射から3D-CRT,さらにIMRTと技術の進歩に伴って直腸障害の頻度を低く抑えることができる,あるいは頻度を同等に保ったまま腫瘍に対する線量を増加させることができるとする報告は多い。
Dearnaleyらは225例を対象とした無作為化比較試験において従来の放射線治療と3D-CRTの有害事象を比較し,観察期間の中央値3.6年でRTOGグレード2以上の直腸障害が従来の放射線治療群15%に対して3D-CRT群5%と有意に少なかったとしている3)(III)。Zelefskyらは772例を対象とした遡及的研究において,IMRTを用いて81-86.4Gyという超高線量を投与したにもかかわらず,観察期間の中央値2年でグレード2以上の直腸障害の発生率は4.5%であったとしている4)(III)

(2)尿路系
急性期にみられる頻尿や排尿痛などの頻度に比べて,尿路系の晩期障害の頻度は一般に低い。具体的な症状としては尿失禁,尿道狭窄がある。尿路障害についても照射技術の向上による有害事象の減少は報告されており,Schultheissらは616例の遡及的研究において,晩期尿路障害は従来の外照射で4.6%であったのに対して3D-CRTでは0.2%であったとしている5)(III)

(3)性機能
性機能の評価は少なくとも照射後18〜24カ月間は行う必要があり,手術療法と比べて放射線治療では最初の1年間は性機能の回復傾向が似ているが,手術では1年後も回復傾向がみられるのに対し,放射線療法では1年以降はむしろ性機能の低下傾向がみられたという6)(III)。一方,長期間の観察例では放射線療法後4〜8年で性機能に変化はみられかったという報告がある7)(III)。照射線量と性機能障害については高線量(75.6Gy以上)照射例で,有意に性機能障害の頻度が高いという報告がある8)(III)
外照射によって尿意切迫感や腸の違和感が生じ,疾患特異的QOL,性機能に対する興味や満足感が有意に損なわれるが,それらに対する負担感はあまりなく,全般的なQOLはそれほど障害されないとされている。また手術療法と比較しても治療後のQOLは同様な傾向を示す9)(II)10),11)(III)


 参考文献
1) Zurlo A, Collette L, van Tienhoven G, et al. Acute toxicity of conventional radiation therapy for high-risk prostate cancer in EORTC trial 22863. Eur Urol. 2002;42(2):125-32.
2) Chou RH, Wilder RB, Ji M, et al. Acute toxicity of three-dimensional conformal radiotherapy in prostate cancer patients eligible for implant monotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2000;47(1):115-9.
3) Dearnaley DP, Khoo VS, Norman AR, et al. Comparison of radiation side-effects of conformal and conventional radiotherapy in prostate cancer:a randomized trial. Lancet. 1999;353(9149):267-72.
4) Zelefsky MJ, Fuks Z, Hunt M, et al. High-dose intensity modulated radiation therapy for prostate cancer:early toxicity and biochemical outcome in 772 patients. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2002;53(5):1111-6.
5) Schultheiss TE, Hanks GE, Hunt MA, et al. Incidence of and factors related to late complications in conformal and conventional radiation treatment of cancer of the prostate. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1995;32(3):643-9.
6) Litwin MS, Flanders SC, Pasta DJ, et al. Sexual function and bother after radical prostatectomy or radiation for prostate cancer:multivariate quality-of-life analysis from CaPSURE. Cancer of the Prostate Strategic Urologic Research Endeavor. Urology. 1999;54(3):503-8.
7) Fransson P, Widmark A. Late side effects unchanged 4-8 years after radiotherapy for prostate carcinoma:a comparison with age-matched controls. Cancer. 1999;85(3):678-88.
8) Zelefsky MJ, Cowen D, Fuks Z, et al. Long term tolerance of high dose three-dimensional conformal radiotherapy in patients with localized prostate carcinoma. Cancer. 1999;85(11):2460-8.
9) Hamilton AS, Stanford JL, Gilliland FD, et al. Health outcomes after external-beam radiation therapy for clinically localized prostate cancer:results from the Prostate Cancer Outcomes Study. J Clin Oncol. 2001;19(9):2517-26.
10) Hanlon AL, Watkins Bruner D, Peter R, et al. Quality of life study in prostate cancer patients treated with three-dimensional conformal radiation therapy:comparing late bowel and bladder quality of life symptoms to that of the normal population. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;49(1):51-9.
11) Janda M, Gerstner N, Obermair A, et al. Quality of life changes during conformal radiation therapy for prostate carcinoma. Cancer. 2000;89(6):1322-8.

 

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