ガイドライン

(旧版)有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン

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VI.考察

 
2. 不利益に関する評価

本ガイドラインでは、有効性評価に基づくがん検診ガイドラインの作成手順9)に基づき、がん検診の特性を考慮し、各検診方法別の不利益を比較検討した。がん検診の不利益には、偽陰性、偽陽性、過剰診断、偶発症、放射線被曝、感染、受診者の身体的・心理的負担などが該当する。これらの不利益について、検査方法別の比較表を作成した。偽陰性率、偽陽性率、偶発症などは、可能な限り数値を提示した。
本ガイドラインにおいて、胃がん検診の方法として推奨できるのは、胃X線検査である。同検査は、対策型検診及び任意型検診の両者で実施可能であるだけに、不利益の評価については慎重でなくてはならない。また、不利益について検討する場合には、間接撮影・直接撮影の差についても配慮することが必要である。胃X線検査の副作用として、バリウムの誤嚥や便秘などは日常的に経験するものであるが、比較的軽微である。しかしながら、今回の検討でも明らかなように、死亡に至る特異的な例も存在することに留意しなくてはならない。ただし、がん検診として行われる場合には、前投薬を用いることもほとんどなく、その影響もほとんどないと考えられる。
X線検査の被曝は、間接撮影・直接撮影の実効線量は各々0.6、3.7-4.9mSvである41) 42)。被曝による生涯リスクの算定方法については、これまでも様々な報告があるが、2005年BEIR-VII報告では、100mSvの被曝によるがん罹患の生涯リスクは、白血病では10万対男性100、女性70、白血病以外の固形がんについては10万対男性800、女性1,300である74)。一方、被曝の有無にかかわらず、がん罹患の生涯リスクは男性10万対46,300、女性10万対34,800 との報告がある75)。直接X線撮影の一回の被曝では、生涯リスクの1,000分の1程度の増加につながる可能性がある。また間接X線に関しては一回の被曝で、10,000分の1程度の生涯リスクの増加につながる可能性がある。累積の被曝の場合、生涯リスクの増加は、一回の被曝に回数をかけたものより小さくなるので、胃X線検査を10回受診したとしても、直接X線で100分の1、間接X線で1,000分の1以下の生涯リスクの増加になる。一般に放射線被曝による生涯リスクと、被曝に係わらない生涯リスクの算定方法や仮定が異なる点から、単純比較は困難ながら、X線被曝によるがん罹患の過剰生涯リスクは、バックグラウンドのリスクの大きさと比較して、小さいと考えられる。しかしX線被曝については、施設間格差が大きいこともあり、検診実施機関においては、医療被曝ガイドライン13)を遵守するように努めるべきである。特に直接X線撮影に関しては、透視時間の短縮や照射野の狭量化に努め、被曝線量の軽減を図らなくてはならない。また、X線被曝についても受診者の不安をあおることなく、適切な説明を心がけることに留意する。
検査の持つあらゆる不利益について、同列に論じることは困難であるが、X線検査における被曝のような特記すべき問題点については、胃がん検診にかぎらず、他の検診においても継続的な検討が必要である。

 

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