ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第1章 疫学

 
CQ13  前立腺癌検診は今後どのようにすすめていくべきか?

前立腺癌は本邦において将来急激な罹患率と死亡率の増加が予測されており,対策は急務である。現時点では,前立腺癌の本邦における現状と将来予測,検診の受診による利益と不利益を広く住民に啓発した上で,受診希望者に対して最適な前立腺癌検診システムを提供する体制が整備されることが望ましい。

欧米諸国で最近認められる前立腺癌死亡率の低下傾向は,前立腺癌検診の普及が一因であると推測されている。しかし,前立腺癌検診の積極的な実施によって死亡率減少効果が得られる過程で,過剰診断・過剰治療を受けた症例の割合が不明であり,また治療により延命効果が得られた症例においても,QOLの障害の程度が不明確であり,この点が,現時点での前立腺癌検診のコントロバーシーのポイントとなっている。
将来の前立腺癌検診は,検診精度を維持しつつ,優れた費用対効果比や,過剰診断を避けるための診断システムが求められる。また,前立腺癌の治療は,年齢・病期にあわせ様々な治療法の選択が可能になりつつあるが,今後さらに,治療効果のみならず,QOLを考慮に入れた非侵襲的な治療方法の確立が重要であることは間違いない。
現時点での前立腺癌検診は,PSA 検査の偽陰性,偽陽性,前立腺生検による見逃しなど,検査法の精度上の問題,治療による合併症など,受診者に不利益をもたらす可能性もある。しかし,検診の是非に関する見解が学会によって異なる米国において,約50%の男性は毎年PSA値をチェックしているといわれている。本邦でも,今後罹患率・死亡率の上昇が確実に予測されていることからも,その対策は急務である。前立腺癌検診は,今後の方向性として,前立腺癌に関する正しい知識と,検診のメリットとデメリットをパンフレット等で対象住民に広く啓発活動を行い,受診希望者に対して最適な前立腺癌検診システムを提供する体制が整備されることが望ましいと考えられる。


 注)疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の3部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community-basedかhospital-basedかの2点を明記した。

 

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