ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第2章 診断

 
CQ9  前立腺多個所生検が勧められるか? 何個所採取すべきか?

推奨グレード A
標準的な6個所生検にPZ外側を含む領域を加え,計10個所以上の生検が望ましい。

 背景・目的
前立腺癌の診断において,1989年,Hodgeら1)(III)が経直腸的6分割生検法を提唱し,以後の10余年にわたって,これが標準的な生検法として普及した。PSA測定の普及に伴い,T1cの前立腺癌が増加していることや,生検で陰性と診断されたあとでもPSAが高値を持続する,あるいは上昇を示す例があることから,通常の6個所の針生検では不十分であると考えられ,診断率を高めるために様々なプロトコールが報告されている。本項では,PSAや直腸診で癌が疑われ,患者が根治的治療の対象候補者の場合,診断率を高めるために生検で何個所採取すべきかを検証した。

 解 説
Hodgeら1)(III)が提唱した経直腸的6分割生検法は癌好発部位の辺縁領域(PZ)から傍正中で尖部,中間部,基部より左右それぞれ1本ずつ採取する方法である。しかし,この方法は外側PZからの採取が不十分であるという欠点があり,その後,以下に示すように様々な工夫が報告されており,いずれも8〜10個所以上の生検を推奨している。
Eskewら2)(II)は,標準の6個所に追加の3領域(左右の側方,中央)からの7〜9検体を加えた生検を行うことにより癌検出率は,通常の6個所生検に比較し35%増加したとしている。
Babaianら3)(III)は180例の前立腺全摘標本の腫瘍存在部位の解析結果から,6個所生検に加え,左右移行領域(TZ),PZ正中,左右PZ外側の5個所を加えた11個所生検により癌検出率が33%増加したとしている。
Prestiら4)(III)は6個所生検に,さらに外側のPZの中央部,底部を加えた10個所生検が有効で,癌検出率が20%増加したとしている。また,6個所生検の底部を除いて8個所にしても検出率はさほど変わらず,少なくとも8個所の生検は必要であるとしている。
Durcanら5)(III)は6個所生検に左右PZ外側,左右TZの生検を加えることにより癌の検出率が19%増加し,そのうち10%はTZのみ陽性であったとしている。
Taylerら6)(III)は6個所生検にPZ外側を含む6個所以上の生検を追加することにより癌の検出率が24%増加し,臨床的に意義のある癌の発見率が向上したとしている。
前立腺全摘標本を用いた検討でも2回の6個所生検より1回の10個所生検が有効である7)(III),6個所生検に背外側の生検を加えることにより癌の検出率が上がる8)(III)という報告がなされている。
Prestiら9)(III)は年齢やPSAに応じて癌発見率を高めるにはどの部位を何個所生検すればよいかを検討し,60歳未満,PSA7ng/ml未満の症例では12個所生検が,それ以外では10個所生検が最適であるが,PSA20ng/ml以上では,6,8,10,12個所生検で差は認められなかったと報告している。
また,生検本数を増やすことにより生検と全摘標本のGleasonスコアを一致させることができるかどうかを検討した報告10)(III)によると,本数を増やすことにより,正診率が上昇し,10個所以上の生検と9個所以下の生検を比較した場合,特にGleasonスコア7以下の症例では正確に前立腺全摘標本のGleasonスコアを予測することが可能である,としている。
合併症の点からも,6個所生検における検査後の合併症の危険因子は前立腺体積,前立腺炎の既往である11)(III),生検本数を増やすことで合併症発生率は上がらない12)(III),6個所生検群と12個所生検群の比較で痛みの程度に有意差はなく,血便,血精液症の頻度は12個所生検群で有意に高かったものの軽度であった13)(II),等の報告があり,12個所生検のデメリットはないと考えられる。
以上より,癌の検出率が高く,合併症に差がなく,術前に正しいGleasonスコアが評価できる可能性が高いと考えられるため,標準的な6個所生検に加えてPZ外側を含むトータルで10個所以上の生検が望ましい,と考えられる。


 参考文献
1) Hodge KK, McNeal JE, Terris MK, et al. Random systematic versus directed ultrasound guided transrectal core biopsies of the prostate. J Urol. 1989;142:71-4.
2) Eskew LA, Bare RL, McCullough DL. Systemic 5 region prostate biopsy is superior to sextant method for diagnosing carcinoma of the prostate, J Urol 1997;157:199-202:discussion 202-3.
3) Babaian RJ, Toi A, Kamoi K, et al. A comparative analysis of sextant and an extended 11-core multisite directed biopsy strategy. J Urol. 2000;163(1);152-7.
4) Presti JC Jr, Chang JJ, Bhargava V, et al. The optimal systematic prostate biopsy scheme should include 8 rather than 6 biopsies:result of a prospective clinical trial. J Urol. 2000;163(1):163-6;discussion 166-7.
5) Durcan GC, Sheikh N, Johnson P, et al. Improving prostate cancer detection with an extended-core transrectal ultrasonography-guided prostate biopsy protocol. BJU Int. 2002;89(1):33-9.
6) Taylor JA 3rd, Gancarczyk KJ, Fant GV, et al. Increasing the number of core sample taken at prostate needle biopsy enhances the detection of clinically significant prostate cancer. Urology. 2002;60(5):841-5.
7) Fink KG, Hutarew G, Pytel A, et al. One 10-core prostate biopsy is superior to two sets of sextant protate biopsies. BJU Int. 2003;92(4):385-8.
8) Epstein JI, Walsh PC, Carter HB. Importance of posterolateral needle biopsies in the detection of prostate cancer. Urology. 2001;57(6):1112-6.
9) Presti JC Jr, O'dowd GJ, Miller MC, et al. Extended peripheral zone biopsy schemes increase cancer detection rates and minimize variance in prostate specific antigen and age related cancer rates:results of a community multi-practice study. J Urol. 2003;169(1):125-9.
10) San Francisco IF, DeWolf WC, Rosen S, et al. Extended prostate needle biopsy improves concordance of Gleason grading between prostate needle biopsy and radical prostatectomy. J Urol. 2003;169(1):136-40.
11) Raaijmakers R, Kirkels WJ, Roobol MJ, et al. Complication rates and risk factors of 5802 transrectal ultrasound-guided sextant biopsies of the prostate within a population based screening program. Urology. 2002;60(5):826-30.
12) Berger AP, Gozzi C, Steiner H, et al. Complication rates of transrectal ultrasound guided prostate biopsy:a comparison among 3 protocols with 6, 10, and 15 cores. J Urol. 2004;171(4):1478-80;discussion 1480-1.
13) Naughton CK, Omstein DK, Smith DS, et al. Pain^nand morbidity of transrectal urltrasound guided prostate biopsy:a prospective randomized trial of 6 versus 12 cores. J Urol. 2000;163(1):168-71.

 

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