ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第4章 外科治療

 
CQ8  前立腺全摘除術は症例数の多い施設で受けるべきである。

推奨グレード B
単純に数の問題だけではないが,この手術はある程度の経験と熟練を要する手術である。

 背景・目的
前立腺全摘除術は解剖学的に境界がはっきりしない尿道と前立腺を離断する必要がある手術法であり,また狭い骨盤内で出血しやすい静脈叢の処理が必要である。かねてからこの技術的な問題と症例数との関係が指摘されており,この点を検証した。

 解 説
前立腺全摘除術の症例数と合併症,治療成績の関係が指摘されている。1993年の報告ではあるが,症例の少ない施設では,多くの症例を手術する施設に比較して,入院が長期であり,かつ合併症は患者の年齢が高いほど多くなり,75歳以上で顕著であったと報告された1)(II)。経験を積んだ泌尿器科医の管理下で手術が施行され,手術件数が多い病院では術後合併症が少なく,在院日数が短く,低コストになり医療費の削減につながると指摘している2),3)(III)
根治性との関連では,たとえば「術者」は切除断端陽性を規定する因子となり得るか?という疑問に対してMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerでの4600症例の分析では,術者の手術手技は,これを規定する因子の一つであるとの結論を導いている4)(III)。同様の傾向は腹腔鏡下手術におけるSenior surgeon,Junior surgeonの間でも同様の傾向が認められているが5)(III),腹腔鏡の場合にはモニタリングやビデオレビューにより改善の可能性が指摘されている。
したがってこの手術における経験,慣れは治療成績,術後合併症,後遺症に関与しているといわざるを得ない。この手術を実施するすべての泌尿器科医は技術を高める努力をすべきであると考えられる。


 参考文献
1) Lu-Yao GL, McLerran D, Wasson J, et al. An assessment of radical prostatectomy. Time trends, geographic variation, and outcomes. The Prostate Patient Outcomes Research Team. JAMA. 1993;269(20):2633-6.
2) Lepor H, Nieder AM, Ferrandino MN. Intraoperative and postoperative complications of radical retropubic prostatectomy in a consecutive series of 1,000 cases. J Urol. 2001;166(5):1729-33.
3) Hu JC, Gold KF, Pashos CL, et al. Role of surgeon volume in radical prostatectomy outcomes. J Clin Oncol. 2003;21(3):401-5.
4) Eastham JA, Kattan MW, Riedel E, et al. Variations among individual surgeons in the rate of positive surgical margins in radical prostatectomy specimens. J Urol. 2003;170:2292-5.
5) El-Feel A, Davis JW, Deger S, et al. Positive margins after laparoscopic radical prostatectomy:a prospective study of 100 cases performed by 4 different surgeons. Eur Urol. 2003;43(6):622-6.

 

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