ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第4章 外科治療

 
CQ4  Gleasonスコア8以上あるいはPSA 20ng/ml以上に対する症例に対しても前立腺全摘除術の適応がある。

推奨グレード B
Gleasonスコア8以上あるいはPSA 20ng/ml以上という理由で前立腺全摘除術による根治の可能性がないと判断するべきではない。

 背景・目的
National Comprehensive Cancer Networkのガイドラインによると(http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/default.asp)切除標本によりpT3以上,pN positive,Gleasonスコア8以上において癌はすでに広がっており,根治は望めないとされており,生命予後にかかわらず局所治療単独による利益はないと記載されている。この点を検討した。

 解 説
現在,PSA再発をきたしにくい前立腺癌を前立腺全摘除術の適応とすべきであるとの主張が優勢であることは周知の事実である。具体的にはlow Gleason,low PSA,low tumor volumeなどの条件を満たす場合が良いとされている。しかしこのような症例に対しては待期遅延内分泌療法も含めて他の治療法によっても十分,良好な予後が期待できることも事実であり,この点がジレンマとなっている。腫瘍外科の観点からは,むしろ手術療法によってのみ根治の可能性がある病態が本来の適応となるのではという考え方もあり得ると思われる。
前立腺全摘除術の適応と考えられた1000例のT1-T2症例の解析では75%で前立腺全摘除術により,長期に癌がコントロールされており,Gleasonスコア8-10,PSAが20ng/ml以上を含む,ハイリスク癌の大多数でも良好な成績であった1)(III)と逆説的な報告があり,他にも同様の報告もある2)(III)。さらに危険因子が存在しても切除が完全であれば前立腺全摘除術により高い非再発率が示されている3)(III)
また最終的な生命予後に関しても,病理学的に限局した症例では,Gleasonスコア8以上でも前立腺全摘除術によって10年の疾患特異生存率は96%と報告されている4)(III)。また合併症のない,あるいは軽い患者では,Gleasonスコア(低くても高くても)あるいは,年齢にかかわらず外科治療における最終的な死亡率は同じであったという報告もある5)(III)
したがってGleasonスコア8以上あるいはPSA 20ng/dl以上のすべてを前立腺全摘除術の禁忌とする理由はなく,予後因子を考慮して症例を選択すればよい6)(III)という主張はもっともであると判断されるが,当然PSA再発をきたしやすく,次のT3前立腺癌に対する適応の項目でも記載したように,この病態に対する外科治療にあたっては合併症の程度を許容範囲内にするために十分な外科的技術が要求され,局所切除と外科的合併症のバランスを取ることのできる経験のある泌尿器科医が行うべきであると考えられる。


 参考文献
1) Hull GW, Rabbani F, Abbas F, et al. Cancer control with radical prostatectomy alone in 1,000 consecutive patients. J Urol. 2002;167:528-34.
2) Brandli DW, Koch MO, Foster RS, et al. Biochemical disease-free survival in patients with a high prostate-specific antigen level(20-100ng/mL)and clinically localized prostate cancer after radical prostatectomy. BJU Int. 2003;92(1):19-22;discussion 22-3.
3) Mian BM, Troncoso P, Okihara K, et al. Outcome of patients with Gleason score 8 or higher prostate cancer following radical prostatectomy alone. J Urol. 2002;167(4):1675-80.
4) Lau WK, Bergstralh EJ, Blute ML, et al. Radical prostatectomy for pathological Gleason 8 or greater prostate cancer:influence of concomitant pathological variables. J Urol. 2002;167(1):117-22.
5) Sweat SD, Bergstralh EJ, Slezak J, et al. Competing risk analysis after radical prostatectomy for clinically nonmetastatic prostate adenocarcinoma according to clinical Gleason score and patient age. J Urol. 2002;168(2):525-9.
6) Manoharan M, Bird VG, Kim SS, et al. Outcome after radical prostatectomy with a pretreatment prostate biopsy Gleason score of >/=8. BJU Int. 2003;92(6):539-44.

 

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