ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第2章 診断

 
CQ8  経直腸生検と経会陰生検のどちらが勧められるか?

推奨グレード B
経直腸生検と経会陰生検はどちらかが優れているとは言えない。

 背景・目的
前立腺生検における前立腺への到達法には,経直腸超音波プローブのワーキングチャンネルの形状により経直腸的に生検針を刺入するタイプと経会陰的に刺入するタイプの2つがある。それぞれの検査法の癌発見率の違い,検査法や合併症の違いなどメリットとデメリットを検討する。

 解 説
検査経路の違いによる癌の発見率の比較であるが,同一人物に対し経会陰的生検と経直腸的生検とを同時に行った107例の検討では,経会陰的生検では38%に癌が発見され,経直腸的生検では32%に癌が発見された1)(II)。診断された癌43例のうち,41例(95%)は経会陰式で,34例(79%)は経直腸式で発見された。生検結果のみの単純な比較であるが癌発見率では経会陰的生検が優れた検出率を示した。これは前向き無作為化比較試験のデータであるが,この報告は6個所生検であり十分なサンプル数とは言えない。また前立腺全摘除術後の病理組織標本での癌存在部位との比較検討がなされておらず,臨床的に明らかに有用かはわかっておらず,優位性を判定するエビデンスは得られていない。また最近,前立腺尖部腹側に高頻度に癌病巣が存在することが判明したが2),3)(III),経会陰式ではこの部位の生検に非常に有利である。しかし,この点も経直腸的アプロ-チで決して不可能でなく優位性はわかっていない。
次に検査法や合併症の違いであるが,経会陰的生検では直腸を経由しないことから感染の可能性が低くなるメリットがある一方,仙骨麻酔や会陰部の広い局所麻酔が必要なことから麻酔薬の副作用の危険や検査が簡便でないデメリットがある4)(III)。経直腸的生検では,その反対で麻酔に関しては無麻酔あるいは局所麻酔で可能であり非常に簡便に検査ができる反面,直腸を経由する感染のリスクと直腸からの出血の可能性がある5)(III)。この点に関してもどちらが優れていると言うエビデンスはない。


 参考文献
1) Emiliozzi P, Corsetti A, Tassi B, et al. Best approach for prostate cancer detection:a prospective study on transperineal versus transrectal six-core prostate biopsy. Urology. 2003;61(5):961-6.
2) Presti JC Jr, O'Dowd GJ, Miller MC, et al. Extended peripheral zone biopsy schemes increase cancer detection rates and minimize variance in prostate specific antigen and age related cancer rates:results of a community multi-practice study. J Urol. 2003;169(1):125-9.
3) Takashima R, Egawa S, Kuwao S, et al. Anterior distribution of Stage T1c nonpalpable tumors in radical prostatectomy specimens. Urology. 2002;59(5):692-7.
4) Emiliozzi P, Longhi S, Scarpone P, et al. The value of a single biopsy with 12 transperineal cores for detecting prostate cancer in patients with elevated prostate specific antigen. J Urol. 2001;166(3):845-50.
5) Raaijmakers R, Kirkels WJ, Roobol MJ, et al. Complication rates and risk factors of 5802 transrectal ultrasound-guided sextant biopsies of the prostate within a population-based screening program. Urology. 2002;60(5):826-30.

 

書誌情報