ガイドライン

(旧版)有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン

書誌情報
VI.考察

 
3. 他のガイドライン等における評価との比較

久道班報告書第3版では、胃X線検査、ペプシノゲン法、ヘリコバクターピロリ抗体の評価が行われているが、胃内視鏡検査は対象外となっている8)。胃X線検査には相応の証拠があると判断されているが、ペプシノゲン法は判定保留、ヘリコバクターピロリ抗体は推奨できない相応の根拠があるとされた。今回の検討では、ヘリコバクターピロリ抗体について胃がん検診としての有効性を判断しうる研究はなかったが、間接的証拠として、対象集約、精度、除菌の効果に関する研究があった。これらの研究は、胃がん検診の有効性評価としては不十分ではあるが、有効性がないことを証明するものではない。従って、今回の評価は推奨I とし、久道班報告書第3版とは異なる評価判定となった。
胃がんの罹患については、日本以外では南米(コスタリカ、チリ)やポルトガル、東欧(ハンガリー、ポーランド、ブルガリア)において、胃がんの死亡率が比較的高い。しかし、これらの国々においても、胃がん検診は行われていない1)。このため、がん検診ガイドライン等で胃がん検診を評価対象としているものは極めて少ない。
米国NIHのPDQはガイドラインとは異なり推奨は行っていないが、胃がん検診における評価研究をまとめている11)。この中では、Pisaniらの症例対照研究と今回採用の2文献のコホート研究が科学的根拠として採用されているが、胃がんの死亡率減少効果を示すにはいずれも不十分であると判定している。この他、ペプシノゲン法や内視鏡検査にも言及しているが、いずれも米国における胃がん検診の利用については期待できないと結論づけている。
一方、UICCによる勧告では、日本における症例対照研究をはじめとする観察的研究の成果を評価し、胃X線検査による胃がん検診の死亡率減少効果が示唆されることから、現行の検診継続を支持している76)。しかし、UICCによる勧告では、わが国における実施は容認しているものの、他国における実施を推奨するものではない。また、European Code Against Cancerにおいては、胃がん検診として、ヘリコバクターピロリ抗体、胃X線検査、胃内視鏡検査をとりあげ、いずれも効果不明との判定をしている77)。ただし、この根拠については明示されていない。
胃がん検診が国際的に有効と認知されるためには、他のがん検診と同様に、確立された研究方法に基づき、適切な根拠を提示することが必要である。そのためには、我が国における例外的ながん検診として、発見率などの標準的とはいえない評価指標や研究方法を安易に持ち出し、科学的根拠とすることは厳に慎むべきである。また、検査方法が単に普及しているという事実は、死亡率減少効果を無視してよいという証拠となるものではない。わが国における成果が胃がん検診の評価を決定づける上で重要なものとなることを再認識した上で、真摯な取り組みが必要である。

 

書誌情報