ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第1章 疫学

 
3 前立腺癌検診

二次予防としての前立腺癌検診は,PSA検査の前立腺癌早期発見における有用性が高いことから,簡便かつ精度の高い一次検診として実施されている。米国癌学会および米国泌尿器科学会のガイドラインでは,検診による利益と不利益を説明し,希望者に対しては50歳以上(黒人,前立腺癌の家族歴を有する人には45歳あるいは40歳)でPSA値測定および直腸診による検診を推奨している20),21)。一方,米国予防医学研究班やアメリカ内科学会は,現時点では,ル-チンの検診を推奨すべきエビデンスも,また推奨しないエビデンスもないことを理由に,検診とその後の治療に関して受診者に情報提供を行い,受診をするか否かは自己判断すべきとしている22),23)
前立腺癌検診の導入による死亡率減少効果は,アメリカ合衆国,ミネソタ州オルムステッド郡の疫学研究24),カナダにおけるケベック州の疫学データ25),オーストリアのチロル地方における介入研究26)のデ-タなどから示されている。現在,大規模無作為比較対照試験として,米国のPLCO(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian)Cancer Screening研究27),ヨーロッパでのERSPC(European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer)28)が進行中である。
わが国においては,全国で市町村検診における前立腺癌検診の実施率が増加している。同時に,人間ドックにおいてもPSAを中心とした前立腺検診が行われており,施行数が増加している。前立腺癌検診での癌発見率は,PSA測定のみによる前立腺癌検診では,50〜54歳では0.09%,55〜59歳では0.22%,60〜64歳では0.42%,65〜69歳では0.83%,70〜74歳では1.25%,75〜79歳では1.75%と報告されており29),検診導入による,早期癌発見率の上昇も確認されている30)。検診受診間隔についてもPSA基礎値に基づく設定が可能であり,費用対効果比の改善も検討されている31),32)
前立腺癌検診は,現時点ではPSA検査の偽陰性,偽陽性,前立腺生検による見逃し,検査法の精度上の問題,治療による合併症など,受診者に不利益が生じる可能性もある。しかし,検診の是非に関する見解が学会によって異なる米国において,50歳以上の男性の約3/4が自己のPSA値をチェックしている現状を考慮した場合,今後罹患率・死亡率の上昇が確実に予測されている本邦でも,前立腺癌検診のメリットとデメリットをパンフレット等で対象住民に広く啓発活動を行い,受診希望者に対して最適な前立腺癌検診システムを提供する体制が整備されることが望ましいと考えられる。

 

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