ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第3章 治療総論

 
5 薬物療法


(1)  前立腺癌における内分泌療法
(2) Maximum androgen blockade(MAB)の妥当性
(3) 再燃癌に対する薬物療法



(1)前立腺癌における内分泌療法

前立腺癌に対し内分泌療法を凌駕する化学療法は現時点では存在しない。各種内分泌療法の近接効果は著明であるが,その効果の持続が進行例では2〜3年であること,また,erectile dysfunction(ED)やlibidoの低下など性関連の副作用1),2)(II)が問題となり,その適応には限界がある。
内分泌療法として最初に行われたのは外科的な去勢術である。その後女性ホルモン製剤が使用されたが,心血管系の副作用のため今日では用いられることは少ない。最も一般的な内分泌治療としては,luteinizing hormone-releasing hormone(LH-RH)アゴニストおよび抗アンドロゲン剤の併用あるいは単独療法が行われる。LH-RHアゴニストとしては,goserelinあるいはleuprorelinの1カ月および3カ月製剤が使用されている。antiandrogenとしてはステロイド性と非ステロイド性が日本で承認されている。LH-RHアゴニスト使用においては,投与初期に起こる一過性のテストステロン値上昇に伴うフレアアップ現象による尿路閉塞,転移巣に由来する骨痛,脊髄圧迫などが懸念される場合は抗アンドロゲン剤の併用を考慮すべきである。LH-RHアゴニストの有効性は去勢術と同等と考えられるが,抗アンドロゲン剤単独療法の有効性はLH-RHアゴニストと比較すると有意差は認めないものの低いとされている。しかしながら非ステロイド性抗アンドロゲン剤は性関連の副作用が少ないため対象によってはこれらの単独療法の有用性が指摘されている。また,局所限局性あるいは浸潤癌において,根治的手術・放射線療法・慎重な経過観察を受けた症例に対するbicalutamideの補助療法としての有用性の検討では有意なPSA doubling timeの延長とobjective progression riskの低下が認められた3),4),5)(II)。生存期間延長の効果については現在大規模な検討が行われている。
化学内分泌療法がStage IVに対して内分泌単独療法より有効かどうかの検討がなされている。

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(2)Maximum androgen blockade(MAB)の妥当性

Stage III〜IVに対する内分泌療法の延命効果は証明されている6)(II)。一般には,転移を有する進行性前立腺癌の標準治療は外科的(精巣摘除)または薬物的(LH-RHアゴニスト)去勢によるアンドロゲン遮断療法である。外科的または薬物的去勢では精巣由来のアンドロゲンは抑制可能であるが,前立腺細胞内のアンドロゲンのうち40%は副腎に由来すると報告されている。そのため去勢と非ステロイド性抗アンドロゲン剤を併用することにより精巣および副腎双方のアンドロゲンを抑制するMaximum androgen blockade(MAB)の有用性が示された8)(III)。以後MABは進行前立腺癌の治療として一般的な手段となってきたが,去勢単独と比較し長期予後を改善するかどうかが論議の対象となっている。ステロイド性抗アンドロゲン剤を用いたものが含まれている初期のメタアナリシスではMAB療法と去勢単独療法で生存期間に有意差なしと報告されたが9)(I),これらを除外したメタアナリシス(13試験,2922症例)では非再発期間,生存期間ともに有意にMAB療法が優れていることが示された。同様に,最近のメタアナリシス10)(I)でも,非ステロイド系抗アンドロゲン剤では,MAB群に有意な生存率の上昇が認められた。
一方,SWOGによる大規模なRCT11)(II)においては去勢術+flutamide投与群と去勢術+placebo投与群との比較が行われ,Overall survivalに有意差は認められなかった。以上のすべてのRCTを含めた最近のメタアナリシスでは,2年生存率ではMAB療法と去勢単独療法の差はないが,5年生存率ではMAB療法が有意に優れていることが指摘されている12),13),14)(I)。ただし,生存率の差はわずかであることから臨床的な真の利益は効果,副作用,QOL,医療経済的側面を考慮して決定されるべきであるとされている。最近,抗アンドロゲン剤としてbicalutamideを用いてMABとLH-RHアゴニスト単独の二重盲検試験の結果,Time to progressionにおいて明らかな効果が報告された。

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(3)再燃癌に対する薬物療法

再燃癌と判断された場合でも抗アンドロゲン剤のみを中止することで一過性に病勢の低下を認めることがある(anti-androgen withdrawal syndrome)。抗アンドロゲン剤のみの中止,あるいはhydrocortisoneなどの組み合わせにより14-60%にPSAの低下および0-25%に臨床的効果が得られる。しかし,PSA低下効果は通常2〜4カ月であると報告されている。
内分泌療法再燃癌に対する抗癌剤単剤あるいは多剤併用療法による化学療法が試みられており,単独療法に用いられる薬剤としては,estramustine phosphate,CPA,fluor-ouracil(FU),ETP,などがある。しかし,今まで無作為化比較試験によって明らかな生存期間の延長が認められたものはなかった。最近,docetaxel(DXL)とステロイド15)(II)あるいはestramustine phosphateとの併用療法16)(II)がmitoxantroneとステロイドの併用に比べて有意に生存率が改善したと報告された。なお,現在我国ではestramustine phosphateとFUが前立腺癌に対して保険適応となっているが,他の薬剤は認可されていない。


 

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