ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第2章 診断

 
CQ10  前立腺移行領域(TZ)のルーチン生検は必要か?

推奨グレード B
前立腺移行領域(TZ)のルーチン生検は不必要である。

 背景・目的
一般的にTZ領域の腫瘍は小さくGleasonスコアも低いとされている。現在,前立腺生検はPZを中心に8〜12個所行われている施設が多いが1),2),3)(III),これにTZを加えることで癌の発見率が上昇するかどうか,また発見される癌は臨床的に重要なものか検討を加える。

 解 説
系統的6個所生検にTZから2個所PZ外側から4個所加えることで発見される前立腺癌を検討したところ癌全体の81%が系統的6個所生検のみ陽性で6%がPZ外側のみ,10%がTZのみであった。これはTZを加えることで癌の発見率が上昇することを示している1)(III)。しかし問題は,TZ癌は検索して臨床的価値のあるものかどうかということである。TZに発生する癌は比較的よく認められ,TURP切片やcT2に対する前立腺全摘除術などで偶然に発見される。最近の報告によればT1c腫瘍の14%はTZにのみ限局している4)(III)しかし,一般的にTZ領域の腫瘍は小さく,Gleasonスコアも低いとされており(通常6未満)4)(III),これらはその解剖学的位置(被膜から離れたところに存在)およびPZ癌に比べ神経血管束への浸潤が少ないことからTZ以外の癌に比べ比較的おとなしい傾向にある5)(IV)
PSA 4.0ng/ml以上のルーチンのスクリーニングでは,PZの従来の6個所生検にPZ外側2〜4個所の生検を加えることで40%以上の癌発見率が得られる2)(III)。またPZの外側だけでなく前立腺尖部の癌陽性率が高い3)(III)。したがってPZの生検部位や本数の検討がより重要である。
以上の理由により,少なくともルーチン検査の初回生検では,TZ領域の検索は不要であり,再生検などで検討すべきである6)(III)


 参考文献
1) Durkan GC, Sheikh N, Johnson P, et al. Improving prostate cancer detection with an extended-core transrectal ultrasonography-guided prostate biopsy protocol. BJU Int. 2002;89(1):33-9.
2) Presti JC Jr, Chang JJ, Bhargava V, et al. The optimal systematic prostate biopsy scheme should include 8 rather than 6 biopsies:results of a prospective clinical trial. J Urol. 2000;163(1):163-6;discussion 166-7.
3) Presti JC Jr, O'Dowd GJ, Miller MC, et al. Extended peripheral zone biopsy schemes increase cancer detection rates and minimize variance in prostate specific antigen and age related cancer rates:results of a community multi-practice study. J Urol. 2003;169(1):125-9.
4) Jack GS, Cookson MS, Coffey CS, et al. Pathological parameters of radical prostatectomy for clinical stages T1c versus T2 prostate adenocarcinoma:decreased pathological stage and increased detection of transition zone tumors. J Urol. 2002;168(2):519-24.
5) McNeal JE, Redwine EA, Freiha FS, et al. Zonal distribution of prostatic adenocarcinoma. Correlation with histologic pattern and direction of spread. Am J Surg Pathol. 1988;12(12):897-906.
6) Fleshner NE, Fair WR. Indications for transition zone biopsy in the detection of prostatic carcinoma. J Urol. 1997;157(2):556-8.

 

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