ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第1章 疫学

 
CQ7  前立腺癌の一次予防にはどのようなものがあるか?

化学予防として様々な物質が市販されているが,いずれも十分な確証は得られていない。現在,セレニウム,βカロチン,ビタミンA,E,D,C,イソフラボン,リコペンなどの成分が前立腺癌の発生を予防する物質として研究されている。化学予防については大規模無作為比較試験が現在進行中であるが,有効性に関する最終的な結論がでるまでには長期間の経過観察を要する。

化学予防としては,セレニウム,ビタミンA,E,D,C,イソフラボン,リコペンなどの成分が前立腺癌の発生を予防する物質として研究されている1),2),3),4)最近のイタリアでの大規模な症例対照研究では,19品目の調査結果から乳製品とパンに前立腺癌罹患との正の相関があり,スープと調理された野菜の摂取量との間に負の相関があったと報告された5)。また,世界における前向きのコホート研究の結果と介入研究の結果がまとめられたが,前立腺癌の発生は単一の因子で説明することはむずかしいことから,いまだに前立腺癌罹患と各食品目,成分との間に確実な相関を示す証拠は得られていないのが現状である6)
化学予防の研究としては,テストステロンを活性型のジヒドロテストステロン(DHT)に変換させる5α還元酵素の阻害剤であるフィナステリドの前立腺癌罹患の予防効果についての大規模な前向き無作為比較対照試験(Prostate Cancer Prevention Trial)の結果が報告された7)7年間の経過観察中の前立腺癌罹患率を比較したところ,フィナステリド投与群は18.4%で,プラセボ群は24.4%であり,フィナステリドの予防投与で24.8%の前立腺癌罹患率減少効果があった。発見された前立腺癌の悪性度については,Gleasonスコア(前立腺癌の組織構築から悪性度を診断する病理組織所見の評価法で,最も有意な組織型と2番目に有意な組織型をそれぞれ 1-5の5段階で評価し,その合計点数をスコアとして用いる。一般的に2-6は比較的悪性度が低い,7は中程度,8-10は悪性度の高い癌として評価される)が7以上の癌の割合が,フィナステリド群ではプラセボ群より有意に高かった(37.0%vs.22.2%)。フィナステリド投与により,前立腺癌罹患率と排尿症状の有症状症例の割合は低くなったものの,悪性度の高い癌の割合が増え,また性機能障害症例の割合も高くなったことから,化学予防投与の前立腺癌死亡率減少効果,QOL改善に関する有効性については結論がでていない。


 参考文献
1) Hebert JR, Hurley TG, Olendzki BC, et al.:Nutritional and socioeconomic factors in relation to prostate cancer mortality:a cross-national study. J Natl Cancer Inst. 1998;90:1637-47.
2) Eichholzer M, Stahelin HB, Ludin E, et al. Smoking, plasma vitamins C, E, retinol, and carotene, and fatal prostate cancer:seventeen-year follow-up of the prospective basel study. Prostate. 1999. 38:189-98.
3) Clark LC, Dalkin B, Krongrad A, et al. Decreased incidence of prostate cancer with selenium supplementation:results of a double-blind cancer prevention trial. Br J Urol. 1998;81:730-4.
4) Hartman TJ, Albanes D, Pietinen P, et al. The association between baseline vitamin E, selenium, and prostate cancer in the alpha-tocopherol, beta-carotene cancer prevention study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 1998;7:335-40.
5) Bosetti C, Micelotta S, Dal Maso L, et al. Food groups and risk of prostate cancer in Italy. Int J Cancer. 2004;110:424-8.
6) Dagnelie PC, Schuurman AG, Goldbohm RA, et al. Diet, anthropometric measures and prostate cancer risk:a review of prospective cohort and intervention studies. BJU Int. 2004;93:1139-50.
7) Thompson IM, Goodman PJ, Tangen CM, et al. The influence of finasteride on the development of prostate cancer. N Engl J Med. 2003;349:215-24.


 注)疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の3部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community-basedかhospital-basedかの2点を明記した。

 

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