ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第2章 診断

 
CQ3  PSAグレーゾーンの生検絞り込みにPSAD,PSATZなどのPSA volumeパラメーターは有用か?

推奨グレード C
PSAD,PSATZなどのPSA volumeパラメーターは一般臨床への運用を推奨する十分な根拠がない。

 背景・目的
PSAが4-10ng/mlにおける前立腺癌の陽性的中率は約25-30%であるため,このPSAレベルの約70%の男性は不必要な生検を受けることになる。不必要な生検を回避する目的でPSA density(PSAD),PSA density of transition zone(PSATZ)などのPSA volumeパラメーターの有用性について研究されてきた。EAUガイドライン(2003)ではグレーゾーンにおける前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別におけるこれらのパラメーターの有用性が示唆されているものの,一般臨床への適応については合意が得られていない。その後のPSAD,PSATZなどのPSA volumeパラメーターに関する研究が,臨床的有用性に関する新たな知見を生み出したか否かを検証する。

 解 説
無駄な生検を減らすことは重要なことであるが,癌発見率を低下させる(癌を見逃す)のは問題がある。PSA volumeパラメーターが癌を見逃すことなく無駄な生検を減らすことができるかについては高いレベルのエビデンスがなく,一定の知見が得られていない。
PSADは前立腺癌診断時の特異度の改善には有用であるが,臨床上まだ一様に評価されていない1)(III)。グレーゾーンで生検を受けた1,239人の男性における多変量解析における各種パラメーターの癌予測因子は,PSAD>0.27,直腸診で癌が疑われる,PSAD 0.16-0.27,年齢が75歳以上,TRUSで低エコー域が認められる,の順であり,これらの結果に基づいてReceiver operating curve(ROC)を描いたところ,PSADのAUC 0.73でありtotal PSAのみの0.63を上回ったとの報告がある2)(II)。しかし,この報告のエビデンスレベルは低く,一般的に示唆されるPSAD 0.15でもかなりの癌を見逃すといわれていることを考慮すると,この論文におけるPSAD値を臨床に応用するのは問題であろう。


 参考文献
1) Gretzer MB, Partin AW. PSA markers in prostate cancer detection. Urol Clin North Am. 2003;30(4):677-86.
2) Garzotto M, Hudson RG, Peters L, et al. Predictive modeling for the presence of prostate carcinoma using clinical laboratory, and ultrasound parameters in patients with prostate specific antigen levels < or=10ng/ml. Cancer. 2003;98(7):1417-22.

 

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