ガイドライン

(旧版)有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン

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IV.結果

 
2. 検診方法の証拠

1)胃X線検査
不利益

胃X線検査の不利益を表10に示したが、間接撮影と直接撮影で前投薬やX線被曝が異なるが、他は共通する。
胃がん検診の偶発症に関する報告は少ないが、バリウム飲用による副作用として、田村らは飲水のみでは男性で4%、女性で11%が排便遅延を、34%と41%が硬い糞便の排泄を訴えているとしている36)。便秘に関しては緩下剤の投与が有効であるとされている36)。誤嚥に関しては、菅原らは男性・高齢者に多いとし、65歳以上では男性で0.17%、女性で0.08%に誤嚥が発生すると報告している37)。誤嚥による死亡例の報告はない。その他の偶発症として頻度は不明であるが、発疹などの過敏症や穿孔・腹膜炎が極めて少数例ながら報告されている38) 39)。バリウム腹膜炎による穿孔44人のうち、小腸1人、大腸6人の死亡例が報告されている39)
間接撮影では前投薬は使用しないが、直接撮影では、人間ドックなどで鎮痙剤を投与する場合がある。前投薬を使用した場合には、内視鏡検査と同様に血圧低下やショックなどの可能性はある。ただし、系統的な報告はなく、発生率は不明である。
放射線被曝に関しては、Katoらはファントムを使った検討で、以前のミラーカメラ方式に比べてI.I.TV では卵巣での被曝線量が約1/4(0.33±0.09 mGy)になったと報告している40)。現在は、間接X線は全てI.I.TV を使用している。丸山らの検討によれば、医療機関における胃X線検査1件あたりの実効線量は3.7-4.9mSvである41)。一方、間接撮影による胃X線検査1件あたりの実効線量は0.6mSvと報告している42)。間接・直接X線の皮膚表面の吸収線量に関する実態調査の報告では、X線被曝については、間接・直接による相違だけではなく、施設間格差も認められる。小山らの報告では、透視と撮影による間接X線の被曝は平均18.19mGy(10.02-46.19)、透視と撮影による直接X線の被曝は平均80.30mGy(33.09-225.36)であった43)。また、加藤らの報告では、間接X線は平均49.72mGy(10.89-106.78)、直接X線の被曝は平均167.61mGy(10.63-1058.15)であった44)
服薬に関しては、抗凝固剤や降圧剤などは服薬をしても検査に支障はなく、休薬による不利益はほとんど無い。

表10 胃X線検査における不利益
文献NO 著者 発表年 研究方法 検査方法 検査件数
(対象数)
不利益の種類と頻度 偶発症による死亡
36 田村浩一,他 1985 アンケート調査 X線検査
(間接・直接不明)
男370人、女376人 排便遅延 4-11%
なし
37 菅原伸之,他 1992 アンケート調査 間接X線 39,056人 バリウム誤飲 0.08-0.17%
なし
40 Kato K., et al. 1991 実験 ファントムによる
被ばく推計
- mirror camera(卵巣1.52mGy)に
比べII-TVでは被曝線量が1/4に低下
-
41 丸山隆司,他 1996 推計 実態調査と実験に
基づく推計
全国民(1億2千人) 胃X線検査1件の実効線量
男4.9mSv 女3.7mSv
-
42 丸山隆司,他 1996 推計 実態調査と実験に
基づく推計
- 胃集団検診1件の実効線量
男0.6mSv 女0.6mSv
-
43 小山一郎,他 1997 アンケート調査 X線検査
(間接・直接)
300人 間接(透視+撮影)10.0-46.2mGly
直接(透視+撮影)33.1-225.4mGly
なし
44 加藤英幸,他 1999 アンケート調査 X線検査
(間接・直接)
480施設 間接(総線量)10.9-106.8mGly
直接(総線量)10.6-1058.2mGly
なし
38 渡辺雄輝,他 1999 症例報告 間接X線 1人(本邦報告は他1例) バリウムによるアナフィラキシー様症状
なし
39 佐野真,他 1995 症例報告 X線検査
(間接・直接不明)
44人 バリウム腹膜炎44人内穿孔43人
6人(/44人)

 

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