ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第1章 疫学

 
2 危険因子

前立腺癌には剖検によって発見されるラテント癌が存在し,加齢にしたがって頻度が高くなる。しかし,上述した臨床癌の罹患率と対照的に地域差が少ない6)。一般的にラテント癌の多くは臨床癌にならずに経過し,一部は緩徐な経過をたどって臨床癌に進展すると考えられている7),8),9)
前立腺癌と前立腺肥大症は,発症年齢が重なることから,同一個人に同時に発生することがあるが,早期前立腺癌には特有の症状がなく,臨床症状から前立腺肥大症と鑑別することは困難である10)。排尿障害で外来を受診した症例から4〜7%に前立腺癌が発見されたことが,日本および海外より報告されており11),12),何らかの排尿症状を訴えて外来受診した症例における前立腺癌発見率は,無症状例に対する前立腺癌検診における癌発見率に比べて高く,PSA値測定,直腸診による前立腺癌の鑑別診断が必要である。
前立腺癌の決定的な危険因子はいまだ不明であるが,いくつかの有力な危険因子は同定されている。現時点で最も確実な危険因子は遺伝的要因であり,家族内における罹患患者数の多さと家族内罹患患者の若年発症性が危険率を高める13)。前立腺癌が男性ホルモン依存性癌であることから男性ホルモンの存在は発生に必須である。外的な要因としては,確実な証拠はないものの,動物性脂肪を摂取する機会の多い欧米国の食生活が前立腺癌の危険性に関与することが示されている14)。食品に関しては,豆類・穀物の摂取は前立腺癌罹患率と負の相関関係があり,砂糖,ミルク,油脂に正の相関が示唆されている15)。化学予防としてセレニウム,βカロチン,ビタミン A,E,D,C,イソフラボン,リコペンなどの成分が前立腺癌の発生を予防する物質として研究されている16),17),18),19)

 

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