ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第1章 疫学

 
CQ10  日本において前立腺癌検診はどのように行われているか?

地域住民対象の前立腺癌検診では,PSA検査のみによる検診実施地区が多く,特に,基本健康診査時の同時実施が検診のシステム上優れている。また,人間ドックでの検診では,PSAと直腸診による検診実施施設が多い。対象年齢は50歳以上が一般的である。

日本における前立腺癌検診形態は,実施形態によって1)前立腺癌検診単独実施,2)他の癌検診との並行実施,3)基本健康診査との並行実施に分けられ,また一次検診の検査法によって1)PSA 検査のみ,2)PSA 検査と直腸診に分けられる。
前立腺癌検診を地域住民に提供する場合は,基本健康診査と同時施行のPSA検査による前立腺癌検診が診断精度・処理能力・費用効果を総合して優れている1)。実際に同一市町村でスクリーニング形態を直腸診・PSA併用の検診から,基本健康診査施行時に行うPSA単独検査による検診に移行した場合,受診者数の増加から,前立腺癌発見数が約3倍になるとの報告がある2)
人間ドックにおける前立腺癌検診方法については,1997〜1999年度の調査では,直腸診+PSAが施行施設数で1番多く,次いで,PSA検査のみの実施施設が多い。PSAの導入率は1995年以降,年々増加し,1995年の33%から1999年度には81%になっている3)
対象年齢については,厚生省がん研究助成金「前立腺がんの集団検診の妥当性に関する研究」班では55歳以上から行うのが妥当としているが1),50〜54歳については,前立腺癌発見率が0.12%と比較的高いことから3),検診対象に入れる必要がある。年齢上限については,罹患率,経済効率,年代別生存率,受診頻度ならびに倫理的な観点,他臓器の検診における対象年齢などから検討した結果,年齢の上限を定める積極的な理由はないとしているが1),米国泌尿器科学会などでは平均余命が10年以上を年齢の上限としている4)


 参考文献
1) わが国に適した前立腺がん検診システム.厚生省がん研究助成金「前立腺がん集団検診の妥当性に関する研究」(主任研究者:渡邉 泱)平成8,9年度研究成果報告書.1998.86-7.
2) 山本 巧,伊藤一人,大井 勝,他:前立腺がん集団検診におけるPSA単独検診とPSA・直腸診併用検診の比較.日本がん検診・診断学会誌.2001;8:63-6.
3) 財団法人 前立腺研究財団,前立腺検診協議会:人間ドック健診における前立腺検査調査(1989年〜1999年)・前立腺集団検診全国集計(1986年〜1999年).泌尿器外科.2003;16:1023-38.
4) Prostate-specific antigen(PSA)best practice policy. American Urological Association(AUA). Oncology(Williston Park). 2000;14:267-72, 277-8, 280 passim.


 注)疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の3部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community-basedかhospital-basedかの2点を明記した。

 

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