ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第1章 疫学

 
CQ3  ラテント癌の性質と頻度はどのくらいか?

ラテント癌は加齢に伴い増加し,50歳以上には約20-30%に認められる。臨床癌と異なり地域差が少ない。

ラテント癌(何らかの原因で死亡した者への剖検により,はじめて発見される癌)の頻度は加齢にしたがって高くなる。50歳以上では13.0-26.5%に認めるとの報告がある1),2),3),4)。欧米と日本での剖検例における前立腺ラテント癌の頻度差は,罹患率の相違に比較して小さいことが知られている。アメリカ合衆国の黒人,白人,コロンビア人,ハワイ移住の日本人および日本在住日本人を対象とした同一の検索方法,組織判定基準での比較研究がなされており,50歳以上における年齢調整(5地域の全対象症例の年齢分布で調整)後のラテント癌の頻度はそれぞれ,36.9%,34.6%,31.5%,25.6%および20.5%であった1)
さらにラテント癌をラテント浸潤性型(LIT)とラテント非浸潤型(LNT)に分けた場合,LNT腫瘍の頻度は各国で有意差はなかったが,LIT腫瘍の頻度は,日本在住の日本人は,アメリカ合衆国の黒人,白人,コロンビア人より有意に低く,ハワイ在住の日本人と比較しても低い傾向があった。ハワイ在住の日本人は,アメリカ合衆国の黒人とはLIT腫瘍の頻度に有意な差があったが,白人,コロンビア人とは差がなかった1)。すべての人種においてLIT腫瘍はLNT腫瘍に比べ腫瘍長が大きかったが,人種間でも差があり,年齢調整後の平均のLIT腫瘍長はアメリカ合衆国黒人が15.5mm,白人が15.7mm,コロンビア人が10.6mm,ハワイ在住日本人が9.7mm,日本在住の日本人が12.9mmであり,黒人のLIT腫瘍長は,コロンビア人とハワイ在住の日本人よりも有意に大きく,白人はコロンビア人,日本在住日本人に比べ有意に大きかった1)


 参考文献
1) Yatani R, Chigusa I, Akazaki K, et al. Geographic pathology of latent prostatic carcinoma. Int J Cancer. 1982;29:611-6.
2) KARUBE K:Study of latent carcinoma of the prostate in the Japanese based on necropsy material. Tohoku J Exp Med. 1961;74:265-85.
3) Akazaki K, Stemmerman GN:Comparative study of latent carcinoma of the prostate among Japanese in Japan and Hawaii. J Natl Cancer Inst. 1973;50:1137-44.
4) 和田哲郎:最近の日本人の前立腺潜伏癌(ラテント癌)の臨床病理学的検討.日泌尿会誌.1987;78:2065-70.


 注)疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の3部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community-basedかhospital-basedかの2点を明記した。

 

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